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Shopify越境EC海外販売

Shopifyで越境ECを始める手順【2026】

書いた人 個人開発者 / ソロプレナー

この記事には広告(PR)を含みます。

Shopifyで越境ECを始める手順【2026】
越境ECを始める前に費用を確かめているイメージ

Shopifyで越境ECを始めるとき、最初にやるべきなのはMarketsの設定ではありません。1件売れたときに手元にいくら残るかを先に出すことです。海外で発行されたカードの決済手数料はBasicプランで 3.9% と、国内カードの 3.55% より高く設定されています。入金通貨と違う通貨で受け取れば通貨両替手数料が 2% 乗り、チェックアウトで関税を計算させれば注文ごとにさらに取引手数料がかかります。この3つを足してから値付けをしないと、売れるほど利益が薄くなります。設定自体は管理画面から30分で終わります。難しいのはそのあとです。

2兆6,372億円
中国の消費者が日本の事業者から越境ECで買った額
2024年・前年比8.5%増(経済産業省の推計)
3.9%
海外発行カードの決済手数料(Basic)
国内発行カードは3.55%
2%
通貨両替手数料
日本を含む「その他すべての地域」の率

出典:経済産業省 — 令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

出典:Shopify — 料金プラン

わたし(SHIN)はShopifyアプリの開発者です。EC運営者ではないので、「この商品をこの国に出したら売れた」という体験談はこの記事に書きません。書けるのは、公式ドキュメントと料金表に実際に載っている仕様と数字、そして開発者として検索まわりを触ってきて分かったことだけです。記事の後半で自作の「まるっと検索」に触れますが、そこは利害関係があるので、先に立場を明かしておきます。逆に、2023年から2024年の紹介記事が今でもすすめている Managed Markets が日本のストアでは使えないことなど、自分に得のない事実もそのまま書きました。

多言語対応そのものの手順は Shopifyの多言語対応はTranslate & Adaptが最適解 にまとめてあります。この記事は、そこに書ききれない「越境ECの原価」「関税」「輸出免税」「翻訳したストアでサイト内検索がどう動くか」を扱います。

Shopifyの越境ECは、どこから手をつければいい?

順番があります。設定画面の並び順と、手をつけるべき順番は違います。

  1. 1

    1件あたりの手数料を足して値付けを決める

    海外発行カードの料率、通貨両替手数料、関税計算の取引手数料。この3つは設定を変えても消えません。先に足して、粗利が残るかを確かめます。
  2. 2

    売る国を1つか2つに絞る

    Shopify Marketsは国をいくつでも足せますが、増やすほど返品・問い合わせ・規制確認の手間が増えます。最初は物流と言語が回る範囲だけにします。
  3. 3

    マーケットを作って通貨と言語を設定する

    ここでようやく管理画面の作業に入ります。マーケットごとに通貨・言語・価格設定・ドメインなどを切り替えられます。
  4. 4

    翻訳を入れて、検索でヒットするかを確かめる

    翻訳を入れただけでは終わりません。翻訳した言葉でサイト内検索とサジェストが動くかどうかは別の話です。ここが抜けやすいポイントです。
  5. 5

    HSコードと原産国を入れて関税の扱いを決める

    チェックアウトで関税を徴収するか、着払いにするかを決めます。どちらにも副作用があります。
  6. 6

    配送サービスを国ごとに確かめる

    同じキャリアでも、国によって引き受けられるサービスが違います。送れる前提で商品ページを作ると事故になります。

この記事も、この順番で進めます。

Shopifyの越境ECは1件あたりいくらかかる?

