整体院の回数券をオンライン販売する方法と有効期限

整体院の回数券をオンライン販売するとき、最初に決めるのは有効期限です。発行日から6か月以内に限って使えるものは、資金決済法の前払式支払手段の規制から外れます(同法第4条第2号、施行令第4条第2項)。そしてShopifyのギフトカードは、初期設定が「有効期限なし」です。ここを変えないまま売り出すと、適用除外の側から外れます。
わたし(SHIN)は、この記事で紹介しているShopify予約アプリ「まるっと予約」の開発者です。自社アプリをすすめる立場で書いているので、利益相反があります。弱点を先に書きます。まるっと予約はApp Storeのレビューが0件で、Built for Shopify認定も未取得です。回数券の残数を自動で消し込む機能もありません(いずれも2026年9月19日にApp Storeのリスティングで確認)。回数券そのものはShopify本体のギフトカード機能で作ります。なお、わたしは弁護士ではありません。この記事の法令の読み方は条文と公的資料に当たって書いていますが、最終的な判断は専門家に確認してください。
この記事の守備範囲は 整体院・マッサージ院の回数券をオンラインで売ること です。予約の受け方そのものは 個人サロンの予約管理を効率化する、施術者の指名予約は サロンの指名予約を管理する、予約時の前払いは 予約デポジットはいくらが適正か に分けています。
整体院の回数券をオンライン販売するとき、決めることは3つ
紙の回数券を「そのままネットに載せる」と考えると、だいたい3か所でつまずきます。先に結論を並べます。
この3つは順番に依存しています。期限を決めないと販売ページに書く内容が決まらず、書く内容が決まらないと商品の作り方も決まりません。上から順に見ていきます。
回数券の有効期限は、なぜ6か月なのか?
回数券は、法律上「前払式支払手段」に当たり得ます。資金決済に関する法律の第3条第1項第2号は、証票等に記録される役務の数量に応ずる対価を得て発行され、発行者等に対して当該役務の提供を請求できるものを、前払式支払手段と定めています。5回分・10回分の施術を先に売る回数券は、この定義にそのまま読み込めます。
ただし、逃げ道が条文にはっきり書かれています。
発行の日から6か月以内に限って使えるものは、章ごと適用除外です
資金決済法第4条第2号は「発行の日から政令で定める一定の期間内に限り使用できる前払式支払手段」について、前払式支払手段の章の規定を適用しないと定めています。その期間は、同法施行令第4条第2項で 六月(6か月)と定められています。
6か月を超える回数券にすると、何が起きる?
適用除外から外れます。自分の院でだけ使える回数券は「自家型前払式支払手段」なので、扱いは自家型発行者のルールに乗ります。ここで効いてくるのが基準日です。
- 毎年3月31日/9月30日
基準日に未使用残高を数える
資金決済法第3条第2項が、この2日を基準日と定めています。その時点で「まだ使われていない回数券」の残高を計算します。
- 1,000万円を初めて超えたとき
内閣総理大臣への届出
第5条第1項は、基準日未使用残高が発行開始から初めて基準額を超えたときに届出書の提出を求めています。基準額は第14条第1項の政令委任を受けて、施行令第6条で 千万円 とされています。
- 届出後
発行保証金の供託
第14条第1項は、基準日未使用残高が基準額を超えるとき、その2分の1以上の額を供託所に供託するよう求めています。
個人の整体院で、未使用の回数券が同時に1,000万円分たまることは考えにくいはずです。とはいえ「たまたま超えなければセーフ」という設計は、院が伸びたときに困ります。6か月で切っておけば、そもそもこの章の外にいられます。
回数券の有効期限をどう置くか
期限を短くすることは、お客様にとっては不利な条件です。だからこそ、販売ページに期限を目立つ形で書いてください。「6か月以内に使い切れる回数」を逆算して、10回券より5回券のほうが現実的、という結論になる院も多いはずです。同じ整理をジム向けにまとめたものが ジムの予約管理をShopifyで組む にあります。

Shopifyで整体院の回数券をオンライン販売する手順
Shopifyには回数券という商品タイプはありません。使うのは ギフトカード です。ギフトカードはすべてのShopifyプランで利用できます。
