Allocating Pre-order Slots for Apparel Trunk Shows: What Shopify Inventory Can and Cannot Do
書いた人 大島慎平
受注会の在庫管理は、「いま倉庫に何着あるか」を数える仕事ではありません。数えるのは 「サイズ・カラー別に、あと何着まで受け付けられるか」という受注枠 です。ところがShopifyには「受注枠」という項目がないので、在庫数のフィールドを枠として借りることになります。この借り方を決めないまま公開すると、通常販売の在庫と枠が混ざって同じ1着が二重に売れます。
この記事が扱うのは、受注会の在庫管理のうち 受注枠の割り当て方 だけです。受注会そのものの回し方は 受注会の予約管理と当日運営、前払い・後払いの設計は 受注会の決済タイミング設計、お客さまへの案内文は 受注会の案内文テンプレ、試着予約との使い分けは アパレルの試着予約をShopifyで受ける方法 にそれぞれ置いています。
Shopifyの仕様は2026年9月19日に公式ヘルプで確認したものです。管理画面は継続的に更新されるため、実際に受注会を公開する前に、必ずご自身のストアでテスト注文を1件通して挙動を確かめてください。
受注会の在庫管理は通常ECと何がちがう?
通常のECは、手元にある実物を数えて、売れたぶんだけ減らします。受注会は逆で、実物がまだ存在しない状態から売り始めます。つまり 帳簿在庫だけが先に動き、実在庫はゼロのまま という、通常の在庫管理では起こりえない状態を意図的に作ることになります。
- 受注枠(じゅちゅうわく)
受注会でサイズ・カラーごとに「何着まで注文を受け付けるか」と決めた上限のこと。実在庫の数ではなく、生地の発注量・縫製工場の最低ロット・納期内に縫える数から逆算して決めます。本生産の発注数も、発送スケジュールも、二重販売を止められるかどうかも、この枠の精度で決まります。
Shopifyは在庫をひとつの数字では持っていません。ロケーションごとに「手持ち」「販売可能」「コミット済み」「販売不可」「仕入れ」の5つの状態に分けて持っています。手持ちは、コミット済みと販売不可と販売可能を足したものです。コミット済みには、未発送の確定注文だけでなく 下書き注文で確保したぶんも含まれます 。ここが後で効いてきます。
出典:Shopify ヘルプセンター 在庫状況を理解する(2026年9月19日閲覧)
受注会では、この「手持ち0・販売可能10」という組み合わせを作ります。帳簿の上ではありえない形なので、棚卸しの対象から外す前提で置き場所を決める必要があります。先に、設計の外枠を縛ってくる数字を並べておきます。
出典:Shopify ヘルプセンター バリエーションの追加 / ロケーションの設定と管理 / 在庫追跡の設定(いずれも2026年9月19日閲覧)
サイズ・カラー別の受注枠はどう決める?
枠の上限は、売りたい数ではなく 作れる数 から決まります。上限を縛るものは3つあります。
- 01
生地から取れる数
仕入れる反数と、1着あたりの用尺で決まる上限。生地を追加で引けない場合、ここが絶対の天井になります - 02
縫製工場の最低ロットと受注上限
「1型あたり30着から」のような下限と、そのシーズンに空いている生産枠の上限 - 03
納期に収まる生産キャパ
告知した発送予定日から逆算して、縫い上がりが間に合う数
この3つのうち、いちばん小さい数が全体の枠です。サイズ・カラーへの割り振りは、そのあとの作業になります。
サイズ構成比は自店の実績から出す
サイズ配分の比率を、業界の平均値や他社の事例から借りるのはおすすめしません。ブランドごとにパターンも客層もちがうので、ほぼ当たりません。使うべきなのは自分のストアの過去の注文データです。Shopifyの注文CSVには Lineitem SKU と Lineitem quantity の列があるので、SKUの末尾にサイズを入れておけば、過去の同系アイテムのサイズ別構成比がそのまま出ます。
出典:Shopify ヘルプセンター 注文のエクスポート(2026年9月19日閲覧)
過去データがない初回は、均等割りにしておくのが無難です。大事なのは初回の配分を当てることではなく、 外したときに動かせる余地を残しておくこと です。
枠は生産可能数ぴったりではなく、少なめに置いて始めます。売れたあとに枠を減らすことはできませんが、締切前に増やすのは管理画面で数字を打ち替えるだけです。増やす方向にしか動かせない設計にしておくと、事故が「売り逃し」で済みます。
Shopifyの標準機能でどこまでできる?
