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デポジット前払い消費者契約法

予約のデポジットはいくら?金額を損失から決める手順

予約のデポジットはいくら?金額を損失から決める手順
予約時に前払い(デポジット)を受け取るイメージ

予約のデポジットをいくらにするか。答えを先に言うと、相場ではなく、 その枠が埋まらなかったときに自分がいくら失うか から決めます。「料金の30〜50%が一般的」という説明をよく見かけますが、この数字に法令上の根拠はありません。

わたしは Shopify の予約アプリ「まるっと予約」を作っています。この記事の守備範囲は デポジットの金額の決め方 です。ポリシーの文面そのものは キャンセルポリシーの作り方 に、無断キャンセルを減らす打ち手全般は 無断キャンセル対策5つ にまとめてあります。

この記事で扱わないこと

個別の金額が適法かどうかは、契約の内容と実際に生じた損害によって変わります。わたしは弁護士ではありません。条文と公式ドキュメントの読み方までをまとめたもので、法的助言ではありません。最終的な判断は、必ず弁護士などの専門家に確認してください。

予約のデポジットはいくらが相場?その相場に根拠はありません

結論:相場は書けません。 キャンセル料や違約金の上限は、業界の慣習ではなく、自店に生じる「平均的な損害の額」で決まるからです。よそのお店の50%を写しても、その数字を支えているのはよそのお店の原価です。

消費者契約法9条1項1号は、解除に伴う損害賠償額や違約金を定める条項のうち、「当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」を超える部分を無効としています。無効になるのは超えた部分だけで、条項が丸ごと消えるわけではありません。

消費者契約法 第9条第1項第1号(抜粋)

当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの(当該超える部分について無効)

出典:消費者契約法(e-Gov 法令検索)

条文が「同種の消費者契約」と書いている以上、比べる相手は自店の同じような予約です。同業他社の表示でも、いちばん損の大きかった1件でもありません。さらに2023年6月1日施行の改正で加わった9条2項は、キャンセル料を請求する場面で説明を求められたら、算定根拠の概要を説明するよう努めることを求めています。努力義務ですが、裏を返せば 説明できる計算を先に持っていないと、請求の場面で詰まる ということです。

デポジットは「予約時にいくら預かるか」、キャンセル料は「解除でいくら請求するか」です。預かった分から控除する設計にするなら、控除額のほうが9条1項1号の対象になります。金額の根拠づくりは避けて通れません。

エステや語学教室は前払いの上限が決まっている?

結論:期間と金額の要件を満たすコース契約は、特定商取引法の特定継続的役務提供にあたり、中途解約時に請求できる上限が政令で金額まで決まっています。 単発の予約とは話がまったく別になります。

対象は7つの役務で、エステティックと美容医療は1か月を超えるもの、語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービスは2か月を超えるもの、いずれも契約金の総額が5万円を超えるものです。

  • エステティック:2万円
  • 美容医療:2万円
  • 語学教室:1万5000円
  • 家庭教師:2万円
  • 学習塾:1万1000円
  • パソコン教室:1万5000円
  • 結婚相手紹介サービス:3万円

出典:特定継続的役務提供(消費者庁 特定商取引法ガイド)

さらに、法定の書面を受け取った日から8日以内はクーリング・オフができ、この場合は損害賠償も違約金も請求できません。すでに受け取った頭金は返す必要があります。デポジットを「返金しません」と書いていても、この期間内の解除には効きません。

ここで効くのは「コース契約そのものを途中でやめる」場面です。10回券を買ったお客様が3回目の予約を前日にキャンセルした、という話は中途解約ではありません。そちらは消費者契約法9条の世界で、自店の平均的な損害から考えます。1対1のセッションでこの線引きをどう引くかは、カウンセリング・コーチングの予約と決済 の側で整理しています。

予約のデポジットはいくらにする?失う額から逆算する4つの手順

結論:「その枠が埋まらなかったとき、もう取り返せない支出はいくらか」を数えます。 料金の何%という発想からいったん離れると、期限を切る場所も自然に決まります。

  1. 1

    その1枠に対して動くお金を全部書き出す

    材料費、外注費、当日のスタッフ人件費、会場費、運搬費、事前に発注した消耗品。1件の予約に対していくらかかっているかを、直近の仕入伝票やシフト表から拾います。ここを推測で埋めると、あとで説明できません。

  2. 2

    いつ、その支出が取り消せなくなるかを調べる

    材料の発注をやめられる締切、スタッフのシフトを外せる締切、会場のキャンセル料が発生する日時。費用ごとに日時が違うのが普通なので、費用の横に日時を書き添えます。この日時が、のちのち返金の線を引く場所になります。

