EC開業届の出し方 — 個人事業主・法人の手続きガイド
ECを始めるときに最初にやるべき届出は、個人事業主なら 税務署への「開業届」と「青色申告承認申請書」の2枚だけ です。これを出せば年間最大65万円の控除が使え、提出期限は事業開始から1か月以内。法人化は年間課税所得500万〜800万円が目安です。業種によっては保健所・警察署への追加届出が必要になります。この記事では、法的要件・提出方法・テンプレ・法人化の判断基準までQ&A形式で答えていきます。
このページでわかること
Q1. 開業届は本当に出すべき?
結論から言うと、ECで継続的に売上を得るなら 開業届は必ず出すべき です。出さなくても罰則はありませんが、 青色申告特別控除(最大65万円) が受けられなくなるので、実質的には損しかありません。
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
個人が新たに事業を始めたとき、税務署に提出する届出書。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、事業開始日から1か月以内の提出が原則です。届出自体は無料で、提出しなくても罰則はありません。ただし、青色申告を利用するためには事前にセットで提出しておく必要があります。
わたし自身、独立してから実感したのですが、開業届を出していないと「事業用の銀行口座が開けない」「補助金申請でハネられる」といった、地味だけど積み重なると面倒な場面が何度も出てきます。最初の1時間で済む手続きを、あとで数日がかりで巻き戻すのは割に合いません。
Q2. 税務署にはどうやって提出すればいい?
提出方法は 窓口持参・郵送・e-Tax の3択です。慣れていない方は、freee開業やマネーフォワード クラウド開業届のような無料ツールで書類を作成してから提出するのが確実です。
- 1
書類を作成する
国税庁のサイトから「個人事業の開業・廃業等届出書」PDFをダウンロードするか、freee開業などの無料ツールで作成します。氏名・住所・屋号・事業の概要(例: インターネット通信販売業)を記入します。同時に 「所得税の青色申告承認申請書」 も必ず用意してください。
- 2
マイナンバーと本人確認書類を準備する
開業届にはマイナンバーの記載が必要です。提出時はマイナンバーカード、または通知カード+運転免許証などの本人確認書類のコピーを添えます。
- 3
税務署に提出する
管轄の税務署に持参、郵送、または e-Tax で提出します。郵送の場合は控え用のコピーと返信用封筒(切手貼付)を同封。 控え(受領印付き)は必ず受け取る こと。銀行口座の開設や補助金申請で提示を求められます。
- 4
都道府県税事務所にも出す
個人事業開始申告書を都道府県税事務所に提出します。提出期限は自治体によって異なりますが、概ね事業開始から15日〜1か月以内です。開業届とは別の書類なので忘れずに。
freee開業やマネーフォワード クラウド開業届を使えば、画面の質問に答えるだけで開業届と青色申告承認申請書をまとめて作成できます。無料で利用でき、e-Tax との連携もスムーズです。初めての方は迷わずこちらを使うのが早いです。
Q3. 個人事業主と法人、どちらで始めるべき?
売上がこれから立ち上がる段階なら、ほぼ一択で個人事業主です。法人化は信用と節税のメリットがありますが、立ち上げコストと固定費が跳ね上がるため、キャッシュフローを圧迫します。
初期費用: 0円(開業届のみ) 手続き: 税務署へ2枚の書類を出すだけ 向いているケース: 年間所得500万円以下・ソロ運営・まず試してみたい段階 デメリット: 社会的信用は法人より低く、BtoB取引で不利になることがある
初期費用: 株式会社 約25万円 / 合同会社 約10万円 手続き: 定款作成・設立登記・税務署/都道府県/市区町村への届出 向いているケース: BtoB取引中心・複数人で始める・最初から規模を追う デメリット: 赤字でも法人住民税 約7万円/年が発生、会計・税務の難易度が上がる
出典:法務省 商業・法人登記申請手続、e-Gov 法令検索 会社法
「最初は個人事業主で始めて、売上が安定してきたら法人化する」というルートが、わたしの周囲のスモールビジネスオーナーでも圧倒的多数派です。個人事業主から法人化する際は、屋号や取引先との契約を引き継ぐ手続きも発生するので、時期を見極めて動くのがコツです。
Q4. 開業届以外に必要な届出は?