まず費用です。Shopifyの公式料金ページには、国内発行カードと海外発行カードで別の料率が載っています。同じカード決済でも、お客様のカードがどこで発行されたかで料率が変わるということです。

プラン月額(年払い)国内カード海外カード外部決済の取引手数料
Basic3,650円3.55%3.9%2%
Grow10,100円3.4%3.85%1%
Advanced44,000円3.25%3.8%0.6%
Plus368,000円〜2.9%3.75%0.2%

出典:Shopify — 料金プラン

注目してほしいのは、プランを上げたときの下がり方です。国内カードは 3.55% から 2.9% へ0.65ポイント下がりますが、海外カードは 3.9% から 3.75% へ0.15ポイントしか下がりません。 越境ECの決済手数料は、プランを上げてもほとんど安くならない ということです。月額を上げて手数料を回収する発想は、海外売上の比率が高いストアでは効きません。

なお月払いを選ぶと、Basicは4,850円、Growは13,500円、Advancedは58,500円になります。年払いとの差は小さくないので、越境ECを1年続ける前提なら年払いのほうが計算は楽です。

通貨両替手数料はいつ発生する?

Shopifyペイメントで、お客様が支払った通貨と自分の入金通貨が違うとき、通貨両替手数料がかかります。公式ヘルプの表は地域別で、アメリカが 1.5% 、フランスが 2% 、そして「その他すべてのShopifyペイメントの地域」が 2% です。日本は個別の行がないので、この「その他すべて」に当たります。

出典:Shopify ヘルプセンター — 手数料と費用

裏を返すと、日本円だけで販売して日本円で受け取るなら、通貨両替手数料はかかりません。ただしお客様は自分の通貨で金額を判断できなくなります。2%を払って現地通貨表示にするか、2%を守って日本円表示のままにするか。これは費用ではなく、コンバージョンとのトレードオフとして考える問題です。

関税を計算させると、注文ごとに手数料がかかる

見落とされがちなのがここです。チェックアウトで関税と輸入税を計算する機能には、注文ごとの取引手数料が設定されています。公式ヘルプにはこう書かれています。「Shopify ペイメントをゲートウェイとして使用しているストアでは、チェックアウト時に関税と輸入税が計算された注文に 0.85% の取引手数料が適用されます」。Shopifyペイメント以外を主要ゲートウェイにしている場合は 1.5% です。そして「2025年2月2日より、関税と輸入税の計算にかかる取引手数料が一時的に 0.5% に引き下げられました」とも書かれています。

出典:Shopify ヘルプセンター — チェックアウト時に関税と輸入税を請求する

英語版のヘルプはもう一段踏み込んでいて、「The transaction fee is applied for every order that has duties and import taxes calculated at checkout, even if the calculated amount is zero.」と書いています。 計算結果がゼロ円でも、計算させた時点で手数料が発生します 。少額の注文が多いストアほど、この一文が効いてきます。

足すとどうなるか

公表されている率を単純に足すだけの計算です。ここはわたしの算数なので、自分のストアの条件で引き直してください。

条件合計料率1万円の注文での手数料
国内のお客様・日本円3.55%355円
海外カード・現地通貨・関税計算なし3.9% + 2% = 5.9%590円
海外カード・現地通貨・関税計算あり(一時料率 0.5%)5.9% + 0.5% = 6.4%640円
海外カード・現地通貨・関税計算あり(通常料率 0.85%)5.9% + 0.85% = 6.75%675円

同じ1万円の注文でも、国内と越境では手数料が約2倍になります。ここに国際送料と、返品が発生したときの往復コストが乗ります。国内向けの運賃をまだ詰めていない場合は、配送業者の比較で3社の運賃と持込割引を並べておくと、越境ぶんの上乗せがどれだけ効くかを同じ物差しで見られます。値付けを国内と同じにしていると、越境の注文が増えるほど全体の粗利率が下がるという現象が起きます。

一時的に引き下げられている 0.5% は、いつ 0.85% に戻ってもおかしくない数字です。事業計画は通常料率で立てて、引き下げ分は上振れとして扱ってください。

2026年のShopify Marketsで何ができる?