ギフトカードの有効期限は、初期設定では「無期限」です
Shopifyヘルプセンターは、一部の国でギフトカードに有効期限を設けることが法律で禁じられているため、初期状態では有効期限が設定されていないと書いています。有効期限を設定する場合、既定値は5年で、年・月・日の単位で変更できます。
つまり、何もしなければ「無期限の回数券」を売ることになります。ここが、この記事でいちばん伝えたい箇所です。
- 1
有効期限を6か月に変更する
Shopify管理画面の「設定」から「決済」へ進み、決済設定セクションの「ギフトカードの有効期限」を開きます。「ギフトカードの有効期限を設定する」を選び、値に6、単位に「月」を指定して保存します。
この設定はストア全体に効きます。回数券ごとに期限を変えることはできないので、物販用のギフトカードも同じ院で売るなら、期限が揃ってしまう点に注意してください。
- 2
回数券をギフトカード商品として登録する
商品を追加するときに「ギフトカード」として作ります。額面は事前に設定した金額から選ぶ形になり、お客様が任意の金額を入力することはできません。5回券・10回券のように、券種ごとに額面を用意します。ギフトカード商品の額面の上限は10,000米ドル相当です。
- 3
配送を外し、券面に期限を明記する
回数券は在庫も配送も持たない無形商材です。商品の説明欄には、券種・回数・1回あたりの施術時間・有効期限・払い戻しの可否を、同じ大きさの文字で並べて書きます。残数の数え方を含めた無形商材そのものの設計は Shopifyで無形商材を販売する方法 にまとめました。
- 4
購入から利用までを自分で通す
自分のメールアドレスで1件買って、届くギフトカードのメールを確認します。注文がフルフィルメントされた時点でコードが発行される仕組みなので、自動フルフィルメントを切っていると券が届きません。来院時にレジで残高が引かれるところまで通してください。
- 5
予約と結びつける
Shopify本体のギフトカードと予約アプリは別の仕組みです。まるっと予約にも回数券の自動消し込みはないので、来店時に残高から決済する運用になります。指名料を後から足す予定があるなら、既存の回数券保有者の扱いを先に決めてから公開してください。サロンの指名予約を管理する に、その順番を書いています。
出典:Shopifyヘルプセンター ギフトカードの考慮事項と概要
ギフトカードで払われた分には、手数料がかかることがあります
見落とされやすい費用があります。Shopifyヘルプセンターは、2025年5月12日以降に作成されたShopifyストアでは、ギフトカードを決済方法として含む注文について、ギフトカードで支払われた注文金額に外部サービスの取引手数料が請求されると書いています。Shopify Plusプランで Shopify ペイメントが有効な場合は免除されます。
外部サービスの取引手数料は、Shopifyの料金ページでBasicプラン2%と示されています。5回券30,000円を売って全額を消化すると、消化時に600円かかる計算です。回数券の価格を決めるときは、この分を見ておいてください。
回数券の販売ページには、何を書いてよい?
ここが整体・マッサージ特有の部分です。2025年2月18日付で厚生労働省医政局長が出した「あはき・柔整広告ガイドライン」(医政発0218第1号)が、回数券の表示に正面から触れています。
ガイドラインは、回数券を名指ししています
自費による施術を行う施術所等がウェブサイト等に掲載すべき事項として、施術の内容と通常必要とされる費用等の情報提供を挙げたうえで、回数券やプリペイドカード等を販売する場合には、その商品の内容や契約内容を利用者が正確に理解して購入できるよう表示すること、と定めています。
出典:厚生労働省 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師について
ガイドラインは、利点や長所の情報と比べて極端に小さな文字で書いたり、リンクの先のページに逃がしたりする形は控えるように、とも書いています。回数券の期限を注意書きの最下部に小さく置く作りは、ここに引っかかります。
書いてはいけない表現は、どこまで決まっている?