  3. 3

    空いた枠を埋め直せた割合を数える

    キャンセルを受けてから別のお客様を入れられたなら、損害はその分小さくなります。直近8〜12週の「キャンセル件数」と「そのうち埋め直せた件数」を数えれば、割合が出ます。ここを数えていない状態で全額前払いにすると、根拠のない金額になります。

  4. 4

    回避できない支出に、埋め直せない確率を掛ける

    手順1と2で出た「その時点で回避できない支出」に、手順3の裏返し(埋め直せなかった割合)を掛けます。出てきた金額が、1件あたりの見込み損失です。デポジットは、この金額を上限の目安にして置きます。

計算例:予約のデポジットをいくらに置くか

以下の数字は、計算の流れを見せるための仮置きです。相場でも実例でもありません。自店の伝票から拾った数字に置き換えてください。

料金12,000円・所要2時間の枠で、当日キャンセルが起きた場合を考えます。

  1. 01

    回避できない材料費 2,000円

    予約が入った時点で発注し、前日18時を過ぎると取り消せない分。
  2. 02

    回避できない人件費 3,000円

    前々日にシフトを確定しているため、当日キャンセルでも支払う分。
  3. 03

    埋め直せた割合 25%

    直近12週の当日キャンセル8件のうち、別の予約で埋まったのが2件。

回避できない支出は 2,000 + 3,000 = 5,000円。このうち4件に1件は埋め直せているので、1件あたりの見込み損失は 5,000 × 0.75 = 3,750円です。デポジットはこの3,750円を目安に、説明しやすい3,500円や4,000円へ丸めて置きます。

5,000円
回避できない支出
材料2,000円+人件費3,000円(仮の数字)
25%
埋め直せた割合
直近12週で8件中2件(仮の数字)
3,750円
1件あたり見込み損失
5,000円 × 0.75 の結果(仮の数字)

結果として料金12,000円の約31%になりましたが、 31%という数字そのものに意味はありません。 意味があるのは「5,000円」と「25%」のほうです。原価構成が違えば同じ手順から10%も80%も出ますし、そのどちらも説明できます。

金額を先に決めて根拠をあとから探すと、必ず説明が苦しくなります。順番を逆にするだけで、書ける文面が変わります。

金額を決める前にそろえる数字

  • 1枠あたりの回避できない支出材料・人件費・会場費を、伝票とシフト表から実額で拾う
  • 費用が確定する日時日付ではなく時刻まで。返金の線をここに合わせる
  • 埋め直せた件数と埋まらなかった件数直近8〜12週。率だけでなく件数で持つ
  • 返金で戻ってこない決済手数料後述。全額返金でも手数料は自店の持ち出しになる

割合と固定額、どちらで置くか

見込み損失が出たら、次はそれを割合で置くか固定額で置くかです。判断の軸は、メニューの単価がばらついているかどうかと、回避できない支出が単価に比例するかどうかの2つだけです。

材料費が単価に比例して増える業態なら、割合のほうが説明が一貫します。逆に、単価が2,000円のメニューと20,000円のメニューが並んでいて、どちらも押さえる時間と人手が同じなら、固定額のほうが実態に近くなります。先ほどの計算例は「時間と人手が主な損失」なので、固定額向きです。

迷ったときは固定額から始めるほうが安全です。お客様に金額を伝えやすく、当日の差額計算もシンプルで、あとから割合へ切り替えても説明が破綻しません。

1つの金額で通さず、時期で分ける

消費者契約法9条1項1号は「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ」と書いています。つまり法令の側が、時期ごとに別の金額を置くことを想定しています。全期間を1つの金額で通すと、まだ何も発注していない2週間前のキャンセルにも当日と同じ額を当てることになり、平均的な損害を超えやすくなります。

区分は、手順2で書き出した「支出が取り消せなくなる日時」に合わせます。仮の数字で並べると、こうなります。

解除の時期回避できない支出保持する額
前日18時より前0円全額返金
前日18時〜前々日材料2,000円1,500円
当日材料+人件費3,750円

材料の締切が前日18時、シフトの確定が前々日なら、線を引く場所はその2点です。「3日前から50%」のようにキリのいい日数で切ると、費用が動く日時とずれて説明できなくなります。