Shopify Marketsは、海外向けの設定をまとめて切り替えるための仕組みです。公式ヘルプによると、マーケットごとに設定できるのは通貨、言語、価格設定、テーマコンテンツ、商品の出品状況、ドメイン、税、配送オプション、そしてディスカウントとギフトカードの設定です。マーケットは「ロケーション、お客様グループ、店舗のロケーション、または販売チャネルに基づいて」作ります。

出典:Shopify ヘルプセンター — Shopify Markets

通貨と価格設定
マーケットごとに現地通貨を割り当て、為替に連動させるか固定価格にするかを選べます。端数の丸め方も設定できます。
言語とテーマコンテンツ
公開する言語を足すと、商品情報だけでなくテーマ内の文言も翻訳の対象になります。
商品の出品状況
国によって売れない商品を、そのマーケットだけ非公開にできます。規制のある商材で効きます。
ドメイン
国別のサブドメインやサブフォルダを割り当てられます。hreflangの設計とセットで考える項目です。
税と関税
チェックアウトで関税と輸入税を見積もって徴収するかどうかを、マーケット単位で決められます。
配送オプション
マーケットごとに配送方法と送料を切り替えられます。国ごとの引き受け条件は別途確認が必要です。

公開できる言語は何言語まで?

プランで上限が変わります。公式ヘルプには、Basic・Grow・Shopify・Advancedプランは「最大20言語で販売でき」、Shopify PlusとEnterprise Commerceプランは「最大30言語で販売できます」と書かれています。

出典:Shopify ヘルプセンター — 言語を管理する

翻訳の入れ方は3通りあります。公式の Translate & Adapt アプリ、互換性のある外部アプリ、そしてCSVファイルによる一括投入です。最初は Translate & Adapt で下訳を入れ、主力商品だけCSVで差し替えるという進め方が現実的だと思います。

デフォルト言語(主要言語)の変更には副作用があります。公式ヘルプは「デフォルト言語を変更すると、切り替え先の言語の既存の翻訳は削除され、ストアのコンテンツにはなりません」と明記しています。英語をデフォルトにし直したくなる場面は越境ECでよく来ますが、切り替える前に必ず翻訳をエクスポートしてください。

多言語ストアはどう作る?Markets設定の手順

ここからは管理画面の作業です。

  1. 1

    マーケットを作る

    設定からマーケットを開き、対象にする国や地域を選んでマーケットを作成します。「北米」「東アジア」のように束ねると、あとの送料設定が楽になります。
  2. 2

    通貨を割り当てる

    マーケットごとに現地通貨を設定します。為替連動にするか固定価格にするかは、商品の利益率で決めます。利益率が薄い商品は固定価格のほうが安全です。
  3. 3

    言語を追加して翻訳を入れる

    公開する言語を追加し、Translate & AdaptかCSVで翻訳を入れます。商品名・商品説明・バリエーション名は最低限そろえます。
  4. 4

    ドメインの出し方を決める

    サブドメインかサブフォルダかを選びます。あとから変えるとURLが変わるので、先に決めておく項目です。
  5. 5

    翻訳した言葉で検索してみる

    ストアフロントを翻訳した言語で開き、翻訳後の商品名で検索窓を叩きます。ここで結果が出ないなら、翻訳は「読める」だけで「探せる」状態になっていません。
  6. 6

    関税と配送を設定する

    HSコードと原産国を入れ、マーケットごとに関税の扱いと配送方法を決めます。

ステップ5を飛ばす人がとても多いので、次の節で詳しく書きます。

翻訳した商品名は、サイト内検索とサジェストでヒットする?

多言語ストアで翻訳した言葉を検索して確かめているイメージ

結論から書きます。 翻訳した商品名と商品説明は検索対象になります。翻訳したコレクション名は照合されません。そして検索窓のサジェストは、日本語・中国語・韓国語では動きません。 この3つを知らずに多言語ストアを作ると、「翻訳したのに商品が見つからない」という状態が静かに発生します。

根拠はShopifyの Predictive Search API リファレンスです。これは検索窓のサジェストを返す仕組みで、翻訳済みストアフロントで検索対象になるプロパティ(Searchable translations)が、資源の種類ごとに表になっています。

資源の種類検索対象になる翻訳プロパティ
商品body(説明文)/title/variants.title
固定ページbody/title
ブログ記事body/title
コレクション表に行がない

