ShopifyのB2B機能で卸売販売を始める方法 — 設定から運用まで
世界のB2B EC市場は2023年の 18.7兆ドル から2030年に 57.6兆ドル へ拡大予測、Shopify上のB2B GMVは2025年Q2時点で 前年比101% 成長しています。「卸売は別プラットフォームを契約するもの」という常識は、すでに崩れつつあります。Basic以上のプランで使える ネイティブB2B機能 を、企業プロファイル → カタログ → 支払い条件の3ステップで設定すれば、既存のB2Cストアにそのまま卸売チャネルを統合できます。
この記事ではB2B市場のデータを起点に、ShopifyでB2Bを始めるべき理由・戦略フレームワーク・3ヶ月の実行ロードマップ・KPI設計までを通しで解説します。
市場データ:B2B EC は急拡大フェーズにある
「卸売はオフライン中心」というイメージはもう古いです。McKinseyによれば、B2B購買担当者の 80% はデジタルチャネルでの取引を選好しており、Shopifyの公式データもそれを裏付けています。
出典:Mordor Intelligence B2B E-Commerce Market Report、Digital Commerce 360 — Shopify B2B Q2 FY25、McKinsey B2B Pulse 2024
このカーブの伸びは、 B2C ECの成長率(CAGR 約9%)を上回るペース です。Shopifyが2024年末からBasic・Grow・AdvancedプランにB2B機能を段階的に開放したのも、この市場拡大を取りに行く戦略の一環と読めます。
なぜ今、ShopifyでB2Bを始めるべきか
データから読み取れる「今」のシグナルは3つあります。それぞれ独立した追い風で、合わさると無視できない大きさになります。
- 01
プラン開放によるコスト障壁の消失
以前はShopify Plus(月額$2,300〜)の専用機能だったB2Bが、 Basicプラン($39/月)から使える ようになりました。年間コスト差は約30万ドル。中小ブランドが卸売チャネルを試すコストが事実上ゼロになっています。
- 02
購買担当者の世代交代
B2B購買担当の 73%がミレニアル世代 に移行しており、彼らは「営業との電話・FAX・対面商談」より「セルフサーブのオンライン購買」を好みます。アナログな取引フローを残しているブランドは、若手バイヤーから選ばれにくい構造になっています。
- 03
B2C資産の流用が可能
既存のB2Cストアの商品データ・在庫・配送設定をそのまま転用でき、立ち上げ工数が極端に小さく済みます。「別システムを契約してデータ二重管理」のような苦痛はありません。
出典:McKinsey: The future of B2B sales is hybrid
わたし自身、Shopifyアプリ開発者として複数のD2Cブランドを見てきた中で、「卸売の話は来てるけど別プラットフォームを契約するほどじゃない」という相談がここ半年で目に見えて増えました。Shopify内で完結する選択肢が現実的になったタイミングだと感じています。
B2B戦略の4つのフレームワーク
ShopifyのB2B機能で取れる戦略は、 取引先の数 × 価格構造の複雑さ で分類できます。
| 戦略タイプ | 適する取引先数 | 価格構造 | 設定難易度 |
|---|---|---|---|
| A. 一律掛け率モデル | 〜10社 | 全商品○%オフ | ★☆☆ |
| B. 商品別卸価格モデル | 〜30社 | バリエーション別個別価格 | ★★☆ |
| C. 数量割引モデル | 〜100社 | 購入数量で段階的に変動 | ★★☆ |
| D. 取引先ランクモデル | 100社〜 | 企業ごとに異なるカタログ | ★★★ |
全商品「定価の70%」のような単純な掛け率を1つのカタログに設定し、すべての取引先に適用します。設定は10分で済み、運用負荷もほぼゼロ。卸売の感覚を掴むまでの最初の3ヶ月はこれで十分です。
取引先が30社を超えたら、ゴールド/シルバー/ブロンズなどのランクで複数カタログを使い分けます。年間取引額や支払い条件の遵守度でランクを決め、ロイヤルティ施策と連動させましょう。
数量ルールの典型値
B2Bでよく使われる数量ルールの設定パラメータは以下の4つです。Shopifyの「カタログ→数量ルール」で商品ごとに指定できます。
- 最小注文数量:10〜24個(小売店向け)、ケース単位(量販店向け)
- 最大注文数量:在庫枯渇防止のため、新規取引先は100個までに制限
- 増分単位:6個・12個など、ケースサイズに合わせる
- ケース単位パック販売:物流効率と利益率を両立
実行ロードマップ:3ヶ月で卸売チャネルを立ち上げる
