自分のストアでLTVを計算してから改善するまで — Shopifyデータで進めるチュートリアル
「LTVが大事」というのは何度も聞いてきたけれど、自分のストアでまだ一度も計算したことがない。そんな EC 運営者の方に向けて、Shopify 標準レポートとスプレッドシートだけで LTV を出して、改善アクションまで決めるチュートリアルを書きました。
わたしも前職で EC 運営に関わっていたころ、LTV を「概念としては知っている」ところからなかなか進められませんでした。理由はシンプルで、最初の数字を出す手順が言語化されていなかったからです。この記事では、その「最初の一周」を、半日で終えられる粒度に落としています。
この記事のゴール:読み終わるころには、自分のストアの「LTV = 平均購入単価 × 平均購入頻度 × 継続期間」をスプレッドシートで算出し、改善アクション3つまで落とし込めている状態を目指します。サンプルファイルの数式までそのまま書いてあるので、コピペで進められます。
このチュートリアルの前提条件
着手する前に、必要なものと所要時間を確認しておきます。
- Shopifyストア運営歴が6ヶ月以上ある(最低でも3ヶ月分の注文データ)
- Shopify管理画面の「アナリティクス > レポート」にアクセスできる権限がある
- Google スプレッドシート または Excel が使える
- 所要時間:データ準備30分、計算30分、改善設計60分の合計2時間ほど
- 電卓は不要(スプレッドシートの関数だけで完結します)
想定ストアを先に決めておく
数字の動きをイメージしやすくするため、このチュートリアルでは想定ストアを置きます。自店のデータに置き換えながら読み進めてください。
これは業界平均値をもとに組んだ 想定ストア(架空) です。実在の店舗データではありません。
- 業態:雑貨・ギフトを扱う Shopify ストア
- 月商:200万円
- 総SKU:30点
- 運営:1名(仕入れから出荷まで全て担当)
- 開業:2.5年前
- データ期間:直近24ヶ月
この想定ストアの数字を、以降の各 STEP で繰り返し使います。最終的なゴールは次のとおりです。
掛け合わせると LTV = 4,800円 × 2.4回 × 2.5年 = 28,800円 。この数字を出すまでを、5つの STEP に分けて進めていきます。
計算から改善までの全体ステップ
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STEP 1: LTVの基本式と必要データを揃える
LTV にはいくつか流派がありますが、ECで最初に手をつけるなら次のシンプル式で十分です。
LTV = 平均購入単価 × 平均購入頻度 × 平均継続期間
各要素に必要なデータは以下の3つだけ。
- 平均購入単価:期間中の総売上 ÷ 総注文数
- 平均購入頻度:期間中の総注文数 ÷ ユニーク顧客数(年単位に換算)
- 平均継続期間:初回購入日と最終購入日の差を、顧客ごとに算出した平均
粗利ベースで見たい場合は、この LTV に粗利率をかけます。想定ストアは粗利率35%なので、粗利LTV = 28,800円 × 0.35 = 10,080円。新規獲得コスト(CPA)と比較するときは、こちらの粗利LTV を使うとブレません。
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STEP 2: Shopifyから必要データをエクスポートする
Shopify管理画面の「アナリティクス > レポート」から、以下の3つのレポートを使います。
- 総売上レポート :「アナリティクス > レポート > 売上」を選び、期間を直近24ヶ月に設定
- 顧客レポート :「アナリティクス > レポート > 顧客」の「顧客別売上」と「初回・リピート顧客」
- 注文レポート :「アナリティクス > レポート > 注文」で総注文数を確認
各レポートの右上「エクスポート」ボタンから CSV をダウンロードします。Shopifyベーシック以上のプランで標準利用できる機能です。
データ期間が3ヶ月未満だと、平均継続期間がほぼ0になり LTV が極端に低く出ます。最低でも12ヶ月分、できれば24ヶ月分のデータを準備してください。