商品は、翻訳した商品名・説明文・バリエーション名が検索対象になります。ここは安心してよい部分です。問題はコレクションで、この表に行がありません。そして同じページの制限事項に、はっきりこう書かれています。「Collection suggestions are based on the store's primary language. A customer's search won't be compared to a collection's translated content.」。コレクションの候補はストアの主要言語で照合され、翻訳したコレクション名とは突き合わされない、という意味です。なお、この表と制限事項はサジェストを返すAPIの仕様です。Enterを押したあとの通常の検索結果ページは別の検索エンジンで動くので、自分のストアで両方を試して答え合わせをしてください。

出典:Shopify.dev — Predictive Search API

つまり、日本語を主要言語にしたまま英語を足したストアで、お客様が英語のコレクション名(たとえば翻訳して付けた「Summer Collection」)を検索窓に打っても、コレクション候補としては出てきません。照合されているのは日本語のコレクション名のほうだからです。カテゴリで回遊させる設計のストアほど、ここが痛みます。

検索窓のサジェストが出ない言語がある

同じリファレンスには、予測検索(サジェスト)が使える言語の一覧が載っています。45言語が並んでいて、アフリカーンス語もフェロー語もラテン語も入っています。そこに 日本語・中国語・韓国語は入っていません 。

これは越境ECで効いてきます。日本のストアが最初に狙う市場は東アジアと英語圏が多いのに、東アジア3言語はまとめてサジェストの対象外です。英語のお客様には候補が出て、中国語のお客様には出ない、という非対称が標準仕様として存在します。

自分のストアがどうなっているかは、推測せずに確かめられます。ストアフロントのソースを表示して、<head> の中の <script id="shopify-features"> を探してください。このタグのJSONに predictiveSearch というキーがあり、値が true なら対応、false なら非対応です。Shopify自身がこの確認方法をドキュメントに書いています。

そのほか、多言語ストアで踏みやすい仕様

  1. 01

    クエリ候補は英語だけ

    過去の検索語をもとにした候補は英語でのみ提供され、ストアの主要言語とお客様のセッションの両方が英語である必要があります。日本語を主要言語にしている時点で対象外です。
  2. 02

    1種類あたり最大10件

    APIが返せる候補は、種類ごとに最大10件です。商品が数千点あっても、サジェストに映るのは常に上位10件だけという前提で設計します。
  3. 03

    説明文をそのまま出すと言語が混ざる

    リファレンスは「You shouldn't output the body content of resource objects for stores that support multiple languages.」と注意しています。多言語ストアではbodyの中身に各言語の翻訳が混ざって入るためです。テーマのサジェストが説明文の抜粋を出す作りになっているなら、多言語化した時点で見直しが必要です。
  4. 04

    部分一致はテーマの言語に依存する

    単語の途中まで打ったときの候補(partial word matches)は、特定の言語のテーマでしかサポートされないと明記されています。日本語ストアで「途中まで打っても出る」を前提にしないでください。

日本語そのものの検索がどう動いているか、なぜ表記ゆれで0件になるのかは Shopifyの日本語検索はなぜ弱い?仕組みと2026年の改善策 に仕様から書いてあります。この記事では繰り返しません。越境の文脈で押さえるべきなのは、「日本語側の弱さ」と「翻訳側の穴」が別々の原因で同時に起きる、という点です。管理画面や帳票まで含めた日本語対応の全体像は Shopifyは日本語で使える?管理画面・検索・帳票の日本語対応 にまとめてあります。

翻訳を入れたら、その言語で3種類のテストをしてください。翻訳した商品名で検索する、翻訳したコレクション名で検索する、検索窓に2文字打ってサジェストが出るかを見る。この3つで、どこが効いていないかが切り分けられます。

わたしが作っている まるっと検索 は、公開ロケールを自動で検出して、言語ごとに翻訳済みテキストを検索する作りにしています。多言語ストアで「日本語では出るのに英語では出ない」が起きたときの受け皿になる機能なので、越境ECの文脈では相性がいいはずです。無料のFreeプランは商品50点まで、Basic(月額$29.99)で商品数無制限とヘッダーの検索候補、Pro(月額$49.99)で独自の言い換え辞書や商品ブーストが使えます。有料プランは14日間の無料体験つきです。