なお、2023年6月1日施行の9条2項が求めているのは、この区分ごとの算定根拠を説明することです。上の表のような形で先に作っておけば、そのまま説明に使えます。

受注会のように「前払いか、手付金2段階か、後払いか」という順番の設計まで踏み込むなら、アパレル受注会の決済タイミング の側で扱っています。

Shopifyでデポジットはどう受け取る?3つの受け方

結論:デポジット分だけを商品として先に売る、Shopify 本体の予約注文、下書き注文の請求書。 「一部だけ先に受け取り、残りを後日」を実現する道はこの3つで、それぞれ前提条件が違います。

いちばん条件が少ないのは、手順4で出した見込み損失の額そのものを予約枠の価格に据えて、残額は来店時に受け取る形です。見込み損失が3,750円なら、予約ページで受け取るのは4,000円、残りは当日の会計で精算します。

追加のアプリも、決済プロバイダーの条件もいりません。そのかわり残額の取りこぼしは自分で管理することになるので、当日に必ず精算する導線(会計時に予約番号を確認する、など)を先に決めてから使ってください。

出典:予約注文(Shopify ヘルプセンター)

出典:下書き注文と請求書(Shopify ヘルプセンター)

どの受け方を選んでも、公開前にテスト注文を1件通して、決済からキャンセル、部分返金までを自分の目で確認してください。ポリシーに「前日18時まで無料」と書いたのに、アプリ側の受付が当日まで開いている、という食い違いはここで見つかります。

返金したら決済手数料は戻ってくる?

結論:戻りません。 Shopify ペイメントで処理した注文を返金しても、クレジットカード手数料は返金されないとヘルプセンターに明記されています。全額返金にすると、手数料の分だけ自店の持ち出しになります。

Shopify ヘルプセンターは、返金・キャンセル時の手数料の扱いを3つに分けています。

決済の経路自国でShopifyペイメント返金時の手数料
Shopify ペイメントカード手数料は戻らない
外部決済サービス使える取引手数料は戻らない
外部決済サービス使えない返金額に応じて返ってくる

出典:注文の返金(Shopify ヘルプセンター)

日本のストアは Shopify ペイメントが使える国なので、実務上は 上2行だけを想定しておけば十分 です。オンラインの標準カード料率はプランによって変わり、Basic 3.55%、Grow 3.4%、Advanced 3.25%、Plus 2.9%(いずれも2026年9月19日時点)。先ほどの計算例の3,750円を Grow プランで全額返金すると、約128円が戻ってきません。

出典:Shopify の料金プラン

返金まわりで先に知っておくこと

  • 管理画面で開始した返金は、キャンセルも取り消しもできない
  • 一部返金しても、お客様は注文の全額に対してチャージバックを申請できる
  • チャージバックに異議を申し立てるには、返金額・返金日・やり取りの証拠が要る

現金で返す代わりにストアクレジットで返す選択肢もあります。手元の現金は減りませんが、制約があります。ストアクレジットは全額しか決済に使えず(一部だけ使うことはできない)、有効期限は発行のたびに個別に設定する形です。さらに2025年5月12日以降に作成したストアでは、ストアクレジットで支払われた金額に外部サービスの取引手数料がかかります(Shopify Plus かつ Shopify ペイメント有効の場合は免除)。

出典:ストアクレジット(Shopify ヘルプセンター)

つまり、返金の線をどこに引くかは手数料とセットで決める話になります。「前日まで全額返金」を掲げるなら、その手数料は集客コストとして飲む、と先に決めておくと運用がぶれません。

決めたあとは何を見る?

結論:導入前後で、同じ曜日・同程度の枠数を4週間ずつ比べます。 予約完了率、来場率、返金件数、返金後の最終売上。率だけを見ると判断を誤ります。

前後比較

予約完了率

支払いによる離脱を確認

前後比較

来場率

無断キャンセルの変化を確認

返金後

最終売上

返金と手数料を引いた額で比較

デポジットを入れれば、予約時の支払額が増えるぶん予約数は減りえます。それでも、1件あたりの見込み損失を金額で出してあれば「件数は減ったが最終売上は上回っている」かどうかで判断できます。最終売上が下回るなら、金額を下げる、割合から説明しやすい固定額に変える、対象を高単価メニューだけに絞る、の順で調整するのが安全です。

サロンの入口と予約受付のイメージ

よくある質問

金額から入らず、数字から入ってください。1枠に対して回避できない支出(材料・人件費・会場費)を伝票とシフト表から拾い、直近8〜12週で空いた枠を埋め直せた割合を数えます。回避できない支出に「埋め直せなかった割合」を掛けた額が、1件あたりの見込み損失です。デポジットはその額を上限の目安にして、説明しやすい数字へ丸めます。全メニューに一度に入れず、無断キャンセルが実際に起きている1メニューだけで試すのが安全です。

