アパレルの試着予約をShopifyで受ける方法と受注会の作り方
書いた人 大島慎平(SHIN)個人開発者 / ソロプレナー
この記事には広告(PR)を含みます。
アパレルの試着予約は、 予約枠をShopifyの商品として登録し、予約アプリで日時と人数を管理する と受けられます。特別な仕組みは要りません。
やる意味がはっきりしているのは、返品の理由がサイズに偏っているからです。オンライン購入者が挙げた返品理由は「商品が破損・欠陥」に次いで 「サイズが合わなかった」が75%。試着してから買ってもらう導線は、ここに直接効きます。
出典:ECの返品対応:平均返品率とその削減方法(Shopify)
わたし(SHIN)は まるっと予約 というShopifyの予約アプリを作っている側の人間です。アパレルブランドを運営した当事者ではないので、この記事に自社の成果事例は載せていません。書いてあるのは、Shopifyと予約アプリで何がどう作れるかという仕組みの話と、公開されている統計です。
アパレルECの返品はなぜ起きる?
まず、返品がどれくらい起きているのかを数字で見ます。
出典:ECの返品対応:平均返品率とその削減方法(Shopify)
返品率20〜30%はEC全体の数字ですが、返品が最も多いカテゴリーは衣類で26%。アパレルは構造的に返品が出やすい売り方をしている ということです。
理由もはっきりしています。サイズ表記はブランドごとにばらつき、同じMでも肩幅と着丈が違う。素材の落ち感や厚みは写真では伝わらない。だから「とりあえず2サイズ買って、合わないほうを返す」が普通の行動になります。
広告でコンバージョン率を上げても、返品が増えれば返送送料・検品・再梱包・再出品の手間がそのまま粗利から引かれます。入口だけ広げると出口から漏れる ので、返品の理由そのものを潰すほうが先です。
市場が縮んでいるわけではありません。経済産業省の調査では、2024年の「衣類・服装雑貨等」のBtoC-EC市場規模は2兆7,980億円で、物販系の中でも上位のカテゴリーです。売れてはいるが、返品で削られている状態です。
アパレルの試着予約とは、何を予約する?
言葉が似ている施策が3つあるので、先に整理します。
- 試着予約
すでに販売している商品を、店舗・アトリエ・ポップアップなどで試着できる枠を、日時指定で予約してもらう仕組み。買うかどうかは試着のあとに決めてもらう。在庫はすでに手元にある前提。
目的は返品を減らすこと。 すでにオンラインで売れている定番品が対象。サイズが不安で買えなかった人に、実物を当ててから買ってもらう。1枠30分・1対1にすると接客の質が揃いやすい。
3つとも「日時を決めて来てもらう」点は同じなので、Shopify側の作り方も共通です。違うのは 在庫が先にあるか、あとで作るか だけです。
受注会そのものの回し方は 受注会をShopifyで管理する方法 に、在庫の割り当ては 受注会の在庫管理 にまとめています。
アパレルの試着予約はShopifyでどう作る?
予約枠を商品として扱うのが基本です。Shopifyは「配送しない商品」を普通に登録できるので、枠はそのまま商品になります。
- 1
試着枠を配送不要の商品として登録する
「11月2日 14:00〜14:30 試着枠」のような商品を作り、配送を要求しない設定にします。在庫数がそのまま予約可能人数になります。 - 2
サイズ×カラーをバリエーションで整理する
試着したい商品のサイズと色をバリエーションで持たせておくと、当日どれを用意すればいいかが予約時点で分かります。オプションの組み合わせがそのままバリエーションになります。 - 3
サイズ表と採寸ガイドを商品ページに置く
試着に来られない遠方の人のために、モデルの身長と着用サイズ、実寸(肩幅・身幅・着丈・袖丈)を載せます。試着予約と同じ目的を、来店なしで果たす手段です。 - 4
予約アプリで枠と通知を管理する
枠を商品として並べるだけだと、キャンセル・変更・リマインドが手作業になります。予約アプリを入れると、確認メール・前日リマインド・スタッフ割当まで自動で回ります。 - 5
試着後の購入導線を決めておく
その場で決済するのか、後日オンラインで買ってもらうのか。後者なら、試着した商品のURLをその場で送る運用にしておくと離脱が減ります。
予約枠を商品として登録するところまではShopifyの標準機能だけでできます。つまずくのはそのあと で、キャンセル待ち・枠の一括複製・前日リマインドを手作業でやると、枠が増えた時点で回らなくなります。
来店予約そのものの立ち上げ手順(枠の作り方からテスト予約、キャンセル運用まで)は Shopifyで来店予約を受け付ける方法 に手順としてまとめています。
試着予約の枠はいくらにすればいい?