出典:Shopify App Store — まるっと検索

→ まるっと検索の詳細を見る

関税と輸入税はどう設定する?DDPとDAPの違い

国際配送と関税の流れを整理しているイメージ

越境ECで最もクレームになりやすいのが関税です。商品が届いたときに、お客様が予想していなかった金額を配送業者から請求される。この体験は返品と低評価にまっすぐつながります。防ぐ手はあるのですが、その手にも副作用があります。

DDPとDAP

DDP(Delivered Duty Paid) は、販売者が輸入にかかる費用を負担し、チェックアウトの時点でお客様から回収する方式です。 DAP(Delivered at Place) は、お客様が配送業者に対して輸入費用を支払う方式で、公式ヘルプは「the customer is responsible for paying any import costs to the shipping carrier」と説明しています。受け取り時に請求が発生するのはDAPのほうです。

設定の前に必要なもの

公式ヘルプは「Verify that you've added Harmonized System (HS) codes and country of origin to your products.」と書いています。HSコードが無い商品については「If a product is missing an HS code, then calculations are based on the product's description」となり、商品説明文から推定される計算になります。そして「HS codes are required for all international orders.」とも明記されています。

出典:Shopify ヘルプセンター — 関税と輸入税

もうひとつ、配送ラベルの制約があります。関税を徴収した注文のラベルを買えるキャリアは限られていて、公式ヘルプが挙げているのは Canada Post(米国宛のみ)、DHL Express、DHL Express Canada、DHL eCommerce です。それ以外のキャリアでは「you can't purchase a label for orders where duties have been collected」と書かれています。 関税を前もって徴収する運用にすると、使える配送手段が絞られる ということです。ここを確認せずに関税徴収をオンにすると、出荷の段階で詰まります。

チェックアウトで関税を徴収する運用

メリット
受け取り時の追加請求が消えるお客様が最後に見た金額のまま完結します。クレームと受け取り拒否が減ります。
返品率の低下が期待できる「思っていたより高かった」という理由の返品は、金額を先に見せることで減らせます。
デメリット
注文ごとに取引手数料がかかる計算額がゼロでも手数料は発生します。少額注文が多いストアほど比率が重くなります。
使える配送キャリアが限られるDDPラベルに対応したキャリアでないと、ラベルを購入できません。
表示価格が高く見える同じ商品でも、関税込みの表示は比較サイト上で不利に見えることがあります。

判断の目安はこうです。単価が高く、返品されると往復の送料が痛む商材はDDP。単価が低く、手数料の比率が効く商材はDAPにして、商品ページと注文確認メールで「到着時に関税が発生する可能性がある」と明記する。どちらにしても、黙っておくのが一番まずい選択です。

越境ECの消費税はどうなる?輸出免税の条件

海外のお客様に売った分の消費税はどうなるのか。国税庁のタックスアンサーには「販売が輸出取引に当たる場合には、消費税が免除されます」と書かれています。国内で消費されないものには内国消費税をかけない、という考え方です。しかも「輸出取引の場合であっても、課税仕入れに含まれる消費税および地方消費税の額について、申告の際に仕入税額を控除することができます」とあります。売上には消費税がかからず、仕入れ分は控除できるということです。

ただし条件があります。「輸出免税の適用を受けるためには、その取引が輸出取引等である証明が必要です」。そして証明書類を「納税地等に7年間保存する必要があります」。

輸出のしかた保存すべき証明書類
輸出の許可を受ける貨物輸出許可書(税関長が証明した書類)
郵便物・資産価額が20万円超輸出許可書(税関長が証明した書類)
郵便物・20万円以下の小包郵便物またはEMS郵便物日本郵便から交付を受けた引受けを証する書類と発送伝票等の控え
郵便物・20万円以下の通常郵便物日本郵便から交付を受けた引受けを証する書類(品名・数量・価額を追記)

