ShopifyのB2B機能で卸売販売を始める方法 — 設定から運用まで
D2Cブランドとして自社ECで売上を伸ばしてきたけれど、「卸売にも販路を広げたい」と考えたことはないでしょうか。
セレクトショップや量販店から「お取り扱いしたい」と声がかかった。あるいは、法人のまとめ買い注文が増えてきた。そんなタイミングで浮かぶのが「卸売の仕組みをどうやって作るか」という問題です。
実はShopifyには、 B2B専用の機能 がネイティブで搭載されています。以前はShopify Plusだけの特権でしたが、2024年末からBasic・Grow・Advancedプランにも段階的に開放され、より多くのマーチャントが使えるようになりました。
出典:Mordor Intelligence B2B E-Commerce Market Report、Digital Commerce 360
この記事では、ShopifyのB2B機能の全体像から、企業プロファイルやカタログの設定手順、卸売価格の作り方、おすすめアプリまで、卸売販売を始めるために必要なことをひと通り解説します。
ShopifyのB2B機能とは
- B2B on Shopify
Shopifyの管理画面に組み込まれたB2B(企業間取引)機能の総称です。企業プロファイルの管理、取引先別の価格リスト(カタログ)、支払い条件の設定、数量ルールなど、卸売取引に必要な仕組みが一元管理できます。詳しくは Shopify公式ヘルプ(B2B) を参照してください。
もともとShopifyはD2C(消費者向け直販)に強いプラットフォームですが、B2B機能の追加により、 1つのストアでB2CとB2Bを同時運用 できるようになりました。
わたし自身、ECの運営支援に携わるなかで「卸売専用のシステムを別に契約するのはコストが重い」という声をよく聞きます。Shopify内でB2Bが完結するなら、管理の手間もコストもぐっと減らせます。
プラン別のB2B機能対応状況
B2B機能はプランによって使える範囲が異なります。ここを把握しておかないと、「設定しようとしたらプランが足りなかった」ということになりかねません。
多くの中小ブランドにとっては、Basic〜Advancedプランの機能で十分に卸売を始められます。取引先が増えて運用が複雑になってきた段階でPlusを検討する、というステップアップが現実的です。
B2B機能の設定方法
ここからは、Shopify管理画面でB2B機能を設定する手順を解説します。大きく分けて「企業プロファイルの作成」「カタログ(価格リスト)の設定」「支払い条件の設定」の3ステップです。
ステップ1:企業プロファイルを作成する
- 1
管理画面の「顧客管理」→「会社」を開く
Shopify管理画面の左メニューから「顧客管理」をクリックし、「会社」タブを選択します。ここがB2B取引先の管理画面になります。
- 2
「会社を追加」をクリック
右上の「会社を追加」ボタンを押します。会社名、主な連絡先(メールアドレス)、配送先住所を入力します。
- 3
企業ロケーションを設定する
1つの企業に複数の拠点(本社・支店・倉庫など)がある場合、ロケーションごとに住所と配送条件を設定できます。ロケーション単位でカタログや支払い条件を紐付けられるのがポイントです。
- 4
購入者(バイヤー)を追加する
企業に紐づく担当者のアカウントを作成します。1つの企業に複数の購入者を登録でき、それぞれに発注権限を設定できます。
2026年のWinter Editionから、Shopifyの AIアシスタント「Sidekick」 を使って自然言語で企業プロファイルを作成できるようになりました。「株式会社〇〇を追加して、支払い条件はNet 30で」と入力するだけで、必要なフィールドが自動入力されます。
ステップ2:カタログ(価格リスト)を作成する
企業プロファイルができたら、次はその取引先に見せる商品と価格を決めるカタログを作成します。
- 1
「商品管理」→「カタログ」を開く
管理画面の左メニューから「商品管理」を開き、「カタログ」を選択します。
- 2
「カタログを作成」をクリック
カタログ名を入力し、対象とする商品を選択します。全商品を含めることも、特定のコレクションだけを含めることもできます。