データドリブンに進めるなら、 3ヶ月で1社目の取引、6ヶ月で5社、12ヶ月で20社 が現実的な目標値です。以下のロードマップを軸に、PDCAを回していきましょう。
- Week 1〜4
Month 1:基盤構築
プラン選定(Basic以上)、企業プロファイルのテスト作成、自社向けテストカタログの設定、卸売価格表の社内ドラフト作成。テスト注文で全フローを通します。
- Week 5〜8
Month 2:パイロット取引先
既存の取引候補1〜2社を企業プロファイルとして登録し、本番カタログを割り当てます。Net 30の支払い条件で初回発注を受けます。請求書発行・入金確認のオペを確立しましょう。
- Week 9〜12
Month 3:拡大と自動化
パイロットの結果を踏まえてカタログを2〜3パターンに整理します。新規取引先の獲得チャネル(既存B2C顧客への営業メール・展示会など)を稼働させ、Sidekick AI で企業登録を半自動化していきます。
Month 1 の具体ステップ
- 1
プランを確認・必要ならアップグレード
Basic以上のプランか確認します。Starter/トライアル中はB2B機能に制限があるので、卸売を本格運用するなら最低でもBasicに上げましょう。
- 2
企業プロファイルを1件テスト作成
「顧客管理→会社→会社を追加」から自社や取引予定先のデータを入力します。複数拠点ある場合はロケーションも登録しておきます。
- 3
テストカタログを作成
「商品管理→カタログ→カタログを作成」で全商品に「30%オフ」のような単純掛け率を設定します。最初は複雑な設定にしないのがコツです。
- 4
支払い条件を Net 30 で設定
企業プロファイルの「支払い条件」から Net 30(30日後払い)を設定します。初回はこれで十分です。日本の商習慣(月末締め翌月末払い)にも概ね対応できます。
- 5
テスト注文で全フローを検証
企業プロファイルのバイヤーアカウントでログインし、注文 → 請求書発行 → 入金記録の流れを通しで確認します。ここでつまずくポイントを潰しておくと、本番で慌てずに済みます。
出典:Shopify公式ヘルプ — B2B on Shopify、Shopify Winter '26 Edition B2B Roundup
KPI設計:B2Bチャネルで何を計測すべきか
B2Bは取引単価が大きく頻度が低いため、B2CのKPI(CVR、AOV)をそのまま使うと判断を誤ります。 取引先LTV・支払い遵守率・リピート発注率 の3つを中心に設計しましょう。
計測はShopify管理画面の「アナリティクス→カスタムレポート」で「顧客タイプ=B2B」のセグメントを作成して追います。Shopify Plusならフローオートメーションで支払い遅延アラートも自動化できます。
注意点:1ストア両立運用で必ず詰まる4つのポイント
データだけでは見えてこない実務の落とし穴です。事前に設計しておくと、後からの修復コストが大きく下がります。
1. 在庫の取り合い問題:B2B大口注文がB2C在庫を一気に枯渇させる事故が起きやすいです。ロケーションを「B2C用倉庫」「B2B用倉庫」で分けるか、安全在庫アラートを商品ごとに設定しましょう。
2. 配送料の二重設計:B2Bは数量・重量が大きく、B2Cの配送設定では赤字になります。配送プロファイルをB2B/B2Cで完全に分けてください。
3. 利益率の逆算漏れ:「定価の50%で卸す」と決めても、原価率30%・物流費10%・決済手数料3%を引くと粗利は7%しか残りません。Shopifyの「商品コスト」に原価を入力し、Polarisアナリティクスで利益率を可視化しましょう。
4. テーマのB2B非対応:無料テーマの一部はB2B価格表示が崩れます。Dawn・Empire など B2B 対応を明記したテーマを使ってください。
まとめ:最初の1社から始める
B2B EC市場の拡大トレンドと、Shopifyのプラン開放は、卸売チャネルを試す絶好のタイミングを作っています。「展示会で名刺を交換した1社」「インスタDMで卸売の問い合わせをくれた1社」を企業プロファイルとして登録するところから始めれば、3ヶ月で初回発注、6ヶ月で5社の取引先が見えてきます。
卸売販売は、D2Cブランドにとって売上の柱をもうひとつ増やす有力な選択肢です。「別システムを契約するほどじゃないけど、法人注文には対応したい」という段階なら、ShopifyのB2B機能はちょうどいい温度感の選択肢だと思います。

この記事を読んだ方におすすめ
Shopify予約アプリ
まるっと予約
ストアに予約機能を追加。日時・デポジット・キャンセルに対応。
💡 無料プランあり(月5件まで)
他のまるっとシリーズもチェック
Shopifyストア構築もお任せください
「自分でShopifyを設定するのは不安」という方に、アプリ開発者本人がShopifyストア構築+まるっと予約の導入をまるごとサポートいたします。