出典:国税庁 — No.6551 輸出取引の免税

20万円以下でEMSを使う場合に必要なのは、引受けを証する書類と発送伝票の控えです。しかもその控えには、輸出した事業者の氏名・住所、品名と品名ごとの数量と価額、受取人の氏名・住所、日本郵便による引受けの年月日が記載されている必要があります。 発送が終わったら伝票の控えを捨てる、という運用をしていると輸出免税が取れません。 ここは越境ECを始めた初月から効いてくる話です。

2026年10月1日以後の輸出取引には条件が1つ増えます。国税庁のページには、代金を現金や「支払いがその取引相手からのものであることが明らかでない方法」で受領する場合、上記の書類に加えて輸出先の税関が発行する輸入許可書などの保存が必要になると書かれています。銀行振込や荷為替手形による決済はこれに該当しないとも明記されているので、通常のカード決済や銀行振込で回しているストアは影響を受けません。暗号資産を交換業者を介さずに受け取るようなケースが対象です。

わたしは税理士ではありません。上に書いたのは国税庁のページに実際に載っている内容だけで、自分のストアの取引がどの区分に当たるかの判断は、必ず顧問の税理士か所轄の税務署に確認してください。

国際配送はどう選ぶ?

国際配送の手段を比べているイメージ

日本郵便のEMSは、公式サイトによると「世界120以上の国や地域に30kgまでの書類やお荷物を安心、簡単、便利に送れる国際郵便で最速のサービス」です。冷凍・冷蔵に対応したクールEMSもあります。小さく始めるならここが出発点になります。

出典:日本郵便 — EMS(国際スピード郵便)

ただし「120以上の国に送れる」は「いつでもどの国にも送れる」という意味ではありません。日本郵便は国・地域別の差出可否を公開していて、そのページにはこう書かれています。「各国・地域宛の航空便の減便等が継続していることから、差し出された国際郵便物のお届けに遅延が生じる恐れがあります」。さらに「輸送経路の途絶等により引受け後に送達不能となった国・地域宛の郵便物については、返送し、郵便料金等をお返しする場合があります」とも書かれています。

出典:日本郵便 — 国・地域別の差出可否

マーケットを開ける前に確認すること

  • その国宛にEMSや国際エアパケットを引き受けているか(差出可否早見表で確認)
  • 商品が「送れないもの」に当たらないか(全世界共通のものと、国ごとのものがある)
  • 関税を徴収する場合、その配送方法がDDPラベルに対応しているか
  • 遅延したときの問い合わせに、誰がどの言語で答えるか
  • 返品が発生したときの送料を、どちらが負担すると書いてあるか

最後の項目は返品ポリシーの話です。国内向けのポリシーをそのまま翻訳すると、国際返送料の負担が書かれていないまま公開されることになります。往復の送料が商品代金を超えることも珍しくないので、「返品は受け付けるが返送料はお客様負担」「特定の国からの返品は受け付けない」といった線引きを、翻訳前の日本語の時点で決めておいてください。

Managed Marketsは日本のストアで使える?

使えません。ここは2023年から2024年に書かれた越境ECの紹介記事と、いま現在の仕様が食い違っている部分です。

Managed Markets は、Shopifyが Global-e と組んで提供する仕組みで、公式ヘルプによると「Global-e becomes the merchant of record」となります。販売者としての法的な立場をGlobal-eが引き受け、税務申告や現地の支払い手段、関税の管理を代行する形です。負担が大きく減るので、紹介記事が越境ECの切り札として挙げたくなるのも分かります。

ただし同じページにこう書かれています。「Managed Markets is only available to merchants based in the continental United States」。アメリカ本土に拠点のあるマーチャント限定で、カナダと英国の一部ストアが追加で対象になっている状態です。 日本に拠点のあるストアは対象外です。

出典:Shopify ヘルプセンター — Managed Markets

検索で出てくる越境ECの解説記事には、Managed Marketsを日本のストアの選択肢として紹介しているものが今も残っています。悪意があるわけではなく、書かれた時点の情報のまま更新されていないだけです。越境ECまわりは仕様変更が早いので、記事を読んだら必ず公式ヘルプの原文で裏を取ってください。この記事も同じように扱ってもらってかまいません。

越境ECの市場はいま、どう動いている?

