What Shopify Merchants Actually Wanted from a Booking App — A Solopreneur Founder Note
書いた人 大島慎平
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2026年2月末に勤めていた外資系メーカーを辞め、3月から専業で独立しました(開業は1月)。最初に世に出したプロダクトが、Shopifyの予約アプリ「まるっと予約」です。本稿は、公開から約1か月後の2026年5月2日に書いた振り返りを、当時の数字と現在の機能を分けて読めるように更新したものです。
公開初月は、想定していたメインユーザーからのインストールがなく、別の業種から利用が始まりました。件数はまだ小さいため市場全体の結論にはせず、LPや記事で訴求を検証するための初期仮説として扱いました。
これは一般的な市場調査ではなく、 まるっと予約の作者が公開初月に得た一次情報の記録 です。本文中の業種構成は2026年4月時点のスナップショットであり、現在の構成を示すものではありません。インストール数は公開していません。
まるっと予約は、予約カレンダー、スタッフ・部屋・設備管理、顧客による予約確認・キャンセルに対応しています。2026年9月19日時点のプランは Free(無料・累計10件)/Starter($19.99・月30件)/Growth($49.99・予約件数無制限)/Pro($99.99・予約件数無制限)で、有料プランには7日間の無料体験が付きます。公開からこれまでに機能もプラン構成も入れ替わっているので、この記事の数字ではなく まるっと予約のApp Storeページ の記載を確認してください。
仮説はどこから始まったか
そもそもなぜ予約アプリを作ろうと思ったのか。きっかけは独立する1年ほど前、2024年の冬でした。
当時のわたしは、副業的にShopifyのストアをいくつか触っていて、その流れで個人サロンのオーナーさんから 「ホットペッパービューティーの掲載料が高い」 という相談を受けたことがありました。
ホットペッパービューティーの掲載料はプランやエリアで幅がありますが、業界の解説記事では月額2.5万円前後から数十万円、加えて売上の2%程度の送客手数料が継続的にかかると整理されています。
出典:ホットペッパービューティー 掲載・料金・申込(公式) / サロンナレッジ「ホットペッパービューティーの掲載料金」
ここで頭に浮かんだのが「Shopify本体に予約機能をまるっと埋め込めば、物販と予約をひとつのドメインで完結できて、月額の固定費だけで回せるじゃないか」というアイデアでした。仮説の主役は、最初から最後まで 個人サロンオーナー だったわけです。
リリースして起きたこと
2026年3月17日、まるっと予約をShopify App Storeで公開しました。問題は、そこから先でした。
- 2024年冬
仮説の種:個人サロンの相談
Shopify副業の延長で、個人サロンのオーナーから「ホットペッパーの掲載料が高い」という相談を受ける。これがそのまま、予約アプリの初期コンセプトになりました。
- 2026年3月
独立 + リリース
会社を辞めて専業に。まるっと予約をShopify App Storeに公開しました。当時のメインターゲットは「ホットペッパービューティーの代替を探している個人サロン」一択です。
- 2026年4月前半
想定外のインストール
リリースから1ヶ月、 インストールしてくれたのは飲食店とアパレルだけで、想定していたサロンからは入りませんでした 。仮説と現実のギャップが、想像より大きかったのが正直な感想です。
- 2026年4月後半
使われ方の見直し
インストールしてくれた業種を並べて、どう使われうるかを考え直しました。飲食店もアパレルも、すでにShopifyでECを運営しています。 既存のShopify ECに、単発のイベント予約を足す 使い方が軸になる、と見立てました。
- 2026年4月末
戦略転換 Option B
メインターゲットを「Shopify EC運営者の単発イベント予約」に切り替え。LP・CTA・ブログの軸を一斉に書き換えました。サロン向けはサブターゲットとして残す、ハイブリッド方針です。
想定ユーザーと実ユーザーのギャップ
並べてみると、ここまではっきり違うのかと、自分でも驚きました。
数はまだ小さなものです。それでも、どの業種の店が使い始めてくれたかは、1件ずつ見ればはっきり分かります。仮説と現実のずれを、抽象論ではなく具体で見ることができました。
ここで一番面白かったのは「予約アプリ」と一括りにしていた市場の中に、 常設型と単発型 という、ぜんぜん性格の違うレイヤーが眠っていたという発見です。仮説を立てていた段階では、わたし自身その区別を意識できていませんでした。
