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Pepin
EC運営2026-04-262026-09-199分で読めます
EC運営返品率ケーススタディ

ECの返品率を下げる打ち手 — アパレル・コスメ・家電で違う理由

ECの返品率を下げる打ち手 — アパレル・コスメ・家電で違う理由
ECサイトの返品率を下げる打ち手のイメージ

返品率は、ECビジネスの収益を一番静かに、しかし確実に削っていくKPIです。広告費を投じて売上を伸ばしても、返品率が高ければ手元に残る利益はみるみる減っていきます。しかも厄介なのが、返品の起こり方が商材によって全く違う こと。アパレルで効く打ち手はコスメでは効きませんし、家電にはまた別の理屈があります。

この記事では、アパレル・コスメ・家電の3つの商材タイプについて、返品が起きる理由と、それぞれに対応する打ち手を整理します。

わたしはShopifyアプリの開発者で、ECストアを運営しているわけではありません。そのため 「この施策で返品率が何ポイント下がりました」という数字はこの記事には書きません。 効果は商材・客層・運用体制でまったく変わるので、他店の改善幅を借りてきても自店の予測にはなりません。書けるのは、返品理由と打ち手の対応関係と、自分のストアで効果を測る手順までです。

ECの返品率はそもそもどれくらい?

まず、業界全体の数字を確認しておきます。打ち手を考える前に「自分のストアは平均より高いのか低いのか」が分からないと、優先順位がつきません。

26.1兆円
2024年 日本のBtoC-EC市場規模
経済産業省 令和6年度市場調査
17.6%
米国EC全体の返品率(2023年)
NRF: National Retail Federation
10.02%
米国の実店舗の返品率(2023年)
NRF: National Retail Federation
14.5%
米国小売全体の返品率(2023年)
NRF: National Retail Federation

出典:経済産業省 令和6年度電子商取引に関する市場調査NRF 2023 Consumer Returns in the Retail Industry

EC市場が26兆円規模に成長する一方で、返品コストも比例して膨らんでいます。NRFの2023年レポートでは、米国のEC返品率は 17.6%(2,470億ドル) で、実店舗の10.02%の約1.7倍。小売全体では14.5%です。なお、日本のカテゴリ別返品率をまとめた公的な統計は見つかりませんでした。「アパレルは30%」といった数字が引用されているのをよく見かけますが、出どころをたどれないものが多いので、この記事では使いません。 比較対象にすべきなのは業界平均ではなく、自店の先月の数字です。

返品率はカテゴリによって大きく違います。アパレルは桁違いに高く、コスメは法的制約で低く、家電はその中間。「うちは返品率8%で困っている」と言っても、それがアパレルなら優秀、家電なら要注意、という具合に判断軸が変わります。

返品を放置するとどう効いてくる?

返品の本当の怖さは、返ってきた商品の金額だけを見ていると、実際のコストを小さく見積もってしまうところにあります。1件の返品には、少なくとも4種類のコストがぶら下がっています。

  1. 01

    売上の取り消し

    いちばん見えやすい部分。返金額そのもの
  2. 02

    再販できない分のロス

    開封済み・汚れ・シーズン落ちで、そのまま棚に戻せない在庫
  3. 03

    返送と検品の実費

    返送料、検品の人件費、再梱包の資材費
  4. 04

    次の購入が起きない分

    返品を経験した顧客が再訪しなくなった場合の売上

4番目は測りにくいので、まずは1〜3を自分の数字で埋めてみてください。ここは他店の平均値ではなく、自店の実績で計算できます。

項目出し方
月の返品額返金レポートの合計
再販できなかった割合返品のうち再出品しなかった件数 ÷ 返品件数
1件あたりの返送・検品費返送料 + 検品にかかる時間 × 時給
月の返品件数返金・返品ステータスの注文数

この4つを掛け合わせた金額が、返品率を1ポイント下げたときに手元に残る金額の目安になります。 自店の数字で出すからこそ、施策にいくらまで投資してよいかの判断ができます。 他店の「年間400万円削減」を持ってきても、その判断には使えません。

商材タイプ別に、何が返品を起こしているか

ここからは、アパレル・コスメ・家電の3タイプについて、返品の起き方と打ち手を並べます。返品理由の比率は商材だけでなく客層でも変わるので、比率の数字は出しません。 自店の返品データを分類したときに、どの列に当たるかを見てください。

