キャンセルポリシーの作り方|金額の決め方と業種別の文例

キャンセルポリシーの作り方で最初に決めるのは、金額ではありません。自分の店でキャンセルが起きたときに、いくら損をするのかです。日本の法律は、キャンセル料の上限を「同じような契約が解除されたときに、その事業者に平均的に生じる損害の額」と定めています。よそのお店の「前日50%」を写しても、その数字を支えているのはよそのお店の原価であって、あなたの店の原価ではありません。
わたしは Shopify の予約アプリ「まるっと予約」を作っています。この記事の守備範囲は ポリシーの文面と、金額の決め方 です。無断キャンセルそのものを減らす打ち手は 無断キャンセル対策5つ に、前払いで受け取る仕組みは Shopifyで予約時にデポジット(前払い)を受け取る方法 にまとめてあります。
- この記事で扱わないこと
個別の契約が有効かどうかの判断は、契約の内容と実際に生じた損害によって変わります。わたしは弁護士ではありません。条文と官公庁の資料の読み方までをまとめたもので、法的助言ではありません。最終的な判断は、必ず弁護士などの専門家に確認してください。
キャンセルポリシーの作り方は?決めるのは4つだけ
結論:期限・控除額・例外・連絡先の4項目がそろえば、ポリシーとして成立します。 逆に、この4つのどれかが欠けていると、いざ請求するときに「そこは書いていない」で止まります。
長い規約を書く必要はありません。お客様が予約前に読んで、自分がいつ何をキャンセルすると何円かかるのかが分かれば十分です。
- 01
期限
いつまでなら無料か。「前日の18時まで」のように、日付ではなく時刻まで書きます。 - 02
控除額
期限を過ぎたらいくらか。区分を切るなら、区分ごとに金額または率を書きます。 - 03
例外
店都合の中止、天候、体調不良をどう扱うか。書いていないと、その場の判断になります。 - 04
連絡先
どこへ、どの手段で連絡すればいいか。電話だけにすると、営業時間外の連絡が届きません。
この4つのうち、いちばん時間がかかるのが控除額です。ここを相場でごまかすと、あとで説明を求められたときに答えられなくなります。順番に見ていきます。
キャンセル料に上限はある?消費者契約法9条が決めていること
結論:上限はあります。 消費者契約法9条1項1号は、キャンセル料や違約金のうち「同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」を超える部分を無効としています。無効になるのは超えた部分だけで、条項そのものが丸ごと消えるわけではありません。
条文を読むと、キャンセル料の設計に効いてくる言葉が3つ入っています。
- 消費者契約法 第9条第1項第1号
当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの(当該超える部分について無効)
条文から読み取れること
- 「解除の事由、時期等の区分に応じ」前日と当日で率を分けたなら、前日の率・当日の率が、それぞれの時点の損害と比べられます。ひとまとめでは判断されません。
- 「同種の消費者契約」比べる相手は、自店の同じような予約です。業界の相場でも、いちばん損の大きかった1件でもありません。
- 「当該超える部分」上限を超えても、キャンセル料がゼロになるわけではありません。超えた分だけが無効になります。
もうひとつ、2023年6月1日に施行された改正で9条2項が加わりました。キャンセル料を請求するときに、お客様から説明を求められたら、金額の算定根拠の概要を説明するよう努めなければならない、という規定です。努力義務ではありますが、裏を返せば 説明できる計算を先に用意しておかないと、請求の場面で詰まる ということです。
出典:消費者契約法(消費者庁)
「キャンセル料は一般に前日50%、当日100%が相場」という説明をよく見かけますが、この数字に法令上の根拠はありません。根拠になるのは、自分の店で実際に発生する損害だけです。
エステや語学教室は上限が法律で決まっている?