- 3
価格調整を設定する
「すべての商品に対して一律の割引率を適用」または「商品・バリエーションごとに個別の価格を設定」のいずれかを選びます。たとえば「A社には全商品20%オフ」「B社には特定カテゴリだけ30%オフ」といった設定が可能です。
- 4
カタログを企業に割り当てる
作成したカタログを先ほど登録した企業プロファイル(またはロケーション)に紐付けます。1つの企業に最大25個のカタログを割り当てられます。
卸売価格の設定方法
卸売価格の設定には、いくつかの考え方があります。ビジネスの規模や取引先との関係性に応じて使い分けましょう。
卸売価格を設定するときは、 利益率の逆算 を必ず行いましょう。小売価格の50%で卸す場合、原価率が30%だとしても物流費・手数料を含めると利益が想像以上に薄くなることがあります。Shopifyの「商品管理」画面で「コストあたりの金額」を入力しておくと、利益率の可視化に役立ちます。
数量ルールの設定
B2B取引では「最低10個から注文可能」「ケース単位(12個ずつ)で注文」といった数量ルールが一般的です。Shopifyのカタログ設定で以下のルールを商品ごとに設定できます。
- 最小注文数量(例:10個以上から注文可能)
- 最大注文数量(例:1回の注文で100個まで)
- 増分単位(例:6個単位でのみ注文可能)
- ケース単位でのパック販売
B2B向け決済・支払い条件
卸売取引で避けて通れないのが支払い条件です。個人向けのECなら即時決済が当たり前ですが、法人取引では「月末締め・翌月払い」のような掛け売りが一般的です。
Shopifyで設定できる支払い条件
| 支払い条件 | 内容 | 対象プラン |
|---|---|---|
| ネットターム(掛け売り) | Net 30(30日後払い)、Net 60(60日後払い)など。企業プロファイル単位で取引先ごとに条件を変えられます。設定は「顧客管理 → 会社 → 対象企業 → 支払い条件」から。詳しくは Shopify公式ヘルプ を参照 | 全プラン |
| デポジット(前金) | 注文時に一定割合の前金を受け取り、残額を後日請求。高額取引や新規取引先へのリスクヘッジに | Shopify Plus限定 |
| 即時決済 | チェックアウト時にクレジットカードなどで即時決済。取引額が小さい法人や初回取引時に | 全プラン |
日本の商習慣では「月末締め・翌月末払い」が主流です。これはShopifyのネットターム設定で Net 30〜Net 60 を設定すれば概ね対応可能です。ただし、請求書の発行タイミングや消費税の端数処理など、細かな商慣行への対応が必要な場合は、後述のB2Bアプリや請求書管理サービスとの連携も検討しましょう。
Winter '26 Editionの新機能
2026年のアップデートで、B2B決済周りにもいくつかの便利な機能が追加されました。
- 01
ACH決済(米国向け)
B2B顧客が米国の銀行口座から直接支払い可能に。自動マッチングと決済機能を搭載。
- 02
出荷ごとの支払いリクエスト
複数回に分けて出荷される注文について、出荷ごとに個別の請求を生成できるように。
- 03
動的な支払い条件
注文金額や取引先のランクに応じて、支払い期間を自動で変える仕組み。高額注文にはより長い支払い猶予を自動適用するといった柔軟な設定が可能に。
出典:Shopify Winter '26 Edition B2B Roundup
B2B向けおすすめアプリ
ShopifyのネイティブB2B機能だけでは足りない場合や、Plusプラン以外で高度なB2B機能を使いたい場合は、アプリで拡張するのが定番の方法です。
顧客タグを活用して特定の取引先にのみ卸売価格を適用するアプリ。Shopify Plusなしでも掛け率による価格設定や数量割引が設定できます。シンプルな卸売運用に向いています。
B2B専用ログインページの作成、顧客ごとの個別価格設定、請求書払い対応など、幅広い機能を備えたオールインワンアプリ。取引先が多い場合や、顧客ごとに細かく条件を変えたい場合に強みを発揮します。
最低注文額・数量の設定、専用のクイック注文フォーム、請求書払いなど、法人顧客が大量購入しやすい仕組みが整っています。BtoB運営をシンプルにすることに注力しているアプリです。