アパレルD2Cの場合

アパレルECのサイズ問題のイメージ

アパレルで最も多い返品理由は、多くの場合 サイズ です。Lサイズと書いてあっても、ブランドごとに実寸は違いますし、骨格や好みのフィット感によっても「正解」が変わります。次に「写真と印象が違う」「素材感が想像と違った」と続きます。

つまり、返品の大半は届いてから起きているのではなく、 商品ページで判断材料が足りていないところで起きています。

打ち手

判断材料が足りない商品ページ
サイズは「S/M/L」のラベルだけ
モデル写真は1パターン(身長未記載)
レビューの「サイズ感」コメントを集約していない
返品送料はストア負担で、返品前提の購入が起きやすい
判断材料を足した商品ページ
全SKUに 実測値表(着丈・身幅・肩幅・袖丈) を掲載
モデル身長・体重・着用サイズを商品ページに明記
試着イメージを補う機能(AI試着アプリなど)を追加
レビューに「普段のサイズ/実際着てみての感想」を必須項目化
返品送料の負担を見直す

サイズ起因が返品理由の1位なら、まず実測値表から着手するのが理にかなっています。1位を潰さずに他の施策を並べても、母数の小さいところを削る作業になるからです。

無料返品をやめて顧客負担に切り替えると、CVRが下がるのではないかと不安になります。ここは事前に効果を断定できないので、 切り替えるなら期間を区切って、CVRと返品率の両方を並べて見てください。 片方だけ見て判断すると、どちらに転んでも誤読します。顧客体験は確実に悪化する方向なので、返品ポリシーの文言と理由説明には十分こだわってください。

コスメD2Cの場合

コスメECの色味問題のイメージ

コスメの返品率はアパレルより低く出ますが、それは打ち手が効いているからとは限りません。 化粧品は開封後の返品が原則できない ため、そもそも返品として集計されない分があるからです。

化粧品は特定商取引法上、消費者が使用したり一部消費したりした場合は、通信販売の返品(クーリング・オフに相当する契約解除)の対象外とされています。逆に言うと、コスメで計上される返品は 「届いて開封すらせずに返している」 ものが中心。つまり、色やイメージのズレが商品ページの段階で起きているというシグナルです。

出典:消費者庁 特定商取引法ガイド 通信販売

開封されずに返ってくる以上、直す場所は届いたあとではなく、届く前です。

打ち手

判断材料が足りない商品ページ
色見本は1枚の物撮り写真のみ
肌色との相性情報なし
いきなり本商品しか売っていない
記載は「特定商取引法に基づく表記」だけ
判断材料を足した商品ページ
AR試色などで、手持ちの端末から色を確認できるようにする
「イエベ春/ブルベ夏」など肌色タイプ別のレコメンド
少量サンプルの先行販売 で本購入前に試せる導線を用意
肌質診断のクイズで合う商品を提案
「成分Q&A」「使用順序」「香りの強さ」を商品ページに追加

サンプル販売には、返品を減らす以外の効果もあります。合わなかったときの顧客側の損失額が下がるので、初回購入のハードル自体が下がります。

コスメは「効果効能の表現」が薬機法で厳しく規制されています。「シミが消える」「アンチエイジング」などの表現は化粧品では使えません。AR試色やレコメンドのコピーを書くときも、必ず薬機法の範囲内で表現してください。最終的な判断は、薬事に詳しい専門家に確認することをおすすめします。

家電ECの場合

家電ECの動作不良問題のイメージ

家電は、色やサイズで返ってくるアパレル・コスメと違って、 「動かない/思ったより使えない/手持ちの機器につながらない」 で返ってきます。打ち手の性質が大きく変わります。

とくに「動作不良」として申告される返品のなかには、初期設定や使い方の行き違いが混ざります。どのくらい混ざっているかは、返品を受ける前にサポートを挟んでみないと分かりません。 ここを測ること自体が最初の打ち手です。

打ち手

返品として処理している状態
商品ページはメーカー画像と公式スペック表のみ
互換性情報は「仕様」セクションに小さく記載
初期不良の受付期間が短い
操作方法の問い合わせがCSに集中している
返品の前に解決を挟む状態
全商品に 実機の開封・動作動画 を掲載
「お使いの機種を選択 → 適合確認」のチェッカーを商品ページに設置
購入後のサポート窓口(チャット・LINE)を明示
動作不良の申告は 「優先交換/修理」 の導線に分岐
セットアップガイドを同梱

