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Pepinby SHIN
予約システム2026-05-022026-07-219分で読めます
まるっと予約開発者視点ソロプレナー

Shopify予約アプリ「まるっと予約」公開初月の学び — 想定外の利用から方針を見直すまで

Shopify予約アプリ「まるっと予約」公開初月の学び — 想定外の利用から方針を見直すまで
Shopifyアプリ開発者として独立したソロプレナーのイメージ

2026年3月、長く勤めたグローバル企業を辞めて独立しました。最初に世に出したプロダクトが、Shopifyの予約アプリ「まるっと予約」です。本稿は、公開から約1か月後の2026年5月2日に書いた振り返りを、当時の数字と現在の機能を分けて読めるように更新したものです。

公開初月は、想定していたメインユーザーからのインストールがなく、別の業種から利用が始まりました。サンプルは6件と小さいため市場全体の結論にはせず、LPや記事で訴求を検証するための初期仮説として扱いました。

これは一般的な市場調査ではなく、 まるっと予約の作者が公開初月に得た一次情報の記録 です。本文中のインストール数と業種構成は2026年4月時点のスナップショットであり、現在の構成を示すものではありません。

2026年7月21日時点のまるっと予約は、予約カレンダー、スタッフ・部屋・設備管理、顧客による予約確認・キャンセルに対応しています。Basicは月30件・$29.99、Standardは月100件・$49.99でデポジットとGoogleカレンダー/ICS連携、Proは無制限・$99.99で複数ロケーションとShopify Flowを利用できます。全プラン7日間無料体験です。

仮説はどこから始まったか

そもそもなぜ予約アプリを作ろうと思ったのか。きっかけは独立する1年ほど前、2024年の冬でした。

当時のわたしは、副業的にShopifyのストアをいくつか触っていて、その流れで個人サロンのオーナーさんから相談を受ける機会がありました。 「ホットペッパービューティーの掲載料と手数料がしんどい。でも自社サイト型の予約サービスは、Shopifyとは別運用になるから踏み切れない」 という声です。同じような悩みを、複数の方から聞きました。

ホットペッパービューティーの掲載料はプランやエリアで幅がありますが、業界の解説記事では月額2.5万円前後から数十万円、加えて売上の2%程度の送客手数料が継続的にかかると整理されています。

出典:ホットペッパービューティー 掲載・料金・申込(公式)サロンナレッジ「ホットペッパービューティーの掲載料金」

ここで頭に浮かんだのが「Shopify本体に予約機能をまるっと埋め込めば、物販と予約をひとつのドメインで完結できて、月額の固定費だけで回せるじゃないか」というアイデアでした。仮説の主役は、最初から最後まで 個人サロンオーナー だったわけです。

リリースして起きたこと

リリース直後の戦略変更のイメージ

2026年3月17日、まるっと予約をShopify App Storeで公開しました。リリース当日は、App Storeに自分のアプリが並んだのを確認した瞬間、自宅デスクで小さくガッツポーズしたのを覚えています。問題は、そこから先でした。

  1. 2024年冬

    仮説の種:個人サロンの相談

    Shopify副業の延長で、個人サロンオーナーから「媒体の手数料がきつい」「自社サイト型は別運用が面倒」という声を複数回聞く。これがそのまま、予約アプリの初期コンセプトになりました。

  2. 2026年3月

    独立 + リリース

    グローバル企業を辞めて独立。まるっと予約をShopify App Storeに公開しました。当時のメインターゲットは「ホットペッパービューティーの代替を探している個人サロン」一択です。

  3. 2026年4月前半

    想定外のインストール

    リリース1ヶ月で実インストール6件。 ところが内訳は飲食店4件・アパレル2件・サロン0件 でした。仮説と現実のギャップが、想像より大きかったのが正直な感想です。

  4. 2026年4月後半

    ユーザーヒアリングと再分析

    実インストールしてくれたストア運営者に話を聞いていくと、共通点が見えてきました。 既存のShopify ECに、単発のイベント予約を後付けしたい というニーズが軸でした。