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律の第7条第1項は、広告してよい事項を限定列挙しています。施術者である旨と氏名・住所、業務の種類、施術所の名称・電話番号・所在地、施術日または施術時間、そして厚生労働大臣が指定する事項。同条第2項は、これらを広告する場合でも、内容が施術者の技能・施術方法・経歴にわたってはならないと定めています。
厚生労働大臣が指定する事項は平成11年厚生省告示第69号で定められていて、もみりょうじ、やいと・えつ、小児鍼、届出をした旨、医療保険療養費支給申請ができる旨、予約に基づく施術の実施、休日または夜間における施術の実施、出張による施術の実施、駐車設備に関する事項の9つです。予約を受け付けている旨はここに入っていますが、施術料金や回数券の価格は入っていません。
出典:e-Gov あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
同法第13条の8第1号は、第7条に違反した者を30万円以下の罰金に処すると定めています。
いっぽうでガイドラインは、第7条の広告に当たらないウェブサイト等についても、掲載すべき事項と掲載すべきでない事項を示しています。自費施術の費用を書くこと自体は、むしろ「料金等に関するトラブルを防止する観点」から求められている側です。広告として規制される媒体(リスティング広告や施術所紹介サイトの紹介ページなど)と、自院のウェブサイトとで、扱いが変わります。
回数券のページで使う言葉
回数券は「今だけ」「残りわずか」と相性のよい商材です。だからこそ、カウントダウンや期間限定の煽りを置きたくなります。ガイドラインは、早急な受療を過度にあおる表現と費用の過度な強調を、どちらもウェブサイト等に掲載すべきでない事項として並べています。回数券の販促だけは、その誘惑に乗らないでください。
整体院は「整体院」と名乗れますか?
名乗れます。ただし、国家資格の話とは切り分けてください。
- 医業類似行為と国家資格
あん摩・マッサージ・指圧、はり、きゅうは、同法第1条により、医師以外は各免許を受けた者でなければ業とできません。整体やカイロプラクティックはこれらの免許を前提としない行為で、ガイドラインはこうした施術を「無資格者の行為」として別項目で扱っています。
ここから、販売ページの書き方に2つ影響が出ます。
ひとつは名称です。ガイドラインは、あはき・柔整の施術所が広告してよい名称の例と、不可な名称の例を挙げています。不可の例に「カイロプラクティック、整体、リラクゼーション」といった、あはき・柔整以外の業態と紛らわしい名称が並びます。裏返すと、国家資格による施術所であるかのように見せる名乗りをしなければよい、ということです。「マッサージ」という語を免許なしで掲げることは、同法第1条の側で問題になります。
もうひとつがメニュー名です。無資格者の行為に関する広告について、ガイドラインは「腰痛」「膝の痛み」等の痛み症状に対する施術、慢性の「肩こり・疲労」等の常態的な症状に対する施術の表現を、特定の疾患に対する施術に当たる可能性が高いとして、広告およびウェブサイト等に表現すべきでないとしています。「肩こり集中ケア5回券」「腰痛改善コース10回券」といった券名は、ここに当たります。券名は所要時間と回数だけで組むのが安全です。
回数券の残数は、どこで数える?