家電は「返品させない」より 「返品の前に解決させる」 のほうが本質的です。返品依頼が来たら即座に倉庫に送り返す前に、サポートで解決できないかを試す運用にすると、そこで解決した件数がそのまま「設定・使い方が原因だった割合」として残ります。次の商品ページ改善の材料になります。

3タイプを並べて見る

3つを並べると、共通して効く打ち手と、商材ごとに分かれる打ち手がはっきりします。

共通する打ち手(どの商材でも効く)
商品ページの情報量を増やす(写真・動画・実測値)
レビューの構造化(顧客都合の項目を必須化)
返品理由のデータを取得し、月次で集計する
CSのファーストレスポンスを早くする
返品ポリシーを「明瞭・親切な文言」で記載する
商材別に分かれる打ち手(特化が必要)
アパレル:実測値表 / AI試着 / モデル詳細情報
コスメ:AR試色 / サンプル販売 / 肌質診断
家電:動作動画 / 適合性チェッカー / 30日サポート
食品:賞味期限明示 / アレルゲン情報 / 少量お試し
インテリア:寸法シミュレーター / 配送組立サポート

つまり、 「返品対策のテンプレ」は存在しません。自ストアの返品理由TOP3を集計し、その理由を一個ずつ潰す打ち手を選ぶ、という地道な作業が一番の近道です。

自分のストアで再現するには

「では、どこから手をつければいいか」の手順を整理しておきます。

  1. 1

    返品理由データを3ヶ月分集める

    ShopifyのOrderステータス「Refunded」「Returned」のメモ欄、CS問い合わせの記録、返送伝票の備考。フォーマットがバラバラでも構わないので、まずは全部スプレッドシートに集めましょう。最低でも50件あれば傾向が見えます。

  2. 2

    理由を上位5カテゴリに分類する

    「サイズ」「色」「動作不良」「使い方が分からない」「期待外れ」など。商材によって出やすい分類が違うので、最初は粗くて構いません。比率を出して、TOP3を特定します。

  3. 3

    TOP1の理由に対する打ち手を1つだけ決める

    複数同時に走らせると効果が測れなくなります。「サイズ違いがいちばん多いなら、まず実測値表を全SKUに載せる」のように、1ヶ月の集中投下を1施策にします。

  4. 4

    改善後の返品率を月次で測定する

    最低3ヶ月は様子を見ます。1ヶ月目はノイズが大きいので一喜一憂しないこと。3ヶ月の移動平均で判断します。

  5. 5

    効いたらTOP2、効かなかったら別の打ち手にピボット

    「効いた施策を横展開」と「効かなかった施策を引く」の両方を素早くやることが大事です。サンクコストにとらわれない判断を。

実施チェックリストはこちら。最初の1ヶ月で全部やる必要はありません。順番にチェックを入れていく前提で構いません。

返品率改善の実施チェックリスト

  • 過去3ヶ月の返品データを1つのスプレッドシートにまとめた
  • 返品理由を上位5カテゴリに分類し、比率を出した
  • TOP1の理由に対する打ち手を1つに絞った
  • 商品ページの情報量(写真・動画・寸法・成分など)を見直した
  • レビューに「顧客都合の項目」を必須化した
  • 返品ポリシーを明瞭・親切な文言で書き直した
  • CSのファーストレスポンス時間を計測している
  • 月次で返品率をダッシュボードに載せている

やってはいけない返品対策

返品率を下げたい一心で、よく見かける危険な打ち手があります。

返品ポリシーを意図的に分かりにくく書く のは絶対NGです。特定商取引法では返品の可否・期間・送料負担を「顧客が容易に認識できるよう表示」することが義務付けられています。小さな文字で書いたり、リンクを深いところに置いたりすると、消費者庁の指導対象になります。短期の返品率は下がっても、行政指導と評判リスクで長期的には大きな損失です。

出典:消費者庁 特定商取引法ガイド 通信販売

ほかにも避けたい打ち手をいくつか。

  • 商品ページの写真を 実物より良く見せる加工:短期CVRは上がっても返品率が爆発します
  • レビューの 悪い評価だけ削除:信頼を一気に失います
  • 返品理由を「お客様都合」に丸めて データを取らない:改善のループが回りません
  • 返品送料を有料化するときに 事前告知なし:クレームが集中します