開業届だけで終わりではありません。ECを動かすうえで実務上セットで必要になる手続きを整理しておきます。
| 届出 / 手続き | 提出先 | 提出期限 | 必要性 |
|---|---|---|---|
| 所得税の青色申告承認申請書 | 税務署 | 開業から2か月以内 | 控除を使うなら必須 |
| 個人事業開始申告書 | 都道府県税事務所 | 自治体による(15日〜1か月) | 原則必須 |
| 事業用の銀行口座開設 | 金融機関 | 任意 | 会計分離のため実質必須 |
| 特定商取引法に基づく表記 | 自社ECサイト | 公開前 | 法令で掲載義務 |
| プライバシーポリシー | 自社ECサイト | 公開前 | 個人情報保護法で必須 |
特商法とプライバシーポリシーは、Shopify管理画面の「ポリシー設定」からテンプレートを呼び出せます。ただし英語ベースなので、日本の法令に沿った形に書き換える必要があります。
特定商取引法に基づく表記は「ECサイトに掲載義務がある法定事項」です。販売者の氏名・住所・電話番号・返品条件などを記載する必要があり、未掲載の場合は行政指導や業務停止命令の対象になり得ます。
Q5. ECならではの追加届出はある?
扱う商品のジャンルによって、追加の許可・免許が必要になるケースがあります。ここを見落とすと、開業後に販売停止や罰則のリスクが一気に跳ね上がります。
- 食品販売: 営業許可の取得(保健所)。製造・加工・小分けするなら許可必須、密封包装済みの再販なら届出のみでOKな場合もある
- 中古品販売: 古物商許可(警察署)。ブランドリユース・リセール・フリマ仕入れ転売はすべて対象
- 酒類販売: 通信販売酒類小売業免許(税務署)。クラフトビールのEC販売などはこれに該当
- 化粧品販売: 化粧品製造販売業許可(都道府県)。自社ブランド化粧品をゼロから作る場合は必要、OEM購入の再販は原則不要
- 医薬部外品・医療機器: 薬機法による販売業許可(都道府県)。サプリメントや肌着の効能訴求で踏み外しやすい領域
食品・中古品・酒類を扱うストアで許可取得をサボると、営業停止だけでなく刑事罰(懲役・罰金)の対象になるケースがあります。「あとで取ろう」は確実に事故の温床になるので、仕入れと同時進行で進めるのが安全です。
出典:警察庁 古物営業法、国税庁 通信販売酒類小売業免許、厚生労働省 薬機法
Q6. 個人事業主から法人化するタイミングは?
一般的には、 年間課税所得が500万〜800万円を超えたあたり が法人化検討の分水嶺です。判断軸は「所得税の累進税率 vs 法人税の実効税率」「消費税の免税期間」「信用力」の3つ。
| あなたの状況 | 法人化の判断 | 理由 |
|---|---|---|
| 年間課税所得300万円以下 | 個人事業主を継続 | 法人化すると固定費増で手取りが減る |
| 年間課税所得500〜800万円 | 法人化を検討開始 | 所得税の累進税率が高まり、法人税のほうが有利に |
| 年間課税所得800万円超 | 法人化推奨 | 節税メリットが明確に出るライン |
| BtoB取引が中心 | 規模に関わらず法人化検討 | 取引先の与信審査で法人が求められる場合あり |
法人化すると 設立後最大2年間は消費税の免税事業者 として扱える制度があります(資本金1,000万円未満などの条件あり)。個人事業主の課税事業者化のタイミングと合わせて設計すると、トータルのキャッシュフローが大きく変わります。判断が難しい段階で税理士に一度相談すると、5万円程度の費用で数十万円の節税になるケースも珍しくありません。
出典:国税庁 法人税の税率
まだ迷っている方へ
開業届は「出すか出さないか」で悩む書類ではなく、ECで売上を立てるなら 出すのが前提 の手続きです。考え込む時間より、freee開業で15分ほどかけて作成し、控え付きで提出してしまうのが最短ルート。あとの青色申告・特商法・許可取得は、ECサイト構築と並行して1〜2週間で整えていきましょう。
届出関連はどれも「出さなかったとき」のダメージが、手続きにかかる時間を大きく上回ります。開業の初日に済ませておけば、あとは本業に集中できる環境が手に入ります。

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