無料か有料かで、来る人の質とドタキャンの起きやすさが変わります。3パターンあります。
- 01
無料予約+当日購入
いちばん始めやすい形。告知だけで枠が埋まりやすい反面、来なくても失うものがないので直前キャンセルが起きやすい。最初の1回を試すには向いています。 - 02
参加費を取り、商品代に充当する
「参加費は購入時に差し引きます」と書けば、実質無料でありながら予約に重みが出ます。来る気のない人が申し込まなくなるので、当日の手間が減ります。 - 03
デポジットを預かる
受注会向け。納品時に商品代から差し引く前提で預かります。作ってから「やっぱりやめます」が起きると損失が確定するので、受注生産ではここまでやる価値があります。
枠を有料にした場合
金額の決め方に正解はありません。判断の軸は 「1枠を1人に使う30分のコスト」 です。スタッフ1人が30分張り付くなら、その時間ぶんの人件費を下回る参加費に意味はありません。
デポジットの考え方そのものは 予約のデポジットはいくらにするか、当日キャンセルを減らす手当ては 予約のドタキャン・ノーショーを防ぐ方法 で整理しています。
受注会で在庫を持たずに売るには?
試着予約が「すでにある在庫を確実に売る」施策だとすれば、受注会は「作る前に売る」施策です。アパレルで在庫が重いと感じているなら、こちらのほうが効きます。
仕組みは単純で、サンプルを1点だけ作り、それを試着してもらって受注を取り、集まった数だけ生産します。売れ残りが構造的に発生しません。代わりに、次の3つを先に決めておく必要があります。
- 1
最低生産ロットを確認する
縫製工場には最低ロットがあります。「30着からしか受けない」なら、受注が20着で止まったときにどうするかを先に決めます。自腹で10着ぶんを持つのか、開催を取りやめて返金するのか。後者なら、その条件を受注時に明記しておきます。 - 2
サイズ展開を絞る
受注生産はサイズごとに数がばらけます。S・M・Lの3展開でも、実際の受注がMに9割寄ることは珍しくありません。展開を増やすほど、ロットに届かないサイズが出ます。 - 3
納期を実際より後ろ倒しで伝える
生地の入荷、縫製ラインの空き、検品、配送。どこか1つが遅れると全部が後ろにずれます。早く届くぶんには誰も困らないので、伝える納期には余裕を持たせます。
受注会でいちばん起きやすい事故は、受注を取ってから工場に相談すること です。ロットと納期を押さえる前に日程を告知すると、集まった受注を作れない状態になります。順番は「工場 → 日程 → 告知」です。
代金をいつ受け取るかも設計が要ります。全額前払いにすれば生産費に充てられますが、納期が長いぶん購入のハードルは上がります。デポジットだけ先に預かり、出荷時に残額という分け方もあります。判断の材料は 受注会の前払い・後払いをどう設計するか にまとめました。
受注会の当日運営そのもの(枠の作り方、当日の記録、後日の連絡)は 受注会をShopifyで管理する方法 が詳しいです。お客さまへ送る告知の文面は 受注会の案内文テンプレート に、DM・メール・LINE・ハガキ・ストーリーズの5経路ぶんをまとめています。
試着予約の当日はどう進む?