ギフトカードは金額で減ります。回数では減りません。この差は、値上げしたときに表に出ます。
ギフトカードを回数券として使うときの前提
- 額面は金額で持つ。5回券は「5回分の金額」として売る
- 施術料金を上げると、残高と残り回数の対応が崩れる
- ギフトカードは発行したストアでのみ使える。店舗を分けると持ち越せない
- コードの全体を見られるのはお客様と受取人だけ。管理画面には下4桁しか出ない
- 有効期限の設定はストア単位。券種ごとに変えられない
値上げの予定があるなら、回数券は通常商品として売り、残数は顧客メモで手作業で数えるほうが破綻しません。どちらの設計を選ぶかは Shopifyで無形商材を販売する方法 に整理しています。
なお、オンラインで回数券を売ることは通信販売に当たるので、特定商取引法に基づく表記が必要です。返品・キャンセルの扱いをそこに書き切っておくと、期限切れのときの問い合わせが減ります。Shopifyの特定商取引法ページの作り方 に項目を並べました。
月額コスト
| 費目 | 月額 |
|---|---|
| Shopify Basic | 4,850円 |
| まるっと予約 Growth | $49.99(約7,900円) |
| 月額合計 | 約12,750円 |
※ $49.99は1ドル=158円として換算した概算です。為替で変わります。
※ Shopify ペイメント の決済手数料(Basicの国内カードで3.55%)、独自ドメイン費用、ギフトカード消化時の外部サービスの取引手数料は含みません。
回数券の販売だけならShopify単体でもできます。まるっと予約が必要になるのは、予約枠をサイト上で受け付けたいときです。予約の受け方そのものは 個人サロンの予約管理を効率化する を見てください。
よくある質問
有効期限を発行日から6か月以内にするなら、資金決済法の前払式支払手段の章は適用されません(第4条第2号、施行令第4条第2項)。届出も供託も発生しません。期限を6か月より長くする場合は、3月31日と9月30日の基準日で未使用残高を計算し、1,000万円を初めて超えたときに届出が必要になります(第5条第1項、第14条第1項、施行令第6条)。判断に迷う設計なら、専門家に確認してください。
嫌がられます。だから「期限内に使い切れる券種」を用意するのが対処になります。週1回通う方なら6か月で24回ありますが、月1回の方には10回券は重すぎます。来院間隔から逆算して、5回券を主力に置く院が現実的です。期限はページの目立つ場所に書いてください。ガイドラインは、利点と比べて極端に小さな文字で書く形を控えるよう求めています。
できません。ギフトカードの残高は金額で表示されます。回数で見せたい場合は、回数券を通常商品として売り、残数を顧客メモや外部の台帳で数える運用になります。まるっと予約にも自動の消し込み機能はありません(2026年9月19日時点)。
自院のウェブサイトについては、むしろ書くよう求められている側です。あはき・柔整広告ガイドラインは、自費施術の内容と通常必要とされる費用等の情報提供を、掲載すべき事項として挙げています。一方で、あはき法第7条の広告に当たる媒体(リスティング広告や施術所紹介サイトの紹介ページなど)では、広告できる事項が告示で限定されており、料金はその一覧に入っていません。媒体ごとに分けて考えてください。
無断キャンセルが問題ならデポジットが先です。回数券は「すでに払った人」にしか効かないので、初回の取りこぼしには効きません。金額の決め方は 予約デポジットはいくらが適正か、キャンセルそのものの抑え方は 無断キャンセルを防ぐ方法 にまとめています。
会計と税務の扱いはこの記事の範囲を超えます。前受金として扱うのか、消化時に売上とするのかで処理が変わるため、税理士に確認してください。わたしは2026年3月に独立したばかりで、通年の申告を経験していません。
まとめ
- 有効期限は6か月以内。資金決済法第4条第2号と施行令第4条第2項で、前払式支払手段の章の適用除外になります
- Shopifyの初期値は「無期限」。設定から決済へ進み、ギフトカードの有効期限を6か月に変えてから売り出します
- 期限は目立つ場所に書く。小さな文字や別ページへの逃がしは、あはき・柔整広告ガイドラインが控えるよう求めています
- 券名に症状を入れない。「肩こり」「腰痛」は、無資格者の行為の広告として表現すべきでないとされています
- 残数は金額で減る。回数で数えたいなら、通常商品として売って手作業で消し込みます
整体院の回数券をオンライン販売する仕組みそのものは、Shopifyのギフトカード機能で半日あれば組めます。時間がかかるのは、期限を何か月にするか、券種をいくつ出すか、ページに何を書くかを決めるところです。先に決めてから手を動かすほうが、結局は早く終わります。
Shopifyとまるっと予約の料金、App Storeのレビュー数は2026年9月19日時点のものです。法令は2026年9月19日時点でe-Gov法令検索に掲載されている条文を参照しました。


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