EC競合分析の進め方 — 無料ツールと数字でわかる差別化戦略
「自分のストア、他と比べてどうなんだろう」。ECを運営していると、必ず一度はこの疑問にぶつかります。そして、感覚でなんとなく答えを出してしまいがちです。
でも、いまのEC市場は 感覚で戦うには大きくなりすぎ、そして細分化されすぎ ました。日本のBtoC-EC市場は26.1兆円、カゴに入れた買い物客の約7割はそのまま他店に流れ、そのうち4割は「別サイトで比較していた」のが理由です。わたしたちのストアは、常に数クリック先の競合と比較されている前提で動く必要があります。
この記事では、数字で現状を押さえたうえで、週2時間から始められる競合分析の手順をまとめます。
- 競合分析
自社と同じ市場・カテゴリで商品やサービスを展開する他社の戦略・強み・弱みを調べ、自社の立ち位置と差別化ポイントを数値・体験の両面で明確にするプロセスのことです。価格、商品ラインナップ、集客チャネル、購入体験など、複数の切り口で比較します。
データで見る現状 — なぜ競合分析が必須なのか
市場は拡大しているが、競合も増え続けている
日本のEC市場は10年で2.5倍以上に拡大しました。伸びているのは間違いないのですが、同時にストア数も急増しており「伸びる市場のなかで相対順位を落とす」ことが普通に起きています。
出典:経済産業省 電子商取引に関する市場調査(2024年度)、Shopify Press Releases、Baymard Institute Cart Abandonment Statistics
カゴに入れた後も「他店」と比較されている
カート放棄の理由を分解すると、競合分析が効く領域がはっきり見えます。送料や価格といった 相対的な要素 が過半を占めており、これは「競合より高い/遅い」ことが数字で見えていれば防げた離脱です。
出典:Baymard Institute — Reasons for Abandonments During Checkout
「他店で安いのを見つけた」が3割。裏を返せば、競合の価格・送料・配送日数を定点観測するだけで、失っているはずの売上の30%分にアプローチできるということです。
競合分析をやっている店舗と、やっていない店舗の差
現場で見ていると、競合分析の有無は集客コスト(CPA)と粗利率にダイレクトに響きます。売上規模が近い小規模EC事業者を比較したとき、競合分析を週次で回しているストアほど広告依存度が低い傾向があります。
出典:広告売上比の目安はShopify公式ブログ ROAS解説を参照し、実店舗運営の感覚値として記載
競合分析は「たまに気合いを入れてやる大仕事」ではなく、「週に2時間、決まった項目を見るルーチン」。この粒度で回せるかどうかが、中長期の利益率を決めます。
無料4点セットでどこまで見えるのか
高額ツールを契約しなくても、無料ツールの組み合わせで十分に実務レベルの分析ができます。わたしがソロで運営者さんをサポートする場合も、まずこの4つから始めます。
- 価格設定が「なんとなく」で、粗利が月ごとにぶれる
- 広告費は増やしてもCPAが改善しない
- 新商品を出しても刺さる層がわからない
- 「他と何が違うのか」を聞かれても即答できない
- 結果として、値引きで勝負しがち
- 価格と送料ラインを根拠を持って決められる
- 流入チャネルの強弱が見えて広告予算が最適化できる
- 競合にないポジションで新商品を企画できる
- 自店の強みを数値と言葉で説明できる
- 値引きせずに選ばれる理由を積み上げられる
主要な無料ツールと役割分担
SimilarWebの無料版は月間アクセスが少ないサイトだとデータが出ません。そのときはUbersuggest+ラッコキーワードで検索意図側から攻める、または実際にその競合から購入して体験側から攻めると補完できます。
競合分析の5ステップ — 週2時間で回すルーチン
- 1
競合をリストアップする
自社の主要キーワード3つでGoogle検索し、上位10件から5社を抽出します。直接競合3社(同じカテゴリ・価格帯)と、目標にしたい上位プレイヤー2社の計5社が実務的な上限です。 - 2
価格・送料・配送日数を表にまとめる
主力商品の税込価格、送料無料ライン、最短配送日数を毎週スプレッドシートに記録します。カート放棄の主因である「コスト・配送」の3軸だけでも、自店の相対位置が明確になります。 - 3
流入チャネルを調べる
SimilarWebとUbersuggestで検索・SNS・広告の比率を確認します。競合がSEOで取れているキーワードは、自店のコンテンツ企画の一次情報になります。 - 4