  5. 2026年4月末

    戦略転換 Option B

    メインターゲットを「Shopify EC運営者の単発イベント予約」に切り替え。LP・CTA・ブログの軸を一斉に書き換えました。サロン向けはサブターゲットとして残す、ハイブリッド方針です。

想定ユーザーと実ユーザーのギャップ

数字に並べると、ここまではっきり違うのかと、自分でも驚きました。

6
リリース1ヶ月の総インストール数
0
想定メインだったサロン
4
想定外だった飲食店
2
想定外だったアパレル

数だけ見ると小さく見えるかもしれません。でもソロプレナーにとって、最初の6件は「データの粒度が見える最小単位」です。1件1件ヒアリングできる規模だからこそ、仮説と現実のずれを、抽象論ではなく具体で見ることができました。

独立前に立てた仮説

メインユーザーは 個人サロンオーナー 。媒体型予約サービスからの乗り換えニーズが軸。Shopifyへの移行をまるごと支援するUXが刺さるはず、という前提で、機能・LP・記事をすべて設計していました。

公開初月に見えた利用傾向

実ユーザーは Shopify ECを既に運営していて、単発イベントを後付けしたい飲食店とアパレル 。常設の予約システムではなく、 ポップアップ・受注会・体験イベント 用のスポット予約を必要としていました。

ここで一番面白かったのは「予約アプリ」と一括りにしていた市場の中に、 常設型と単発型 という、ぜんぜん性格の違うレイヤーが眠っていたという発見です。仮説を立てていた段階では、わたし自身その区別を意識できていませんでした。

なぜ仮説は外れたのか

仮説外れの分析イメージ

冷静に振り返ると、仮説が外れた理由は3つあったと思っています。

メリット

Shopify EC × 単発イベント予約という使い方は、初期ユーザーの相談で繰り返し現れました。競合がいないと断定せず、既存の予約サービスやShopifyアプリと比較しながら、訴求を検証する領域として扱いました。

デメリット

個人サロンの新規集客は、いまだに媒体経由が大半です。乗り換えは「媒体をやめる」決断とほぼ同義で、決断のハードルが高い。アプリの良し悪し以前に、業界構造そのものがブロッカーになっていました。

Shopifyは物販に強いプラットフォームで、予約だけのために導入する個人サロンは、現時点ではかなり限定的です。母集団の小ささを、わたしは過小評価していました。

媒体型予約サービスの本質は「予約システム」ではなく「集客チャネル」です。それに対して、わたしのアプリは仕組みしか提供していない。 集客は自分で持っているShopify EC運営者 にこそ、価値がフィットする構造だったわけです。

3つ目の理由が腹落ちしたのは、4月中旬にあるアパレルブランドの店主さんから「受注会の予約をShopifyのドメインで受け付けたかった」と言われた瞬間でした。集客はインスタとメルマガで完結している。足りないのは、Shopifyの会員と紐づいた予約フォームだけ。 わたしのアプリは、そういう人のために作られていた のです、結果的に。