結論:一定の条件を満たすコース契約は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたり、中途解約時に請求できる上限が政令で金額まで決まっています。 対象は7つの役務で、期間と金額の要件を両方満たしたものだけです。
ここは、単発の予約と話が完全に別になります。混同したまま文面を作ると、上限を超えた条項をそのまま掲げることになります。
- エステティック(1か月を超えるもの)
- 美容医療(1か月を超えるもの)
- 語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス(いずれも2か月を超えるもの)
- 上記に加えて、契約金の総額が5万円を超えること
大事なのは、この上限が効くのは「コース契約そのものを途中でやめる」場面 だという点です。10回券を買ったお客様が3回目の予約を前日にキャンセルした、という話は中途解約ではありません。そちらは消費者契約法9条の世界で、自店の平均的な損害から考えることになります。
同じ回数券でも、契約を解約して残回数の返金を求められたときは特定商取引法の上限が効きます。回数券やコースを売っているなら、「1回分のキャンセル」と「契約の中途解約」で別の条項を用意してください。

キャンセル料の金額はどう決める?自店の損失から逆算する5つの手順
結論:「キャンセルされた時点で、もう取り返せない支出はいくらか」を数えます。 売上の何%という発想からいったん離れると、期限を切る場所も自然に決まります。
- 1
キャンセルが起きたときに動くお金を全部書き出す
材料費、外注費、当日のスタッフ人件費、会場費、送迎や運搬の費用、事前に発注した消耗品。1件の予約に対していくらかかっているかを、実際の数字で書き出します。ここは推測ではなく、直近の仕入伝票やシフト表から拾います。
- 2
いつ、その支出が取り消せなくなるかを調べる
材料の発注をやめられる締切、スタッフのシフトを外せる締切、会場のキャンセル料が発生する日時。これが「回避できなくなる時点」です。費用ごとに日時が違うのが普通なので、費用の横に日時を書き添えます。
- 3
空いた枠を売り直せるかを見る
キャンセルを受けてから、その枠に別のお客様を入れられるなら、損害はその分小さくなります。実際に埋まった件数と埋まらなかった件数を数えると、どのくらい前なら埋まるのかが見えます。
- 4
回避できなくなる時点で線を引き、区分ごとの金額を決める
「前日18時までは無料、それ以降は◯◯円」のように、手順2で出た日時に期限を合わせます。日数で切ると、仕入れの締切と1日ずれることがあります。区分ごとの金額は、その時点で回避できない費用の合計を上限の目安にします。
- 5
計算の根拠を残す
どの費用をいくらと見て、いつの締切で区切ったのか。1枚のメモで構いません。消費者契約法9条2項が求める「算定根拠の概要の説明」は、この記録があればそのまま答えられます。
利益の取りっぱぐれ分(本来得られたはずの粗利)をどこまで含められるかは、契約の性質や業種によって判断が分かれる論点です。原価の積み上げと違って自明ではないので、ここを大きく乗せたい場合は専門家に確認してください。
金額を先に決めて根拠をあとから探すと、必ず説明が苦しくなります。順番を逆にするだけで、書ける文面が変わります。
予約時にどうやって同意を取る?Shopifyでポリシーを出す場所
結論:予約商品の説明・チェックアウトの最終確認画面・予約確認メールの3か所に出します。 ネット予約は特定商取引法の通信販売にあたり、「契約の申込みの撤回又は解除に関する事項」は広告と最終確認画面の両方で表示が求められます。
特定商取引法11条は、通信販売の広告に表示すべき事項を列挙しており、その中に契約の申込みの撤回・解除に関する事項が入っています。さらに、ネット通販の申込み段階については12条の6が、最終確認画面での表示を定めています。予約商品をカートに入れて決済する Shopify のストアは、この通信販売の枠に入ります。
- 予約を検討する時
予約商品のページ
日時と料金の近くに、キャンセル期限と控除額の要点を置きます。全文はポリシーページへリンクします。折りたたみの中だけに入れると、読まずに進まれます。
- 決済の直前
チェックアウトの最終確認画面
Shopify では、設定したストアポリシーへのリンクがチェックアウトのフッターに自動で表示されます。キャンセル条件を返品ポリシーに書いておくと、この導線に乗ります。
- 予約直後
予約確認メール
期限・控除額・連絡先を本文に入れます。お客様が後から探すのはメールなので、ここにないと電話で聞かれます。
- 常時・開催前日
フッターと前日リマインド
フッターメニューにポリシーページを置き、前日のリマインドに「ここから先はキャンセル料がかかります」の一文を入れます。
Shopify 側の操作は次の通りです。
- 1
ストアポリシーにキャンセル条件を書く
Shopify管理画面設定ポリシー「返品ポリシー」や「特定商取引法に基づく表記」を編集できます。ここに入れたポリシーは、チェックアウトのフッターに自動でリンクされます。テンプレートの自動生成は英語・フランス語・イタリア語・スペイン語のみで、日本語は自分で書く必要があります。