顧客体験を自分で購入して検証する
四半期に1回、主要競合1社から実際に購入してみます。購入導線・梱包・サンクスメール・レビュー依頼の仕組みは、数字には出ない差別化の鉱脈です。 - 5
差別化ポイントを1行で言語化する
調査結果をもとに「自店だけが提供できる価値」を1文に落とします。これがLP冒頭コピー、広告文、商品説明の柱になります。曖昧なら、まだ分析が浅いサインです。
最初の週は2〜3時間かかりますが、2週目以降はテンプレートが整うので1時間半程度で回るようになります。「毎週金曜の午前に固定」のように曜日を決めてしまうのがコツです。
差別化のヒントは小さなところにある
「どこも似たようなことをやっている」と感じたときこそ、小さな差の積み重ねが効きます。以下はソロや少人数ストアでも実装しやすい切り口です。
- 商品説明の深さで勝つ(素材の由来、作り手のストーリー、使い方提案)
- 写真のクオリティとバリエーションで差をつける(使用シーン・サイズ感)
- 購入後のフォロー体験(サンクスメール・同梱物・レビュー依頼)を磨く
- ニッチなカテゴリに特化して「〇〇専門」のポジションを取る
- ブログやSNSでの発信量と質で信頼を積み上げる
- 配送スピードや送料無料ラインで利便性を高める
価格だけで差別化すると消耗戦になります。小規模ストアの場合、価格以外の価値(接客の丁寧さ・世界観・専門性)で勝負するほうが、長期的な粗利率が守れます。Baymardのデータでも放棄理由は「価格」だけではなく「信頼感」「配送」「UX」が複合的に効いている点が重要です。
検証結果 — 期待できる変化の目安
わたしが前職時代にECを運営していたころ、競合分析を週次ルーチンに組み込んだ前後で、数値の動き方が明確に変わりました。下は小〜中規模ストアでよく見られる傾向です。
出典:一般的なEC改善の観察レンジ。実値は商材・客層で変動するため、Shopify公式のEC KPIガイドで自店の現状値を必ず確認してください
重要なのは、これらの数字は 「競合分析をやる」だけでは動かない ということです。分析の結果を自店の価格・送料・コピー・写真・導線に落として、初めて数字になります。
よくある質問
価格・送料・在庫の3項目は週次、流入チャネルと商品ラインナップは月次、購入体験の実測は四半期に1回が目安です。EC業界は動きが速いので、大型セール(ブラックフライデー・楽天スーパーセール・Amazonプライムデー)の前後は特に頻度を上げましょう。
すべてを調べる必要はありません。売上規模が近い直接競合3社+目標にしたい上位プレイヤー2社の合計5社に絞るのが実務的です。広げるより、少数を深く掘るほうが行動につながります。
表面的な模倣は逆効果です。デザインやキャッチコピーの丸コピーはブランド毀損やトラブルの原因にもなります。分析で得た知見は、自店の強みと掛け合わせて「自分たちなりのやり方」に翻訳するのがポイントです。
Shopifyの場合、テーマ・使用アプリ・チェックアウトフローがそのままUXに直結します。BuiltWithやWappalyzerといった拡張機能で使用テーマや主要アプリを推測できるので、自店のスタック選定の参考になります。
注意点 — やってはいけない競合分析
- 競合のロゴ・商品写真・コピーをそのまま転用する(著作権・不正競争防止法の問題)
- 匿名アカウントで不正にデータを取得する(規約違反になるツールもある)
- 分析のための分析になって、自店への落とし込みを怠る
- 1社だけを見すぎて、その会社のクセに引っ張られる
- 数値だけを追い、ブランドの世界観や思想を軽視する
競合分析は目的ではなく手段です。最終的に見るのは自店の顧客であり、競合はあくまで市場の相対座標を教えてくれる存在です。ここを取り違えないようにしたいところです。
まとめ
競合分析は特別なスキルは不要で、無料ツールと週2時間の枠があれば今日から始められます。大切なのは「競合を知ること」そのものではなく、調べた結果をもとに 自店のストアをどう良くするか を考えて動くこと。
- 01主要キーワードで検索して競合5社をリストアップする
- 02無料4点セットで価格・送料・流入チャネルを週次で比較する
- 03「自店だけの価値」を1文に落として、LP・広告・商品説明に反映する
Shopifyは分析レポートとマーケティング機能が標準搭載されているので、競合分析で得た気づきをすぐ施策に反映できる環境が整っています。まだストアをお持ちでない方は、無料体験から試してみてください。

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