1枠30分で組む場合の、標準的な流れです。ここを決めずに当日を迎えると、1人目に時間を使いすぎて後ろが押します。
- 前日
サンプルを揃える
予約時に選ばれたサイズとカラーを、枠ごとに用意します。同じ商品の前後1サイズも一緒に出しておくと、当日その場で比べられます。 - 0〜5分
今日の目的を聞く
「何を探しているか」「いま何で困っているか」を先に聞きます。ここを飛ばすと、ただの試着で終わって提案に入れません。 - 5〜20分
試着と比較
予約された商品を着てもらい、サイズ違いを当てます。鏡の前で前後1サイズを比べてもらうと、サイズの判断が本人の中で決まります。 - 20〜27分
組み合わせを提案
手持ちの服との合わせ方を聞き、必要なら別アイテムを出します。単品で買うつもりだった人の点数が動くのはここです。 - 27〜30分
決め方を渡す
その場で決めない人には、試着した商品のURLと、選んだサイズをメモにして渡します。「あとで探す」状態にしないことが目的です。 - 翌日
フォローを送る
試着した商品と選んだサイズを添えて連絡します。試着済みという事実がそのまま、サイズ不安のない購入導線になります。
30分のうち、試着そのものに使うのは15分ほどで十分です。残りは「何を選べばいいか」を決める時間 に使います。試着だけして帰る人が多いときは、たいてい提案の時間が取れていません。
予約が入らないときは何を疑う?
枠を作ったのに埋まらない場合、原因はだいたい3つのどれかです。集客を増やす前に、順番に潰します。
告知の順番としては、既存顧客へのメールとLINE、次にSNS、広告は最後です。広告を出すなら、着地はトップページではなく予約枠のページにして、コンバージョンを「予約完了」で測ります。
試着予約の結果は何で見る?
売上だけを見ていると、続ける価値があるのか分かりません。最低限、次を記録します。
| 見る数字 | 取り方 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 来場率 | 来場人数 ÷ 予約人数 | 値付けと事前連絡 |
| 試着点数 | 1人あたりの試着アイテム数 | 提案の時間の有無 |
| その場の購入率 | 当日購入者 ÷ 来場者 | 接客とクロージング |
| 後日の購入率 | 1週間以内の購入者 ÷ 来場者 | フォローの効き |
| 試着者の返品率 | 試着して買った人の返品 ÷ その購入 | 試着予約の効果 |
来場率は値付けと前日のリマインドが効いているか、試着点数は提案に使える時間が取れているか、その場の購入率は接客とクロージングが噛み合っているか、後日の購入率はフォローが機能しているかを示します。
いちばん大事なのは最後の行です。試着予約の目的は返品を減らすことなので、 試着して買った人の返品率と、オンラインだけで買った人の返品率を分けて比べます。ここが変わっていないなら、返品の理由はサイズではなかったということになります。
来場率が低いときは枠の値付けと前日のリマインドを、購入率が低いときは接客の内容を見直します。同じ「予約が成果につながらない」でも、原因の場所がまったく違います。
試着予約を始める前に決めておくことは?
自社アトリエ、既存店舗の空き時間、カフェやシェアスペースの間借りから始めるのが安全です。ポップアップスペースを借りると、来場者が少なかった回の固定費がそのまま損失になります。出店料・歩合・決済手数料がどう積み上がるかは ポップアップストアの手数料 に計算式でまとめています。まず来場率と購入率が読めるようになってから、広い会場に移すほうが順番として無理がありません。
受注生産は在庫リスクが消える代わりに、納期の遅れがそのままブランドへの不信になります。生地の手配と縫製ラインを押さえてから受注を開始し、案内する納期は実際の見込みより後ろ倒しで伝えます。早く届くぶんには問題になりません。
ばらつきます。試着予約は1対1なので、担当者の提案力がそのまま結果に出ます。サイズ提案・素材説明・コーディネート提案の3つを事前に書き出しておくと、誰が入っても最低ラインが揃います。
目的によります。単価を上げたいなら、購入回数や累計購入額でセグメントを切って既存顧客だけに絞るほうが機能します。新規獲得が目的なら別のイベントとして分け、同じ回に混ぜないほうが、どちらの結果も読みやすくなります。
常設店舗向けのツールは、席管理や営業時間の概念が前提になっていて、単発イベントには合わないことがあります。逆に美容・サロン特化のサービスはアパレルを想定していません。単発の枠を必要な日だけ立てられるか を基準に見てください。Shopify向けの予約アプリの比較は Shopify予約システムの比較 にまとめています。
返品を減らす手当ては試着予約だけ?