受注会の在庫管理でやりたいことを並べて、標準機能で足りる線を引きます。
| やりたいこと | 標準でできるか | 使う機能・必要なもの |
|---|---|---|
| サイズ別の上限 | できる | バリエーション+在庫追跡 |
| 上限で売り止め | できる | 売り越し設定をオフ |
| 通常在庫と分ける | できる | ロケーション(上限あり) |
| 公開範囲を絞る | できる | 販売チャネルの公開設定 |
| 店頭・DM受注 | できる | 下書き注文と請求書 |
| サイズ別の集計 | 半分だけ | 注文CSV+表計算 |
| 本生産の発注 | できる | 注文書と在庫転送 |
| 手付金・後払い | できない | 予約注文アプリが必要 |
| 納期バッジ表示 | テーマ編集が必要 | テーマかアプリ |
分割決済まわりだけは標準機能から外れます。Shopifyの予約注文は、全額・一部・支払いなしを選べますが、 利用にはApp Storeの予約注文アプリが必要 で、しかもShopifyペイメントかPayPal Expressを使っているストアに限られます。
出典:Shopify ヘルプセンター 予約注文(2026年9月19日閲覧)
アプリを入れずに手動キャプチャで代用する道もありますが、オーソリの有効期間という別の制約に当たります。その比較は Shopifyで受注販売・予約販売を設定する方法 に分けて書いています。
受注枠をShopifyの在庫数で代用する限界は?
ここが受注会の在庫管理でいちばん事故が起きるところです。Shopifyの在庫数を受注枠として使うと、次の5つに必ずぶつかります。
限界1:枠と実在庫が同じフィールドを取り合う
バリエーションが持てる「販売可能」はロケーションごとに1つだけです。通常販売の在庫と受注枠を同じロケーションに置くと、通常の商品ページから受注会用の枠が売れます。分けるにはロケーションを足すしかありません。
限界2:ロケーションは無限に足せない
その分離に使うロケーションには、プランごとの上限があります。スターターは2個、BasicもGrowもAdvancedも10個、Shopify Plusで200個です。受注会のたびに新しいロケーションを作っていくと、1年ほどで上限に当たります。
対策はシンプルで、 「受注会」というロケーションを1つだけ作って使い回し、開催回ごとの区別は商品側(タグ・コレクション・商品名の接頭辞)で付ける ことです。どうしても回ごとに分けたい場合は、終わったロケーションを無効化します。無効化したロケーションは上限にカウントされません。
出典:Shopify ヘルプセンター ロケーションの設定と管理(2026年9月19日閲覧)
限界3:POSは売り越し設定に従わない
「在庫切れの場合でも販売を続ける」をオフにしておけば、オンラインストアでは枠が尽きた時点で買えなくなります。ところが この設定はShopify POSには適用されません 。販売可能がゼロ以下になっても、スタッフは警告を見たうえで販売を続けられます。店頭併用の受注会では、枠超えはシステムでは止まらないということです。止めるのは運用ルールの側になります。
出典:Shopify ヘルプセンター 在庫切れ商品の販売(2026年9月19日閲覧)
限界4:売り越しをオンにすると枠が消える
同じ設定をオンにすると、上限そのものがなくなります。受注会では原則オフです。オンにしてよいのは「上限を設けない受注会」だけで、その場合は生産可能数を超えた注文が入るリスクを引き受けることになります。
限界5:棚卸しと必ず衝突する
受注会ロケーションは「手持ち0・販売可能10」という状態になります。実地棚卸しの対象に含めると、毎回差異として上がってきます。受注会ロケーションは棚卸しの対象外だと、あらかじめ運用ルールに書いておいてください。
在庫履歴は最大180日ぶんしか表示できません。前シーズンの受注会でどのサイズをいつ何着足したかを追いたい場合、管理画面の履歴だけでは足りなくなります。枠を動かした記録は、開催回ごとに別途スプレッドシートへ残してください。
最低ロットに届かなかったサイズはどうする?