追加検証する利用シーンの輪郭

ヒアリングを続けるうちに、Shopify EC × 単発イベント予約の市場が、思ったよりはっきり形を持っていることが見えてきました。

アパレル受注会・展示会

期間限定で受注予約と試着予約をまとめたい。Shopifyの顧客と紐づけて、購入履歴のあるVIP優先枠を作りたい。

飲食店のイベント営業

通常営業はウォークイン中心、月1回のシェフズテーブルやワイン会だけ予約制にしたい。普段はShopifyでお取り寄せを売っている店も多い。

D2Cブランドのポップアップ

実店舗を持たないブランドが、期間限定スペースで体験会を開く。Shopifyの会員リストへ告知し、予約の枠を絞ってブランド体験を濃くする使い方。

ワークショップ・体験

陶芸・アロマ・写真など、商品とセットで体験を売る形態。1回ごとの参加費をShopifyで決済し、予約枠で人数を管理する。

顧客限定の指名予約

既存ECの優良顧客向けに、指名スタッフとの個別相談予約を提供。タグで会員ランクを絞れば、招待制の予約も成立します。

共通しているのは、 集客チャネルは自前で持っていて、決済と顧客データはすでにShopifyに集約されている という点です。彼らが欲しいのは「集客プラットフォーム」ではなく「Shopifyに馴染む形で、単発イベントの予約だけ受け付けてくれる仕組み」だった。

ここで、常設サロンだけでなく 既存Shopify EC運営者の単発イベント を独立した利用シーンとして検証する価値があると判断しました。市場規模や競合状況は初月の6件だけでは分からないため、LP・記事・ヒアリングで反応を追う方針です。

戦略転換 Option B:ハイブリッド方針

戦略転換のイメージ

4月末、わたしは方針を Option B(ハイブリッド)に切り替えました。サロン向けを完全に捨てるのではなく、 メインを「Shopify EC + 単発イベント」、サブを「個人サロン」 として並べ直す形です。

Option B(ハイブリッド方針)でやり直したこと:

  • LPのファーストビューを「サロン予約」から「Shopify EC × 単発イベント予約」に書き換え
  • CTAコピーを「ホットペッパー代替」から「受注会・体験イベントの予約フォーム」へ
  • ブログの新規記事をアパレル受注会・飲食店イベント・指名予約の方向にシフト
  • サロン向けの記事は残しつつ、サブターゲット扱いに位置づけを変更
  • App Storeの説明文も、単発イベント文脈の言葉を中心に書き直し

正直、3月にリリースしたばかりのプロダクトの軸を1ヶ月で書き換えるのは、しんどい判断でした。LP・記事・CTAをすべて書き直すのは、丸2日くらいの作業量があります。それでも切り替えたのは、 データが「向こうに鉱脈がある」と言っているのに、最初の仮説に固執するほうが危険 だと感じたからです。

「予約アプリって、サロン向けばかりで、うちみたいに月1回の受注会だけやりたい店にちょうど合うのが、なかなか無いんですよね。」

ヒアリングしたアパレルブランドの店主さんから

この言葉を聞いた瞬間、自分の解像度が一段上がった感覚がありました。 「既存の選択肢でどこが合わないか」 を具体的に聞ければ、必要な機能と訴求を切り分けられます。競合の有無を決めつけるより、利用者の不便をひとつずつ検証する方が次の判断につながりました。

公開初月で学んだこと

独立後の学びのイメージ

公開初月の仮説外れを通じて、わたしのなかに残った気づきを3つだけ書きます。

仮説に恋せず、データに耳を澄ます

独立前にいちばん時間をかけて練ったのが、メインターゲットの仮説でした。だからこそ、外れたときに認めるのが一番つらい。それでも、 仮説は実際の利用データで更新する 。これは公開初月で、いちばん体に染みた感覚です。

想定外を「失敗」ではなく「データ」と見る

サロンに刺さらなかった、と聞くと失敗のように響きます。でもインストールしてくれた飲食店とアパレルの存在は、別のドアを示してくれていました。 想定外を排除せず、観察対象として扱えたかどうかが、その後の戦略転換の早さを決めた と思います。

1ヶ月で軸を書き換えられる軽さは、ソロの最大の武器

会社員時代だったら、メインターゲットの再定義は半年プロジェクトです。ソロなら、データを見て腹落ちしたら、その週末にLPを書き換えられる。 意思決定から実装までの距離の短さ は、競合と戦う上で本当に大きい資産でした。

当時は長期データがありませんでした。 6件のインストールから訴求を見直した話 は確定的な市場判断ではなく、次の検証を早く始めるための意思決定です。現在の数字と混同しないよう、公開初月のスナップショットとして残しています。

