失敗したプロダクトから学んだこと — リリースしたけど伸びなかった3本のサイドプロジェクト

「あのアプリ、どうなったんですか?」
独立してから何度か、当時の同僚やフォロワーさんに聞かれて、言葉に詰まった瞬間があります。胸を張って「伸びてます」と言えないプロダクトの話です。独立して3ヶ月、自分の名前で世に出したアプリや試作のなかには、結果的にほとんど誰にも触られなかったものが、正直、何本かありました。
恥ずかしい話ではあるんですが、きょうはその話を書こうと思います。成功した話だけを並べるより、うまくいかなかった3本の話のほうが、これから独立する人や同じような試行錯誤をしている人には、ずっと役に立つ気がするからです。完璧なスタートアップ譚ではなく、手探りで作って転んだ記録として読んでください。
この記事は「失敗したから偉い」という話ではありません。 リリース前に検証できたはずのことを、リリース後に知った 。ただそれだけの話を、独立3ヶ月目の生々しい記憶として残しておきます。
どうして、いきなり3本も作ったのか
独立したのは2026年3月。屋号を出し、事業の柱を「Shopifyアプリのまるっとシリーズ」と決めたのが、動き出しの一歩目でした。
ただ、最初からまるっとシリーズだけを淡々と作っていたかというと、そうではなくて。独立直後は、自分のなかに「とにかく出さないと始まらない」という焦りがありました。会社員の肩書きが消えた瞬間、毎月の固定費が自分の口座から減っていく感覚を初めて味わったからだと思います。
独立してすぐ、わたしは「小さくても何本か世に出したほうが、どれかが当たる確率が上がる」と思い込んでいました。結果、同時並行でサイドプロジェクトが走り、どれも中途半端に着地することになります。
いま振り返ると、これは典型的な失敗のはじまり方です。スタートアップの失敗理由を調べた有名な調査でも、トップ要因は「市場にニーズがなかった(no market need)」で35%。技術や資金より、 誰のために作るかの検証不足 で倒れるケースが最多だと示されています。
出典:CB Insights - The Top 12 Reasons Startups Fail
わたしが独立直後に作った3本も、まさにこの穴にまっすぐ落ちていきました。以下、時系列で書き出します。
世に出したけど伸びなかった、3本の記録
- 独立1ヶ月目
サイドプロジェクトA、自分が欲しい機能から作ったツール
最初に手をつけたのは、自分が会社員時代に「あったら便利だな」と感じていた管理系のツールでした。ユーザーインタビューも、簡易な市場調査もせず、過去の自分の記憶を頼りに設計しました。
結果、リリース後のインストール数は、2桁にもぎりぎり届かないくらい。プロダクトページへのアクセスはあるのに、インストールボタンが押されない。「自分が欲しかったもの」と「他のストアオーナーが欲しいもの」は、重なっていないケースのほうが多かったんです。 - 独立2ヶ月目
サイドプロジェクトB、技術的に面白かった試作
次に走ったのは、技術的に挑戦したい領域で組んだ試作でした。新しめのAPIを使うだけで心が躍る、エンジニアあるあるの動機です。動くプロトタイプまでは2週間くらいで到達したんですが、そこから先で詰まりました。
「で、これは誰の、どんな場面の痛みを解決しているんだっけ?」という問いに、自分が答えられなかったんです。プロトタイプはローカルで動いたまま、公開用のランディングすら作らず、フォルダに置かれた状態で塩漬けになりました。 - 独立2ヶ月目後半
サイドプロジェクトC、ターゲットを読み違えた企画
3本目は、ある特定のEC業態向けに企画したアプリでした。机上の想定顧客は明確で、動くものも早めに作れたんですが、実際にその業態のストアを運営されている方に話を聞くと「これ、うちでは使わないかも」と言われました。