数字も更新しておきます。経済産業省の令和6年度調査によると、2024年に中国の消費者が日本の事業者から越境ECで購入した額は 2兆6,372億円(前年比8.5%増)でした。中国の消費者の越境EC購入額の総額は 5兆7,769億円(7.2%増)なので、そのうちの約46%が日本の事業者からということになります。

出典:経済産業省 — 令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました

米国の消費者の越境EC購入額は 2兆7,144億円(7.3%増)、日本の消費者が海外から買った額は 4,410億円(4.8%増)です。日本は「買われる側」としては大きく、「買う側」としては小さい。この非対称が、日本のストアにとっての越境ECの位置づけをそのまま表しています。

ちなみに同じ調査で、2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模は26.1兆円(前年比5.1%増)、EC化率は9.8%と報告されています。中国の消費者が日本の事業者から買った 2兆6,372億円は、国内BtoC-EC市場のちょうど1割に当たる規模です。「越境は特殊なチャネル」という感覚は、数字の上ではもう合っていません。

Shopifyの越境ECでよくある失敗は?

最後に、公式ドキュメントから導ける範囲で、つまずきやすいポイントを並べます。

  1. 01

    国内と同じ値付けのまま海外に出す

    海外カードの料率、通貨両替手数料、関税計算の取引手数料を足すと、国内注文の約2倍の手数料がかかります。マーケットごとの価格調整で吸収するのが基本です。
  2. 02

    翻訳を入れて終わりにする

    翻訳は「読める」状態を作りますが、「探せる」状態は別に作る必要があります。コレクション名の翻訳は検索の照合対象になりません。
  3. 03

    HSコードを入れずに関税をオンにする

    HSコードが無いと、商品説明文からの推定計算になります。推定が外れれば、差額は配送業者からの請求として後からやってきます。
  4. 04

    配送キャリアを決めずに関税徴収を有効にする

    DDPラベルに対応していないキャリアでは、関税を徴収した注文のラベルを購入できません。設定順を間違えると出荷で止まります。
  5. 05

    発送伝票の控えを保存しない

    20万円以下の郵便物で輸出免税を受けるには、日本郵便から交付された引受けを証する書類と発送伝票の控えが要ります。保存期間は7年です。
  6. 06

    デフォルト言語を軽い気持ちで切り替える

    切り替え先の言語に入っていた既存の翻訳が削除されます。エクスポートせずに実行すると戻せません。
  7. 07

    古い記事のアプリ構成をそのまま真似する

    Managed Marketsのように、日本のストアでは選べないものが混ざっています。公式ヘルプで裏を取ってから検討リストに入れてください。

プラットフォーム選びの段階で迷っているなら、海外販売への対応を含めた比較を Shopify vs STORES 徹底比較 に、国内向けの運用アプリの選び方を Shopifyの日本語対応アプリだけで始めるEC運営 にまとめてあります。決済手段そのものの比較は Shopifyペイメントの審査・設定・手数料 が詳しいです。

よくある質問

料金ページの機能比較には、海外販売の項目としてストアフロントの翻訳、現地通貨での価格表示、Shopify Marketsでのローカライズ販売、現地の決済方法への対応、現地ドメインの割り当て、関税と税金の見積もり・徴収が並んでいます。現地通貨での価格表示と現地の決済方法については「Shopify ペイメントが必要です」という注記が付いています。プランごとの料率差は国内カードで 3.55% から 2.9% 、海外カードで 3.9% から 3.75% です。海外売上の比率が高いほど、プランを上げても手数料は下がりにくくなります。

日本円だけで販売して日本円で受け取るなら発生しません。公式ヘルプの表では、通貨両替手数料はアメリカが 1.5% 、フランスが 2% 、その他すべてのShopifyペイメントの地域が 2% となっていて、日本は個別の行がないため「その他すべて」に当たります。ただし現地通貨表示をやめると、お客様は自分で為替を計算しながら買うことになります。手数料を取るか、買いやすさを取るかの選択です。