よくある質問

わたしも最初はそう思いました。ただ、6件中6件にヒアリングできる規模だからこそ、共通項をはっきり言語化できたという面もあります。サロン0件・飲食/アパレル6件という偏りは、サンプルサイズより構造的なシグナルとして読み取れる、と判断しました。データが揃うのを待っていたら、半年は動けません。

いいえ。サブターゲットとして残しています。サロン向け記事も継続して書いていますし、Shopifyを既に使っているサロンには引き続きフィットすると思っています。メインの軸を「Shopify EC × 単発イベント」に置いた上で、サロン向けは「Shopifyを使っているなら最適」という位置づけに変えた、というのが正確です。

公開初月のデータだけでは市場規模を判断できません。検索需要、インストール後の継続、予約件数、解約理由を追い、単発イベントという利用シーンが継続的な課題かを検証します。

明確な閾値はありませんでしたが、 ヒアリングで同じ言葉が3回出たとき に動きました。「受注会の予約をShopifyのドメインで受け付けたい」という発言を、別々のブランドから3回聞いた時点で、これは個別の声ではなく構造だ、と判断しました。

ほぼそのまま流用できました。スタッフ指名予約はアパレルのスタイリスト指名にそのまま転用できますし、複数枠管理は飲食店のイベント席管理にも使えます。常設と単発の違いは、機能の差というより「使い方の文脈」の差だった、というのも大きな発見でした。

仮説を立てるのは大事だけれど、 リリースしてからの最初の10件のユーザーが「誰だったか」を、仮説より優先して見る ことだと思います。仮説どおりの人が来なかった時、それを失敗と呼ぶか、新しい仮説の入り口と呼ぶかで、その後の半年が変わります。

使えます。Shopifyを既に使っているサロンには、いまでも普通におすすめできます。ただ、ホットペッパービューティーから乗り換えたい個人サロンには、Shopify自体の導入コストもあるので、慎重に検討したほうがいい、というのが現時点の正直な感想です。

まとめ

  • 独立前に立てた「個人サロン向け予約アプリ」という仮説は、リリース1ヶ月で インストール0件 という形で外れた
  • 代わりに見えたのは Shopify EC × 単発イベント予約 という、追加検証する価値のある利用シーン
  • 4月末に Option B(ハイブリッド方針)へ転換し、LP・CTA・ブログの軸を一斉に書き換えた
  • 公開初月の学びは、 仮説に固執せず、想定外をデータとして扱い、次の検証へ反映する こと
  • 6件という小さなサンプルでも、ヒアリングで同じ言葉が3回出たら、それは個別の声ではなく構造のシグナルとして読む

仮説が外れたとき、最初に湧いてくるのは「どこで間違えたのか」という後悔です。ただ、外れた仮説のおかげで、自分ひとりでは思いつかなかった利用シーンに気づけました。最初の6件は結論ではなく、次の検証へ進むための入口でした。

まるっと予約は、アパレル受注会・飲食イベント・D2Cポップアップに加え、サロン、教室、レンタルなど時間枠・定員・担当者を扱う予約へ対応しています。利用シーンを決め打ちせず、予約データと問い合わせをもとに改善を続けます。

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初期ユーザーの数字と業種構成は2026年4月時点の履歴です。製品機能・料金は2026年7月21日時点のShopify App Store掲載内容へ更新しています。

この記事は、時間予約・来店予約・イベント予約に対応するShopify予約システム「まるっと予約」の開発元であるPepinが執筆しています。

まるっと予約開発者視点ソロプレナー単発イベント予約アパレル受注会
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この記事の執筆者

SHIN

Pepin代表、Webエンジニアとして10年以上の経歴を持ち、
Shopifyアプリ・ストア開発 / webサービス開発 / メディア運営などマルチに活動。

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