必要だと思っていた機能が、現場ではすでに別の手段で解決されていた。設計の前提が崩れた瞬間で、結局、方向転換するのかいったん閉じるのかを迷ったまま、他のまるっとシリーズの開発に時間を取られ、こちらも静かにアーカイブになりました。 - 独立3ヶ月目
ここで初めて「順番」を疑いはじめた
3本連続でうまくいかない現実を前にして、ようやく「作る前に、もっとやることがあったのでは」と立ち止まりました。正直、1本目のときに気づけていれば、2本目と3本目の時間は別のかたちで使えたはずです。
この気づきが、いまのまるっとシリーズの開発プロセス(触る前にヒアリング、触る前にメモ、触る前に小さく公開)の原点になっています。
振り返ると、3本とも技術的には「動いた」プロダクトでした。コードが書けなくて失敗したのではなく、 作る前の検証に時間をかけなかった から伸びなかった。ここを混ぜて反省すると、次も同じ穴に落ちます。
転んで、ようやく掴んだこと
3本を経て、わたしのなかで言語化できた学びがいくつかあります。独立3ヶ月目の時点での整理なので、あと半年、1年経てばまた更新されると思いますが、いまの実感として書いておきます。
学びその1: 「自分が欲しい」は、出発点にはなっても、ゴールの根拠にはなりません。独立直後は特に、自分の経験が偏っていることを自覚したうえで、外に出て話を聞く時間を先に確保したほうが、結局は近道でした。
学びその2: 「動くプロトタイプ」と「使われるプロダクト」のあいだには、想像以上の距離があります。動かすまでが最短ルートに見えて、そこから先に「誰のどの場面で使われるのか」を詰める作業が、倍くらい必要でした。
学びその3: 塩漬けのプロダクトは、撤退の判断も「決める」仕事です。続けるのか閉じるのかを宙ぶらりんにしておくと、他のプロジェクトの集中力まで削られる。決めて、区切って、次に進む。これも独立後に習った感覚です。
3本とも、リリース前に誰かひとりでもターゲットのストアオーナーに触ってもらえていたら、出る前に方向修正できたはずです。「出してから検証する」は聞こえがいいですが、ソロプレナーにとっての時間と気力は本当に限られていて、出す前に潰せる疑問は潰しておいたほうが、結果的にまわる速度は上がるんだと、転んで初めて納得しました。
コードは1週間で書き直せるけど、3ヶ月の方向性は取り戻せないよ。
ある先輩開発者に、独立直後にもらった一言
この言葉、当時はぴんと来ていなかったんです。でも3本連続で外したあと、ふと思い出して、ノートの端にもう一度書き写しました。独立してからの時間は、会社員時代の時間と質が違う。 失った3ヶ月は、お金では埋められない 。わたしにとっては、これが一番大きな学びかもしれません。
読者のあなたへ
この記事を書こうか少しだけ迷いました。独立したての人間が、うまくいかなかった話を公開していいのか、と。でも、pepin.studioを始めたときに「自分の活動実態に正直な記事を書こう」と決めたので、その延長として残しておきます。
もし、あなたがいま何かを作ろうとしていて、「自分が欲しい」から手を動かそうとしているなら、ほんの少しだけ立ち止まってみてほしいです。半日でいいから、作る前に3人の想定ユーザーに話を聞く。それだけで、わたしが独立直後に溶かした時間の、何割かは取り戻せると思います。
それでも、作ってしまったあとで初めて分かることもあります。わたしの3本も、動かしてみたからこそ「ずれていた」と実感できた面は確かにあって、手を動かしたこと自体を後悔はしていません。ただ、 順番を変えれば、同じ学びをもう少し安く買えた 。独立3ヶ月目のわたしから、これから似たような場所に立つ人へのメモとして、ここに置いておきます。
まるっとシリーズ6本のうち、いま形になっているのはこの失敗のあとに設計し直したものです。転んだ記録を書けるくらいには、次の歩幅を決められてきた気がしています。また半年後、このメモがどう更新されているか、自分自身の宿題として残しておきます。

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