- 2
読ませる用のページを別に作る
Shopify管理画面オンラインストアページポリシーの固定URLは
/policies/refund-policyのように決まっており、「キャンセルポリシー」専用の枠はありません。/pages/cancellation-policyのような分かりやすいページを作り、予約商品の説明から直接リンクします。 - 3
フッターメニューに追加する
Shopify管理画面コンテンツメニューフッターメニューを開き、作ったページをメニュー項目として追加します。管理画面の刷新でナビゲーションの場所が変わっているので、古い手順書を見ている場合は注意してください。
- 4
予約アプリ側の期限と通知をそろえる
ポリシーに「前日18時まで無料」と書いたのに、アプリのキャンセル受付が当日まで開いていると、文面と挙動が食い違います。テスト予約を1件入れて、お客様側の画面でいつまでキャンセルできるかを確認します。
出典:ストアポリシーを追加する(Shopify ヘルプセンター)
無断キャンセルとどう違う?キャンセル料は実際に回収できるのか
結論:連絡のあるキャンセルと、連絡のない無断キャンセルでは、回収の難しさがまったく違います。 ポリシーを書いただけでは、お金は戻ってきません。
連絡があるキャンセルなら、その場で条件を伝えて支払い方法を案内できます。難しいのは無断キャンセルのほうで、そもそも相手と連絡が取れません。請求書を送る手間と、届かないリスクと、回収できる金額を並べると、少額の請求は費用倒れになりがちです。
- 導入の手間がほぼゼロ
- お客様の心理的ハードルが上がらない
- 連絡のあるキャンセルには十分機能する
- 無断キャンセルの回収は現実的に難しい
- 請求のたびに個別対応が発生する
- 連絡が取れないと打つ手がなくなる
回収の確度を上げたいなら、事後に請求するのではなく、予約の時点で一部を受け取る形に変えるのが素直です。手順は Shopifyで予約時にデポジット(前払い)を受け取る方法 にまとめました。ただし前払いにすると予約のハードルは確実に上がるので、無断キャンセルが実際に何件あるのかを数えてから決めてください。件数の数え方と、前払い以外の打ち手は 無断キャンセル対策5つ の側で扱っています。
ポリシーは「請求できる状態を作るもの」であって、「回収を保証するもの」ではありません。ここを分けて考えると、前払いを入れるかどうかの判断がしやすくなります。
業種別キャンセルポリシーの作り方(コピーして使える文例3本)
結論:〇〇の部分を自店の数字に置き換えれば、そのまま使えます。 金額は手順で出した「回避できない費用」から決めてください。空欄のまま公開すると意味がありません。
文例1:サロン・施術(1回ごとの予約)
ご予約の変更・キャンセルは、〇〇(例:前日18時)までにご連絡ください。材料のご準備と施術枠の確保のため、それ以降は下記のキャンセル料を申し受けます。
〇〇(例:前日18時)まで:無料。それ以降から施術開始前まで:〇〇円。ご連絡のないキャンセル:〇〇円。
キャンセル料は、ご予約のためにお取りしていた材料費と、他のお客様へご案内できなくなった施術枠をもとに算出しています。内訳はご請求時にご説明いたします。
ご体調不良、公共交通機関の遅延など、やむを得ない事情があるときはご相談ください。ご連絡先:〇〇(電話番号・メールアドレス・受付時間)
文例2:教室・ワークショップ(材料や講師の手配が動く)
材料の発注と講師の手配の都合上、キャンセルのご連絡は〇〇(例:開催5日前の正午)までにお願いいたします。
〇〇(例:開催5日前の正午)まで:無料。それ以降から開催前日まで:受講料の〇%。開催当日およびご連絡のないキャンセル:受講料の〇%。
キャンセル料は、お一人分の材料費〇〇円と、〇〇(例:講師への手配料)が返金されないことをもとにしています。材料を次回へ回せた場合は、その分を差し引いてご請求します。
最少催行人数〇名に満たず当教室の判断で中止した場合は、全額を返金いたします。日程変更は〇〇までに1回まで承ります。ご連絡先:〇〇
文例3:レンタルスペース・イベント(枠と会場が動く)
ご利用日の〇〇日前までは、キャンセル料はかかりません。それ以降は、当該枠を他の方へご案内できなくなるため、下記を申し受けます。
〇〇日前まで:無料。〇〇日前から〇〇日前まで:ご利用料金の〇%。前日・当日およびご連絡のないキャンセル:ご利用料金の〇%。
キャンセル後に同じ枠へ別のご予約が入った場合は、いただいたキャンセル料のうち〇〇円を返金いたします。
暴風警報の発表、または〇〇(例:最寄り路線)の運休により来場が困難な場合は、キャンセル料をいただかず、日程振替または全額返金で対応いたします。当方の都合による中止も同様です。ご連絡先:〇〇
文例2と3に入れた「材料を次回へ回せた場合は差し引く」「同じ枠が埋まったら一部返す」は、飾りではありません。実際に損害が減ったときに減らすと書いておくことが、平均的な損害の考え方とそのままつながります。

キャンセルポリシーの作り方でよくある失敗は?