そして、もうひとつ。社内の改善議論でも 「実績か仮定か」を必ず区別する ことをおすすめします。「うちのストアでは18%が11%になりました」と「一般にこういう打ち手が知られています」は、まったく別の重さの情報です。混ぜて扱うと、打ち手の優先順位を誤ります。数字を出すときは、どの期間の、どのレポートの数字なのかまでセットにしてください。

よくある質問

商材で全く違うので、横並びの基準は置けません。日本のカテゴリ別返品率をまとめた公的統計も見当たらないため、「業界平均より高いか」を出発点にすると判断を誤ります。 自社の過去12ヶ月のトレンドと比べるのが最優先です。 新規ブランドや高単価商材は最初の半年は高く出やすいので、単月ではなく3ヶ月の移動平均で見てください。

下がり幅は事前には分かりません。規模・客層・競合の返品ポリシーで変わるので、他店の数字は参考になりません。変更するなら、前後で同じ期間・同じ流入構成を取れるタイミングを選び、CVRと返品率の両方を並べて確認してください。片方だけ見ると誤読します。もうひとつ重要なのは、ポリシー変更を「サイレントに行わない」こと。ヘッダーバナー・商品ページ・カート画面・購入完了メールの4箇所で新ポリシーを伝えると、問い合わせの発生を抑えられます。

法的には、商品の品質に問題がある場合(不良品・誤配送・破損)は受け付ける義務があります。ただし「色が思ったのと違った」「肌に合わなかった」などの顧客都合では、未開封のみとするのが一般的です。サンプルセットや少量サイズの先行販売で「合わなかったときの損失額」を顧客側でも下げる設計が、ブランド体験との両立に効きます。

「動作不良」として申告される返品には、初期設定・使い方・互換性の行き違いが混ざります。その割合は店によって違うので、まず「返品を受け付ける前にサポートを挟む」フローを作り、そこで解決した件数を数えてください。その数字がそのまま、商品ページに足すべき情報の量を示します。解決の多くが同じ質問なら、その質問の答えを動作動画やセットアップガイドに載せるのが次の一手です。

Shopify標準の「分析 → レポート」でRefund関連レポートが見られますが、理由別の集計はできません。実務では、Order編集画面のメモ欄に返品理由を統一フォーマットで入れるか、ReturnGOやAfterShip Returnsなどの返品管理アプリを入れて理由別ダッシュボードを作るのがおすすめです。Shopifyの公式ヘルプにも返金処理の手順がまとまっています(Shopifyヘルプセンター 返金)。

まとめ

3つの商材タイプを並べてみて、伝えたかったことはひとつです。 返品率対策はテンプレでは効かない、商材ごとに「効く打ち手」が違う

  • アパレル:サイズ起因が中心。実測値表・試着支援・モデル詳細で判断材料を足す
  • コスメ:色と肌質。試色・サンプル販売・肌質診断で届く前のズレを減らす
  • 家電:動作と互換性。動画・適合チェッカー・購入後サポートで返品の前に解決する
  • 共通:返品理由を分類し、いちばん多い理由から1つずつ潰す。同時に複数走らせない

返品が起きた瞬間は、お客さんの不満や不安が一番鮮度高く言葉になっているタイミングでもあります。そこを「処理する」だけで終わらせず、商品ページや顧客体験の改善ヒントとして取り込めるストアは、返品率も売上も両方伸びていきます。

返品理由の根っこには「お客さんのことを十分に理解できていない」という共通課題があります。CSの問い合わせデータや顧客タグを自社で持つこと、検索や予約のデータからお客さんの本当のニーズを掴むこと。そうした 顧客理解の積み上げ が、長い目で見たときに最も再現性の高い返品対策になります。

→ 顧客データを自社で所有する予約システム「まるっと予約」

→ 検索離脱を抑え「欲しいものに最短でたどり着ける」検索改善「まるっと検索」

返品率の打ち手を、ぜひ今月の月次レビューの議題に入れてみてください。まずは返品理由を分類するところからで十分です。

この記事はShopify予約アプリ「まるっと予約」の開発元であるPepinが執筆しています。

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SHIN

この記事の執筆者

SHIN

Pepin代表、Webエンジニアとして10年以上の経歴を持ち、
Shopifyアプリ・ストア開発 / webサービス開発 / メディア運営などマルチに活動。

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