なぜ仮説は外れたのか
冷静に振り返ると、仮説が外れた理由は3つあったと思っています。
Shopify EC × 単発イベント予約という使い方は、インストールしてくれた業種から見えてきたものです。競合がいないと断定せず、既存の予約サービスやShopifyアプリと比較しながら、訴求を検証する領域として扱いました。
個人サロンの新規集客は、いまだに媒体経由が大半です。乗り換えは「媒体をやめる」決断とほぼ同義で、決断のハードルが高い。アプリの良し悪し以前に、業界構造そのものがブロッカーになっていました。
Shopifyは物販に強いプラットフォームで、予約だけのために導入する個人サロンは、現時点ではかなり限定的です。母集団の小ささを、わたしは過小評価していました。
媒体型予約サービスの本質は「予約システム」ではなく「集客チャネル」です。それに対して、わたしのアプリは仕組みしか提供していない。 集客は自分で持っているShopify EC運営者 にこそ、価値がフィットする構造だったわけです。
3つ目の理由は、インストールしてくれた業種を見て腑に落ちました。すでにShopifyでECを運営している店は、集客の手段を自分で持っています。足りないのは、Shopifyの会員と紐づいた予約の受け付けです。 わたしのアプリは、結果的に、そういう店に合う形をしていた のだと思います。
追加検証する利用シーンの輪郭
ここからは、インストールしてくれた業種をもとに、Shopify EC × 単発イベント予約で考えられる使い方を並べます。聞いた話ではなく、わたしが立てた検証の候補です。
期間限定で受注予約と試着予約をまとめたい。Shopifyの顧客と紐づけて、購入履歴のあるVIP優先枠を作りたい。
通常営業はウォークイン中心、月1回のシェフズテーブルやワイン会だけ予約制にしたい。普段はShopifyでお取り寄せを売っている店も多い。
実店舗を持たないブランドが、期間限定スペースで体験会を開く。Shopifyの会員リストへ告知し、予約の枠を絞ってブランド体験を濃くする使い方。
陶芸・アロマ・写真など、商品とセットで体験を売る形態。1回ごとの参加費をShopifyで決済し、予約枠で人数を管理する。
既存ECの優良顧客向けに、指名スタッフとの個別相談予約を提供。タグで会員ランクを絞れば、招待制の予約も成立します。
共通しているのは、 集客チャネルは自前で持っていて、決済と顧客データはすでにShopifyに集約されている という点です。こうした店に要るのは「集客プラットフォーム」ではなく、「Shopifyに馴染む形で、単発イベントの予約だけ受け付けてくれる仕組み」だろう、と考えました。
ここで、常設サロンだけでなく 既存Shopify EC運営者の単発イベント を独立した利用シーンとして検証する価値があると判断しました。市場規模や競合状況は初月の少ないインストールだけでは分からないため、LPと記事で反応を追う方針です。
戦略転換 Option B:ハイブリッド方針
4月末、わたしは方針を Option B(ハイブリッド)に切り替えました。サロン向けを完全に捨てるのではなく、 メインを「Shopify EC + 単発イベント」、サブを「個人サロン」 として並べ直す形です。
Option B(ハイブリッド方針)でやり直したこと:
- LPのファーストビューを「サロン予約」から「Shopify EC × 単発イベント予約」に書き換え
- CTAコピーを「ホットペッパー代替」から「受注会・体験イベントの予約フォーム」へ
- ブログの新規記事をアパレル受注会・飲食店イベント・指名予約の方向にシフト
- サロン向けの記事は残しつつ、サブターゲット扱いに位置づけを変更
- App Storeの説明文も、単発イベント文脈の言葉を中心に書き直し
正直、3月にリリースしたばかりのプロダクトの軸を1ヶ月で書き換えるのは、しんどい判断でした。LP・記事・CTAをすべて書き直すのは、それなりの作業量があります。それでも切り替えたのは、 データが「向こうに鉱脈がある」と言っているのに、最初の仮説に固執するほうが危険 だと感じたからです。
競合の有無を決めつけるより、 「既存の選択肢でどこが合わないか」 をひとつずつ確かめる方が、必要な機能と訴求を切り分けやすい。書き換えた LP と記事は、その確かめのための道具だと考えています。
公開初月で学んだこと
公開初月の仮説外れを通じて、わたしのなかに残った気づきを3つだけ書きます。
仮説に恋せず、データに耳を澄ます
独立前にいちばん時間をかけて練ったのが、メインターゲットの仮説でした。だからこそ、外れたときに認めるのが一番つらい。それでも、 仮説は実際の利用データで更新する 。これは公開初月で、いちばん体に染みた感覚です。