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STEP 3: スプレッドシートで計算する
ダウンロードした CSV をスプレッドシートに貼り付けて計算します。想定ストアの24ヶ月分データなら、こんな数値になります。
項目 値 数式 期間総売上 48,000,000円 レポートから直接転記 期間総注文数 10,000件 レポートから直接転記 ユニーク顧客数 約4,166人 レポートから直接転記 平均購入単価(A) 4,800円 =B2/B3期間中の平均購入頻度 2.4回 =B3/B4年間換算(B) 1.2回/年 =B6/2(24ヶ月→1年)平均継続期間(C) 2.5年 後述の方法で算出 LTV 28,800円 =B5*B7*B8*2平均継続期間は、顧客ごとの「最終購入日 − 初回購入日」の平均で出します。Shopify顧客レポートを CSV にすると、顧客ごとの初回購入日と最終購入日が列として入っているので、
=AVERAGE(最終 − 初回)/365で年単位に変換できます。スプレッドシートで
=AVERAGE(IFERROR((D2:D5000-C2:C5000)/365, 0))を配列数式で入れれば、空欄の新規顧客を除いた平均継続年数が一発で出ます。Google スプレッドシートなら=ARRAYFORMULA(...)で囲ってください。 - 4
STEP 4: 結果を3要素に分解して読み解く
計算結果は 3つの数字の掛け算 になっているので、改善するには各要素を独立に見る必要があります。想定ストアの数字を、業界平均と並べてみましょう。
要素 想定ストア 雑貨ECの目安 状態 平均購入単価 4,800円 4,000〜5,500円 平均的 平均購入頻度 2.4回/年 2.0〜3.0回/年 やや低め 平均継続期間 2.5年 1.5〜2.5年 業界上限近い この想定ストアでは「継続期間はもう天井近い、購入頻度に伸びしろがある、購入単価は標準」という構造が見えます。つまり次の打ち手は、まずリピート頻度を上げる施策に寄せる のが合理的です。
出典:経済産業省 電子商取引に関する市場調査、Shopify Plus - Repeat Customer Stats
LTV改善は「足し算」ではなく「掛け算」の構造を見ることから始まるのがポイントです。
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STEP 5: 改善アクションを3つに絞り込む
3要素のうち最も伸びしろがあるところに、3ヶ月〜6ヶ月の集中投資をします。想定ストアの場合は購入頻度が一番効くので、リピート施策を3つに絞ります。
- 購入後フォローメール:購入翌日・1週間後・1ヶ月後の3通を自動配信。Shopify Email または Klaviyo で実装。
- リピートクーポン:初回購入から30日以内に2回目購入で500円OFFのクーポンを自動付与。
- 定期便(サブスク):消耗品カテゴリ3SKUを定期便化。Shopify公式の「定期商品」機能で実装。
これだけで購入頻度を年2.4回 → 3.6回(1.5倍)に持ち上げられれば、LTV はこう変わります。
28,800円改善前LTV現状ベース43,200円改善後LTV購入頻度1.5倍想定+14,400円顧客あたり増加粗利35%なら +5,040円ユニーク顧客数 4,166人で計算すると、年間粗利で +2,098万円 のインパクトです。投資判断のときに、この数字があるかないかで意思決定の速度がまったく変わります。
トラブルシューティング
実際にやってみると、教科書どおりに行かない場面が出てきます。想定ストアでも頻出する3パターンを置いておきます。
症状:開業3〜6ヶ月のストアで、平均継続期間がほぼ0年になり LTV が極端に小さく出る。 対処:継続期間を「実績」ではなく「業界中央値(雑貨EC なら 1.5年)」で仮置きします。Shopifyの顧客レポートを月次で見ながら、12ヶ月たった時点で実データに切り替えるのが現実的です。仮置きであることを必ずスプレッドシートに注釈で残しておくと、後で混乱しません。
応用:次にやるとよいこと