その数字に法令上の根拠はありません。消費者契約法9条1項1号が上限としているのは、同種の契約の解除に伴い自店に生ずべき平均的な損害の額です。前日の時点で回避できない費用が売上の1割しかないなら、5割の根拠は説明できません。逆に、当日キャンセルでほぼ全額が損失になる業態なら、高い割合が説明できる場合もあります。パーセントは計算の結果であって、出発点ではありません。

1回分の予約をキャンセルする場合は同じ考え方です。契約そのものを中途解約する場合は別で、エステティック・美容医療・語学教室・家庭教師・学習塾・パソコン教室・結婚相手紹介サービスの7役務が期間と金額の要件を満たすと、特定商取引法の特定継続的役務提供にあたり、請求できる上限が政令で金額まで定められています。前払方式で5万円を超える契約を扱う場合は、財務書類を用意して閲覧に応じる義務も生じます。該当しそうなら専門家に確認してください。

戻りません。Shopify ヘルプセンターは、Shopify ペイメントで処理した注文を返金・キャンセルした場合にクレジットカード手数料は返金されないと明記しています。外部の決済ゲートウェイを使っていても、ストアのある国で Shopify ペイメントが利用できるなら取引手数料は返金されません。日本のストアはこちらに該当します。また、管理画面で開始した返金は取り消せず、一部返金をしてもお客様は全額のチャージバックを申請できます。全額返金の線を引く場所は、この手数料を飲める範囲で決めてください。

一律に禁止されているわけではありませんが、全額にする根拠は別に必要です。消費者契約法9条1項1号が見ているのは解除に伴って自店に生ずべき平均的な損害なので、空いた枠を4件に1件でも埋め直せているなら、その分だけ損害は小さくなります。埋め直せた割合を数えないまま全額前払いにすると、返金を求められたときに説明できません。実務面でも、全額を預かるほど返金時に戻ってこない決済手数料が増えます。なお、期間と金額の要件を満たすコース契約を前払方式で扱う場合は、財務書類を用意して閲覧に応じる義務(特定商取引法45条)も付いてきます。

日数で切ると、費用が動く日時とずれます。条文が「解除の事由、時期等の区分に応じ」と書いているとおり、時期ごとに別の金額を置くことは想定されています。材料の発注が前日18時に確定し、スタッフのシフトが前々日に固まるなら、線を引くのはその2点です。日付ではなく時刻まで決めて、予約ページとポリシーの両方に同じ時刻を書いてください。アプリ側の受付締切とポリシーの文面がずれていないかも、公開前に1件テストして確かめます。

まとめ:予約のデポジットはいくらにするか

  • 相場は根拠にならない。上限を決めるのは 消費者契約法9条1項1号の「平均的な損害」
  • 金額の目安は、回避できない支出 × 埋め直せなかった割合で出す 1件あたりの見込み損失
  • パーセントは計算の結果。 30%も80%も、説明できれば正しい
  • コース契約の中途解約は別枠。 特定継続的役務提供は上限が政令で決まっている
  • 全額返金の線は手数料込みで引く。返金しても 決済手数料は戻らない
金額は伝票から

材料・人件費・会場費を実額で拾います。推測で埋めると説明できません。

期限は時刻まで

費用が確定する日時に返金の線を合わせます。日数で切るとずれます。

埋め直せた件数を数える

率だけでなく件数で持ちます。分母が小さいときに見誤りません。

テスト注文を通す

決済・キャンセル・部分返金まで、公開前に自分の目で確認します。

デポジットは「お客様を縛る道具」ではなく、予約の時点で支払いと返金の条件を双方で確認する仕組みです。金額に根拠があれば、説明を求められても答えられます。

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2026年9月19日時点の情報です。法令の内容は e-Gov 法令検索と消費者庁の資料、Shopify の仕様はヘルプセンターと料金ページで確認しています。本記事は一般的な情報であり、個別のデポジットやキャンセル料が適法かどうかを判断する法律助言ではありません。

この記事は、時間予約・来店予約・イベント予約に対応するShopify予約システム「まるっと予約」の開発元であるPepinが執筆しています。

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SHIN

この記事の執筆者

SHIN

Pepin代表、Webエンジニアとして10年以上の経歴を持ち、
Shopifyアプリ・ストア開発 / webサービス開発 / メディア運営などマルチに活動。

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