試着予約は返品理由のうちサイズを潰す手段です。ほかの理由には別の手当てが要ります。
| 返品の理由 | 効く手当て |
|---|---|
| サイズが合わない | 試着予約、実寸の掲載、モデルの着用サイズ表記 |
| 説明と違う | 素材の質感が分かる写真、着用動画 |
| 気に入らない | レビューの掲載、コーディネート例 |
| 複数サイズを注文 | 交換の導線を返品より簡単にする |
なお、通信販売では返品の条件を広告に表示していない場合、法律上の扱いが変わります。返品特約をどう書くかは 特定商取引法ガイド の通信販売の項を確認してください。
一度に全部やろうとする必要はありません。最初に着手するものは、いま何に困っているかで決まります。返品が多いなら試着予約から、在庫が重いなら受注会から、既存顧客の単価が伸びないならお披露目会から。3つを並行して回すのは、1つ目の数字が読めるようになってからで間に合います。
会場を借りる前に、まずは自社のアトリエや店舗の空き時間で1回開いてみるのがいちばん安く済みます。来場率と購入率、そして試着した人の返品率。この3つが取れた時点で、続ける価値があるかどうかは自分の数字で判断できるようになります。
よくある質問
枠を1つ2つ立てるだけなら、Shopifyの標準機能で配送不要の商品として登録すれば足ります。必要になるのは枠が増えてからで、キャンセル・変更・前日リマインド・スタッフ割当を手作業で回すのが難しくなった時点が入れどきです。
できます。自社アトリエ、シェアスペースの時間貸し、カフェの間借りでも成立します。必要なのは、試着できる場所と、サイズ違いのサンプルが手元にあることだけです。
同じ日に混ぜると当日の動線が破綻しやすいので、枠を分けることをおすすめします。試着予約は在庫のある商品、受注会は発売前のサンプルと、扱う商品が違うためです。
参加費やデポジットを事前決済にした場合、当日は差額だけを受け取る形になります。Shopifyの注文としては別々の注文になるので、どの予約とどの購入が対応するかを分かるようにしておくと、あとで集計しやすくなります。
毎週開くより、月に1〜2日にまとめるほうが枠は埋まりやすくなります。常時開いていると「いつでも行ける」ので後回しにされ、日程が限られていると予定に入れてもらえるためです。サンプルの準備や会場の確保も、日を絞ったほうが手間が少なく済みます。
試着予約の代わりになるのは実寸の情報です。肩幅・身幅・着丈・袖丈の実測値と、モデルの身長・着用サイズを載せます。試着予約で聞かれた質問をそのまま商品ページに書き足していくと、来られない人の返品も減っていきます。
まとめ
- ECの返品理由の75%は「サイズが合わなかった」。アパレルは返品が最も多いカテゴリー(26%)
- アパレルの試着予約は、枠をShopifyの配送不要な商品として登録すれば受けられる
- 試着予約は在庫がある商品、受注会は作る前の商品。目的が違うので枠を分ける
- 枠を無料にするか有料にするかで、集まる人と当日の来場率が変わる
- 会場・納期・接客・セグメントの4つは、1回目を開く前に決めておく
試着予約は、売り方を増やす施策ではありません。買う前に確かめられなかったことを、買う前に確かめてもらう ための導線です。返品が減れば、同じ売上でも手元に残る額が変わります。

この記事の執筆者
大島慎平(SHIN)個人開発者 / ソロプレナー
日本のShopifyストア向けアプリ「まるっとシリーズ」を、AIのコーディングツールと一緒に1人で企画・開発・運営しています。書籍編集者からWebエンジニアに転じて約10年。YouTubeでは、1人で事業をつくる過程を話しています。

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