結論:多いのは「他店のコピー」「区分を切らない」「例外を書かない」の3つです。 どれも、請求する段になってから効いてきます。
もうひとつ見落としやすいのが、日程変更とキャンセルを分けていない ことです。日程変更なら枠は埋まったままなので損害は小さく、キャンセル料と同額にする理由はありません。「変更は〇〇までに1回まで無料」と書くだけで、問い合わせがかなり減ります。
よくある質問
いいえ。事前に表示していることは必要ですが、それだけで金額が正当化されるわけではありません。消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害の額を超える部分は無効です。表示と金額の根拠は別の話として、両方そろえる必要があります。
その数字に法令上の根拠はありません。前日の時点で回避できない費用が売上の2割しかないなら、5割の根拠を説明できないことになります。逆に、当日にキャンセルされてもほぼ全額が損失になる業態なら、100%に近い設計が説明できる場合もあります。自店の費用から出してください。
無断であることだけを理由に上限が外れるわけではありません。ただ、連絡がない場合は枠を売り直す余地がなく、その時点で回避できる費用もほぼないため、結果として控除額が大きくなる設計は説明しやすくなります。区分として明記し、根拠を残してください。
2023年6月1日施行の消費者契約法9条2項により、キャンセル料を請求する場面で説明を求められたときは、算定根拠の概要を説明するよう努める義務があります。努力義務ですが、説明できない金額を請求している状態はリスクです。計算メモを1枚残しておけば足ります。
1回分の予約をキャンセルする場合は同じ考え方です。契約そのものを中途解約する場合は、エステティック・語学教室など7役務で期間と金額の要件を満たすものは特定商取引法の特定継続的役務提供にあたり、請求できる上限額が政令で定められています。別の条項として用意してください。
条件を客観的に決め、予約前に表示できるなら設計は可能です。「常連さんだから」という都度の判断ではなく、購入回数や会員ランクなど誰が見ても同じ結論になる基準にしてください。運用と表示が食い違うほうが、免除そのものより問題になります。
まとめ:キャンセルポリシーの作り方チェックリスト
仕入れやシフトが確定する日時に合わせます。「3日前」では1日ずれます。
回避できない支出を数えて上限の目安にします。相場は根拠になりません。
店都合・天候・体調不良の扱いを書きます。その場の判断を減らせます。
商品ページ、チェックアウト、確認メール。どれか1つでは足りません。
- 消費者契約法9条1項1号により、平均的な損害の額を超える部分は無効になる
- 区分を切ったなら、区分ごとに損害と比べられる。前日と当日は別々に根拠が要る
- 2023年6月施行の9条2項で、請求時に算定根拠の概要を説明する努力義務が入った
- エステ・語学教室など7役務のコース契約の中途解約は、特定商取引法で上限額が決まっている
- ネット予約は通信販売なので、解除に関する事項は広告と最終確認画面に表示する
- ポリシーは請求できる状態を作るもので、回収を保証するものではない
さいごに
キャンセルポリシーは、お客様を縛るための文章ではありません。「この日を過ぎると、うちはこれだけ困ります」を先に伝えておく文章です。それが伝わっていれば、たいていのお客様は期限内に連絡をくれます。
まるっと予約 は、Shopify のストアに来店予約やイベント予約を足すための日本製アプリです。App Store のリスティング(2026年9月18日確認)では、機能一覧に「予約のキャンセル」と「決済」が挙がっています。正直に書いておくと、2026年3月公開でレビューはまだ0件、Built for Shopify も取得していません。無料プランと7日間の無料体験があるので、予約からキャンセル、返金までを一度通してから判断してください。対応プランと最新の機能は、リスティング側が一次情報です。
出典:まるっと予約|来店・イベント予約(Shopify App Store)
予約アプリそのものの選び方は Shopifyで来店予約・店舗予約を受け付ける方法 にまとめています。
→ Shopifyで予約時にデポジット(前払い)を受け取る方法
2026年9月18日時点の情報です。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。個別の契約や金額が有効かどうかの判断は、弁護士などの専門家に確認してください。
文面ができたら、テスト予約を1件入れて、期限内キャンセルと期限後キャンセルの両方を自分で試してください。書いてある条件とアプリの挙動が食い違っていると、ポリシーは機能しません。


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