締切後、Sサイズだけ3着しか集まらず工場の最低ロットに届かない。受注会でいちばん起きやすい事態です。取れる手は3つあります。
| 選択肢 | やること | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 追加生産を待つ | 次回の受注ぶんと合算する | 納期を延ばせるとき |
| 他サイズへ振替 | 近いサイズを提案し直す | 寸法差が小さいとき |
| 中止して返金 | 全額返して生産を見送る | 生地が引けないとき |
どれを選ぶかよりも大事なのは、 売る前にどれを選ぶかを商品ページに書いておくこと です。特定商取引法は、通信販売の広告に表示すべき事項として「商品の販売数量の制限等、特別な販売条件があるときは、その内容」を挙げており、この項目は他の事項とちがって 省略が認められていません 。「最低受注数に達しない場合は生産を中止し、全額を返金します」という条件は、まさにこの特別な販売条件にあたります。商品の引渡時期も同様に、原則として表示が必要です。
出典:消費者庁 特定商取引法ガイド 通信販売(2026年9月19日閲覧)
前払いで代金を受け取ってから商品を引き渡す形になる場合は、承諾等の通知など通信販売の別の規定も関係してきます。決済タイミングの設計は 受注会の決済タイミング設計 に、表示まわりの基礎は Shopify運営者が知るべき景品表示法・個人情報保護法 にまとめています。わたしは弁護士ではないので、最終的な判断は必ず専門家に確認してください。
未達サイズを処理する手順
- 1
締切直後にサイズ別で集計する
注文をCSVでエクスポートし、
Lineitem SKU単位で数量を合計します。50件以下ならその場でダウンロードされ、51件以上だとストアオーナー宛てにメールで届きます。この差を知らないと「エクスポートが終わらない」と勘違いします。 - 2
未達サイズを確定して線を引く
工場の最低ロットと突き合わせ、どのサイズが足りないかを確定します。ここで「あと2着なら自社で引き取る」という判断も含めて決めておきます。
- 3
該当のお客さまにだけ個別に連絡する
注文に「受注会2026SS」のようなタグを付けておくと、対象の注文だけを絞り込めます。選択肢(振替・返金・待つ)を示して、返答の期限も添えます。
- 4
Shopify側の注文を実際に動かす
振替は注文の編集でバリエーションを差し替え、中止は返金を発行します。どちらも受注会ロケーションの在庫数が自動では元に戻らない場合があるので、処理後に販売可能数を目視で確認してください。
受注会の在庫管理でダブルブッキングを防ぐには?
同じ枠を二重に売ってしまう事故は、起きる経路がだいたい決まっています。
ダブルブッキングが起きる4つの経路
- 表計算とShopifyの二重管理。台帳を更新する前に次の注文が入る
- 店頭POS。売り越し設定に従わないので、枠が尽きても販売できる
- DM・メール受注の手入力待ち。口頭で確定してからShopifyに入れるまでの時間差
- 売り越し設定のオン。そもそも上限が効いていない
原則はひとつです。 枠の残数を持つ場所を1か所に決めて、入口がいくつあっても、確定は必ずその数字を減らす操作を通す 。受注会の在庫管理で守るべきルールは実質これだけです。
DM・店頭受注は下書き注文で取り込む
口頭やDMで受けた注文をあとからまとめて入力するのが、いちばん危ない運用です。Shopify標準の下書き注文を使うと、その場でお客さま名と商品を入れて保存でき、 下書きの時点で在庫がコミット済みになって販売可能から外れます 。決済は、安全なチェックアウトリンク付きの請求書をメールで送るか、受領済みなら支払い済みマークを付けるかを選べます。「代金は後で、枠だけ今すぐ押さえる」が標準機能でできるということです。
出典:Shopify ヘルプセンター 下書き注文と請求書(2026年9月19日閲覧)
ひとつ注意があります。2025年4月1日以降に作成された下書き注文は、1年間アクティビティがないと自動的に削除されます。長期の受注会で下書きのまま寝かせる場合は、この点を頭に入れておいてください。
試着予約の枠と受注枠は別物として扱う
来店試着を併用する受注会では、 「来店の枠」と「商品の受注枠」を同じものとして扱わない ことが大事です。1人の来店で3着注文することもあれば、0着のこともあります。来店日時・スタッフ・部屋の枠は予約アプリ側、サイズ別の受注枠はShopifyの在庫側、と役割を分けます。
わたしが開発している まるっと予約 もこの用途に使えますが、2026年3月公開で、レビューは3件(★5.0、2026年10月6日確認)です。3件とも、わたしがお付き合いのある事業者様にお願いして投稿していただいたもので、Built for Shopifyも未取得です。無料プランは累計10件まで、有料はStarterが月額19.99ドルからになります(App Storeのリスティングを2026年9月19日に確認)。実績重視で選ぶなら、レビュー数の多い他社アプリを比較したうえで決めてください。
受注締切から本生産の発注確定までの流れは?