想定外を「失敗」ではなく「データ」と見る
サロンに刺さらなかった、と聞くと失敗のように響きます。でもインストールしてくれた飲食店とアパレルの存在は、別のドアを示してくれていました。 想定外を排除せず、観察対象として扱えたかどうかが、その後の戦略転換の早さを決めた と思います。
1ヶ月で軸を書き換えられる軽さは、ソロの最大の武器
会社員時代だったら、メインターゲットの再定義は半年プロジェクトです。ソロなら、データを見て腹落ちしたら、その週末にLPを書き換えられる。 意思決定から実装までの距離の短さ は、競合と戦う上で本当に大きい資産でした。
当時は長期データがありませんでした。 初月の少ないインストールから訴求を見直した話 は確定的な市場判断ではなく、次の検証を早く始めるための意思決定です。現在の状況と混同しないよう、公開初月のスナップショットとして残しています。
よくある質問
わたしも最初はそう思いました。ただ、想定していたサロンからは入らず、飲食店とアパレルに偏っていたことは、サンプルの大きさより構造的なシグナルとして読み取れる、と判断しました。確定的な結論ではなく、次の検証を早く始めるための判断です。データが揃うのを待っていたら、半年は動けません。
いいえ。サブターゲットとして残しています。サロン向け記事も継続して書いていますし、Shopifyを既に使っているサロンには引き続きフィットすると思っています。メインの軸を「Shopify EC × 単発イベント」に置いた上で、サロン向けは「Shopifyを使っているなら最適」という位置づけに変えた、というのが正確です。
公開初月のデータだけでは市場規模を判断できません。検索需要、インストール後の継続、予約件数、解約理由を追い、単発イベントという利用シーンが継続的な課題かを検証します。
明確な閾値はありませんでした。公開から1か月たっても、インストールしてくれたのが飲食店とアパレルだけで、想定していたサロンからは入らなかった。その偏りを見て、4月末に動くことに決めました。
ほぼそのまま流用できました。スタッフ指名予約はアパレルのスタイリスト指名にそのまま転用できますし、複数枠管理は飲食店のイベント席管理にも使えます。常設と単発の違いは、機能の差というより「使い方の文脈」の差だった、というのも大きな発見でした。
仮説を立てるのは大事だけれど、 リリースしてからの最初の10件のユーザーが「誰だったか」を、仮説より優先して見る ことだと思います。仮説どおりの人が来なかった時、それを失敗と呼ぶか、新しい仮説の入り口と呼ぶかで、その後の半年が変わります。
使えます。Shopifyを既に使っているサロンには、いまでも普通におすすめできます。ただ、ホットペッパービューティーから乗り換えたい個人サロンには、Shopify自体の導入コストもあるので、慎重に検討したほうがいい、というのが現時点の正直な感想です。
まとめ
- 独立前に立てた「個人サロン向け予約アプリ」という仮説は、リリース1ヶ月で サロンからのインストールが入らない という形で外れた
- 代わりに見えたのは Shopify EC × 単発イベント予約 という、追加検証する価値のある利用シーン
- 4月末に Option B(ハイブリッド方針)へ転換し、LP・CTA・ブログの軸を一斉に書き換えた
- 公開初月の学びは、 仮説に固執せず、想定外をデータとして扱い、次の検証へ反映する こと
- 小さなサンプルでも、偏りがはっきりしていれば、確定を待たずに次の検証を始める
仮説が外れたとき、最初に湧いてくるのは「どこで間違えたのか」という後悔です。ただ、外れた仮説のおかげで、自分ひとりでは思いつかなかった利用シーンに気づけました。最初に使ってくれたストアは、結論ではなく、次の検証へ進むための入口でした。
まるっと予約は、アパレル受注会・飲食イベント・D2Cポップアップに加え、サロン、教室、レンタルなど時間枠・定員・担当者を扱う予約へ対応しています。利用シーンを決め打ちせず、予約データと問い合わせをもとに改善を続けます。
初期ユーザーの業種構成は2026年4月時点の履歴です。製品機能・料金は2026年7月21日時点のShopify App Store掲載内容へ更新しています。

この記事の執筆者
大島慎平(SHIN)個人開発者 / ソロプレナー
日本のShopifyストア向けアプリ「まるっとシリーズ」を、AIのコーディングツールと一緒に1人で企画・開発・運営しています。書籍編集者からWebエンジニアに転じて約10年。YouTubeでは、1人で事業をつくる過程を話しています。

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