仕様です。Shopifyの Predictive Search API リファレンスには「Collection suggestions are based on the store's primary language. A customer's search won't be compared to a collection's translated content.」と書かれています。コレクションの候補はストアの主要言語で照合され、翻訳したコレクション名とは突き合わされません。商品については翻訳した title・body・variants.title が検索対象になるので、コレクションだけが例外です。カテゴリ導線に頼っているストアは、商品タイトルやタグ側に翻訳語を含めておくと保険になります。

予測検索の対応言語に日本語・中国語・韓国語が入っていないためです。リファレンスに並んでいるのは45言語で、その一覧に東アジアの3言語はありません。自分のストアの状態は、ストアフロントのソースにある shopify-features スクリプトタグの predictiveSearch の値で確認できます。false なら非対応です。対処はテーマの改造か、サジェストを持つ検索アプリの導入の二択になります。

単価と返品コストで決めてください。チェックアウトで取ると受け取り時の追加請求が消えますが、注文ごとに取引手数料がかかり、計算額がゼロでも発生します。また関税を徴収した注文のラベルを購入できるキャリアは、Canada Post(米国宛のみ)、DHL Express、DHL Express Canada、DHL eCommerceに限られます。着払いにする場合は、商品ページと注文確認メールに「到着時に関税が発生する可能性がある」と必ず明記してください。

国税庁のタックスアンサーによると、販売が輸出取引に当たる場合は消費税が免除されます。課税仕入れに含まれる消費税は仕入税額控除の対象になります。ただし輸出取引である証明が必要で、区分に応じた書類を7年間保存しなければなりません。20万円以下の小包郵便物やEMS郵便物なら、日本郵便から交付を受けた引受けを証する書類と発送伝票等の控えが該当します。判断に迷う取引は税理士か税務署に確認してください。

使えません。公式ヘルプに「Managed Markets is only available to merchants based in the continental United States」と書かれていて、アメリカ本土のマーチャント限定です(カナダと英国の一部ストアが追加対象)。Global-eがmerchant of recordになる仕組みなので、日本のストアが同じ体験を求めるなら、越境EC向けの外部サービスを個別に検討することになります。日本語で紹介されている記事にはまだ選択肢として載っているものがあるので、注意してください。

プラン上の上限は、Basic・Grow・Shopify・Advancedが最大20言語、PlusとEnterprise Commerceが最大30言語です。ただし上限まで使う必要はありません。増やすほど翻訳の更新漏れが起きやすくなり、サジェストが効かない言語では検索の作り込みも必要になります。まずは1言語追加して、その言語で商品・コレクション・サジェストの3点テストが通る状態を作ってから次に進むほうが、結果として早いです。

まとめ

越境ECの手順をおさらいするイメージ

Shopifyの越境ECは、設定の難しさで止まることはほとんどありません。止まるのは、費用と仕様を知らずに進めたときです。

  • 海外カードは国内カードより高く、プランを上げても下がり幅が小さい(3.9%から3.75%)
  • 通貨両替手数料は日本を含む「その他すべての地域」で2%
  • 関税計算の取引手数料は、計算額がゼロの注文にも発生する
  • 翻訳した商品名は検索できるが、翻訳したコレクション名は照合されない
  • 予測検索の対応45言語に日本語・中国語・韓国語は入っていない
  • 20万円以下の郵便物で輸出免税を受けるには、引受けを証する書類と発送伝票の控えを7年保存する
  • Managed Marketsは日本のストアでは使えない

最初にやることは1つです。自分の主力商品の価格に、海外カードの料率と通貨両替手数料を足してみてください。そこで粗利が残るなら、Marketsの設定に進んで問題ありません。残らないなら、直すべきなのは設定ではなく値付けです。

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この記事は、Shopify予約アプリ「まるっと予約」の開発者、大島慎平(SHIN)が書いています。

Shopify越境EC海外販売
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大島慎平(SHIN)

この記事の執筆者

個人開発者 / ソロプレナー

日本のShopifyストア向けアプリ「まるっとシリーズ」を、AIのコーディングツールと一緒に1人で企画・開発・運営しています。書籍編集者からWebエンジニアに転じて約10年。YouTubeでは、1人で事業をつくる過程を話しています。

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