枠の設計ができたら、あとは締切からの動き方を先に決めておくだけです。日付は開催規模で変わるので、順番だけ見てください。
- 公開2週間前
枠を入れてテスト購入する
受注会ロケーションに枠を入れ、自分で1件購入して販売可能が1減ることを確認します。ここを飛ばした受注会は、だいたい初日に事故ります。
- 受注開始
公開範囲を絞って走らせる
販売チャネルの公開設定で、通常のコレクションや検索結果に出ないようにします。導線は特設ページからの限定リンクだけにします。
- 締切3日前
残枠を告知する
残り枠の少ないサイズを案内します。ここで駆け込みが入るので、締切当日の在庫確認まで枠を触らないでおきます。
- 締切当日
販売を止めて下書きを処理する
商品を非公開にし、残っている下書き注文を確定か破棄のどちらかに寄せます。コミット済みのまま残すと集計がずれます。
- 締切翌日
注文CSVでサイズ別に集計する
Lineitem SKU単位で数量を合計し、生産数の素案を作ります。ここまでが在庫管理の仕事です。 - 締切2日後
未達サイズの判断と顧客連絡
最低ロットに届かないサイズを確定し、振替・返金・追加生産のどれにするかをお客さまへ連絡します。
- 締切3日後
注文書を発行して工場へ渡す
Shopify管理画面の注文書機能で、サプライヤー・数量・決済条件・費用を記録した注文書を作ります。下書きで保存しておき、工場の確認が取れてから発注済みにします。
- 入荷時
在庫転送を受領して実在庫に変える
注文書から在庫転送を作り、受け取ると仕入れ在庫が自動的に販売可能へ変わります。ここで初めて帳簿と実物が揃います。
出典:Shopify ヘルプセンター 注文書(2026年9月19日閲覧)
受注会用に作った枠を、入荷した実在庫にそのまま上書きしないでください。受注ぶんはすでに売れており、フルフィルメントを待っている状態です。入荷した実物は通常のロケーションで受け、受注会ロケーションの枠はゼロに戻して閉じるのが、いちばん混乱しない閉じ方です。
よくある質問
全額前払いで受けるなら、標準機能だけで足ります。バリエーションごとの在庫追跡で上限を設け、受注会専用ロケーションで通常在庫と分け、店頭ぶんは下書き注文で取り込む、という組み合わせです。アプリが要るのは、手付金だけ先に受ける・出荷時に決済するといった分割決済をしたい場合で、そこはShopifyの予約注文アプリの領域になります。
作り直さないほうが安全です。有効なロケーション数にはプラン上限があり、Basic・Grow・Advancedはいずれも10個です。「受注会」ロケーションを1つ用意して使い回し、開催回の区別はタグやコレクションで付けます。どうしても回ごとに分けたい場合は、終わったロケーションを無効化してください。無効化したものは上限にカウントされません。
受注会では原則オフです。オンにすると受注枠の上限が実質なくなり、生産可能数を超えた注文を止められなくなります。オンにしてよいのは、生産数に上限を設けず「集まったぶんだけ作る」と決めた受注会だけです。なお、この設定はShopify POSには適用されないため、オフにしていても店頭では販売を続けられます。
共有できますが、店頭側は自動では止まりません。オンライン注文は販売可能がゼロになった時点で購入できなくなる一方、Shopify POSは在庫がなくても警告を出したうえで販売を継続できます。店頭を併用するなら、スタッフが売る前に残枠を確認する手順を決めるか、店頭ぶんの枠をあらかじめ取り分けておいてください。
管理画面で受注会ロケーションの販売可能数を足せば、その場で再開できます。ただし生地と生産キャパの裏が取れてから足してください。枠を減らす方向は、すでに売れたぶんには効きません。だからこそ最初は少なめに置いて、増やす方向にだけ動かす運用をおすすめしています。
バリエーション単位の販売数はレポートでも見られますが、本生産の発注書に使う形にまとめるなら注文CSVのほうが確実です。Lineitem SKU と Lineitem quantity の列をピボットするだけで済みます。50件以下ならブラウザにそのままダウンロードされ、51件以上だとメールで届きます。
まとめ:受注会の在庫管理でまず決める5つ
受注会の在庫管理は、通常ECの在庫管理を流用するのではなく、受注枠という別の軸を1本立てる作業です。公開前に次の5つを決めておけば、事故のほとんどは起きません。
- 枠の上限を、生地・最低ロット・生産キャパのいちばん小さい数から決める
- 受注枠の置き場所を受注会ロケーション1つに固定し、通常在庫と混ぜない
- 売り越し設定をオフにし、POSでは効かないことを店頭スタッフに共有する
- 最低ロット未達時の扱いを、売る前に商品ページへ書いておく
- 締切から注文書発行までの日程を、受注開始前に決めておく
受注会は、ブランドとお客さまが直接つながれる数少ない売り方です。枠の設計が雑だと、いちばん楽しみにしていた人に「やっぱり作れませんでした」と伝えることになります。公開前のテスト購入1件と、未達時のルールを1行書いておくこと。効くのはだいたいこの2つです。

この記事の執筆者
大島慎平(SHIN)個人開発者 / ソロプレナー
日本のShopifyストア向けアプリ「まるっとシリーズ」を、AIのコーディングツールと一緒に1人で企画・開発・運営しています。書籍編集者からWebエンジニアに転じて約10年。YouTubeでは、1人で事業をつくる過程を話しています。

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