ここまでで「自店のLTVと改善方針」は固まりました。次の一歩としておすすめなのが、以下の3つです。
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セグメント別LTVを出す
新規・リピート2回・リピート5回以上の3層に分けて LTV を計算すると、施策のターゲットが明確になります。Shopifyの顧客セグメントで切り出して、同じ計算式を当てるだけです。 - 02
LTV/CPAレシオを毎月モニタリングする
LTV ÷ CPA が3を超えていれば、広告投資はアクセル。3を割っているなら、新規獲得よりリピート改善が先です。月次で数字を貼るだけでも、判断のブレが減ります。 - 03
チャネル別LTVを比較する
Instagram経由とGoogle広告経由で LTV が倍違う、というのはよくあります。Shopifyの紹介元レポートと顧客IDを突合させて、チャネルごとに同じ計算式を回します。広告予算配分の根拠になります。
よくある質問
基本は四半期に1回の見直しが目安です。LTV は数ヶ月単位ではあまり動かない指標なので、月次で見ると誤差のほうが大きく出ます。月次で追うべきは「平均購入単価」「リピート率」など、LTV を構成する要素のほうです。Shopify管理画面のダッシュボードに固定しておくと運用が楽になります。
社内の意思決定(特に広告予算配分)には 粗利LTV を使ってください。売上LTVで CPA と比較すると、原価を無視した過大評価になります。ベンチマークとして他社事例と比較するときは売上LTVが一般的なので、両方をスプレッドシートに並べて持つのが実務的です。
最初の一周は Shopify 標準レポート + スプレッドシートだけで完結します。ユニーク顧客数・総注文数・初回/最終購入日が顧客レポートで取れるので、これで十分です。セグメント別 LTV やチャネル別 LTV まで踏み込むなら、Klaviyo や Shopify Plus の高度レポートが効きます。ただし最初の数字が出るまでは、無料で始めるのを強くおすすめします。
3要素のうち、業界平均との乖離が一番大きい要素から着手します。継続期間が短いならカスタマーサポート品質、購入頻度が低いならメール配信とポイント、購入単価が低いならクロスセル・送料無料ライン、というのが王道の対応です。一気に3要素を改善しようとせず、3ヶ月単位で1要素に絞るほうが、結果として早く伸びます。
商材によりますが、消耗品カテゴリでサブスク化が成功すると、対象顧客の年間購入頻度が2倍前後になるのが一般的です。想定ストアで雑貨3SKUをサブスク化した場合、対象顧客のLTVが 28,800円 → 50,000円超まで伸びるケースもあります。サブスク導入の判断軸は別記事のbooking-system-benefitsで扱っています。
まとめ
LTV は計算式が難しいわけではなく、最初の一周をやるかどうか で差がつく指標です。今回のチュートリアルで、Shopify標準レポートとスプレッドシートだけで一通り回せることが見えたかと思います。
想定ストアの数字(4,800円 × 2.4回 × 2.5年 = 28,800円)を自店の数字に置き換えるだけで、次の打ち手の優先順位が変わります。今日のうちに CSV をダウンロードするところまで進めると、来週には改善アクションが3つ走り始める、というスケジュール感です。
本記事の想定ストアはあくまで業界平均値から組んだ 架空の例 です。自店のデータで一度手を動かしてみるのが、LTVを自分のツールにする一番の近道です。スプレッドシートの数式は記事内のものをそのまま使ってください。
リピート設計と LTV は表裏一体です。pepin.studio では、リピート顧客とのつながりを設計する Shopify アプリ「まるっと予約」を提供しています。来店予約・体験予約とECを同じ顧客IDで結ぶことで、購入頻度の構造的な改善につながります。
Shopify の標準アナリティクスだけでも LTV の材料は全部そろいます。まだ計算したことがない方は、この記事を開いたまま、CSV のダウンロードから始めてみてください。

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