顧客タグベースで卸売価格を適用。14日間の無料トライアルがあるので、まず試してみたい方に。Plusプランへのアップグレードなしで基本的なB2B機能を実現できます。
ネイティブB2B機能とアプリのどちらを使うかは、 プランと運用規模 で判断しましょう。Basic〜Advancedプランのネイティブ機能で足りるならアプリは不要。アプリが必要なのは「ネイティブ機能にない特定の要件がある」「Plusの月額コストよりアプリ費用のほうが安い」といったケースです。
B2CとB2Bを1ストアで運用するコツ
ShopifyのB2B機能の大きな強みは、 既存のB2Cストアにそのまま卸売機能を追加できる ことです。別のプラットフォームを契約する必要はありません。ただし、運用上いくつか押さえておきたいポイントがあります。
両立運用のチェックリスト
- B2B顧客には企業プロファイル経由でログインしてもらい、一般顧客と分離する
- カタログでB2B顧客に表示する商品と価格を制御する
- 在庫が共通の場合、B2B大口注文で在庫切れにならないようアラートを設定する
- 配送料はB2BとB2Cで異なる場合が多いので、配送プロファイルを分ける
- B2B注文は管理画面の「注文管理」でフィルタリングして管理する
- 請求書・納品書のテンプレートをB2B用にカスタマイズする
ERP・基幹システムとの連携
取引先が増えてくると、受注・在庫・請求を手作業で管理するのは現実的ではありません。Shopifyは2026年のアップデートでERP連携を強化しており、Fulfil、Patchworks、OmnifiCXなどとの双方向データ同期が可能になっています。
また、EDI(電子データ交換)にも対応し、SPS CommerceやCrstlを通じてEDI発注書をShopifyのドラフト注文として直接取り込むことができます。大手小売チェーンとの取引がある場合、この機能は大きな助けになるはずです。
まとめ
- ShopifyのB2B機能は、Basic〜Plusまでのプランで段階的に利用可能。まずは小さく始められる
- 企業プロファイル → カタログ → 支払い条件の3ステップで卸売の仕組みが作れる
- 1つのストアでB2CとB2Bを同時運用でき、在庫・顧客データを一元管理できる
- ネイティブ機能で足りない場合は、Wholesale ClubやBSS B2Bなどのアプリで拡張可能
- 取引先が増えてきたらERP連携やShopify Plusへの移行を検討する
卸売販売は、D2Cブランドにとって売上の柱をもうひとつ増やす有力な選択肢です。「別システムを契約するほどじゃないけど、法人注文には対応したい」という段階なら、ShopifyのB2B機能はちょうどいい温度感の選択肢だと思います。
まずは1社、テスト的に企業プロファイルを作って、カタログを設定してみてください。意外なほど簡単に卸売の仕組みが動き出すはずです。
B2B機能はBasicプラン以上で利用可能です。Starterプランや無料トライアル中は一部の機能に制限があります。まずはBasicプランでB2B機能を試し、取引先が増えてきたら上位プランを検討するのが現実的です。
はい、できます。Basic・Grow・Advancedプランでも企業プロファイル、カタログ、支払い条件の基本機能が使えます。Plusプラン限定の機能(デポジット、カタログの直接割当、チェックアウトのフルカスタマイズなど)が不要であれば、十分に卸売を運用できます。
はい、既存ストアにそのまま追加できます。B2B機能を有効にしても、一般のB2C顧客の購入体験には影響しません。B2B顧客は企業プロファイル経由でログインするため、一般顧客とは自動的に分離されます。
Shopifyのネットターム機能でNet 30〜Net 60の掛け売りが設定可能です。請求書のフォーマットや消費税の端数処理など、より細かい日本固有の商慣行に対応するには、BSS B2B Solutionなどのアプリや、外部の請求書管理サービスとの連携を検討してください。


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